今年の都庁Ⅰ類Bの問1肢3です。
3 日本人は、光と蔭を巧妙に使い分け、虚無の空間を任意に遮蔽したときに生ずる陰翳の世界に幽玄味を持たせることに長けている。
僕はタイトルの書籍を読んだこともあり、問題文を読むこともなく(というかホームページには本文は乗っていないのですが)正答することができました。
今回は「現代文は読まなくても何とかなる!」という話ではなく、文章理解のテーマには典型的なパターンがあり、「これもそれに当てはまるなあ」という話です。
すなわち、日本の美意識、東洋と西洋の比較といったテーマです。
幽玄(ゆうげん)とは、文芸・絵画・芸能・建築等、諸々の芸術領域における日本文化の基層となる理念の一つ。
本来は仏教や老荘思想など、中国思想の分野で用いられる漢語であったが、平安時代後期から鎌倉時代前期の代表的歌人であり、千載和歌集を撰集した藤原俊成により、和歌を批評する用語として多く用いられて以来、歌論の中心となる用語となった。同じ歌道の理念である有心(うしん)とともに並び用いられることが多いが、本来は別の意味の言葉である。
その後、能楽・禅・連歌・茶道・俳諧など、中世・近世以来の日本の芸術文化に影響を与え続け、今日では一般的用語としても用いられるに至っている。
公務員試験の文章理解の学習で「主要なキーワードをインプットする」という学習は極めてまれでしょうが、知っていたほうが選択肢は読みやすくなりますよね。
ちなみに、都庁Ⅰ類Aの問1も高階秀爾氏の「日本人にとって美しさとは何か」が出典でした。
書籍の目次は次の通りです。
1 言葉とイメージ―日本人の美意識(『古今和歌集』序文に見る日本人の美意識勅撰和歌集の意義
図と文字が越境する ほか)
2 日本の美と西洋の美(東と西の出会い―日本および西洋の絵画における表現様式についての諸問題和製油画論感性と情念―「和製油画」に支えたもの ほか)
3 日本人の美意識はどこから来るか(絵と文字漢字と日本語襲名の文化 ほか)
テーマとしては共通点もありますよね。
文章理解の学習の過程で、解ける、解けないがあるはずですが、「テーマ自体が苦手」、「キーワードが入っていない」という可能性もあります。
学力があるのに、「解説を読んでもいまいちスッキリしません」と文章理解の問題を持ってこられる方の中には、「あるテーマが極端に苦手」という場面があります。
文章理解でイヤな問題があったとき、そのテーマを確認してみることで自身の弱点発見につながるかもしれません。
ちなみに、タイトルの陰翳礼讃は青空文庫で、無料で読めます。
勉強の息抜きにいかがでしょうか。
陰翳礼讃 | 谷崎潤一郎