旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

総合旅行業務取扱管理者試験実施結果の分析

 昨年の12月8日に、令和5年度の総合旅行業務取扱管理者試験(10月22日実施)の合格発表がありました。
 今回は、日本旅行業協会が公開した実施結果を分析してみます。試験直後に公開した弊社の講評もご参照下さい。

1.受験者数は引き続き減少
 令和5年度の受験出願者総数は5,871名で、前年(6,488名)より約1割減少しました。ただし内訳を見ますと、受験区分A(全科目受験者)は2,959名(前年2,875名)で微増しています。逆に、最も減少率が大きかったのは、受験区分E(国内旅行業務取扱管理者有資格者)で、前年から約500名減の受験者1,818名(同2,317名)でした。他の科目免除区分でも減少しているものがあります。これは、長引いたコロナ禍の影響で、前年までの受験者及び合格者が減少し、結果的に科目免除の対象者が減ったことが大きいと思われます。

2.合格率がダウン
 全科目受験者の合格率は7.9%で、前年(13.5%)から大きく落ち込みました。近年では、6.2%だった令和3年度試験に次ぐ低合格率です。また、受験区分Eの国内有資格受験者(2科目免除)は同26.5%で、こちらも前年(35.7%)からダウンしました。筆者(相馬)は試験直後の講評で、合格率は下がると予想していたのですが、予想以上のダウンとなりました。

3.要因分析
 低合格率の原因は、国内旅行実務科目が難化したことにあります。科目合格者の数を見ると、国内旅行実務のみの科目合格者は136名で、前年の208名から大きく減少しました。一方、海外旅行業務のみの科目合格者は216名で、前年の182名よりも増加しています。科目免除受験者でも、受験区分B(海外旅行実務のみ免除)の合格率は22.1%で、前年の52.3%から激減しています。いかに国内旅行実務科目の難度が高かったがわかります。
国内旅行実務の問題を、難度A、B,Cのレベル別に分けてみると、次の通りです。( )内の数字は前年の問題数です(レベル分けは、筆者の判断によるものです)。
・国内観光地理(全20問) A:12問(13)、B:4問(7)、C:4問(0)
・国内運賃料金(全12問) A:8問(5)、B:2問(7)、C:2問(0)
 Aレベル問題は、「易しい・簡単」ということではなく、例年の標準レベル(いわゆる「例年並」)という意味です。Bは難しいが、がんばれば正答できるレベル、Cはかなり難しい問題です。令和4年度のようにCレベルがない年もあるのですが、本年度はCレベルが多くなり、「いじり過ぎ」の問題が目立ちました。
 Aレベルは減少していないので、B、Cレベルが結果を左右した要因です。「あと1,2問」で悔しい思いをされた方も多かったことでしょう。

4.今後の対策
 実務科目ではここ毎年、従来の傾向には見られない難問が見られます。受験者にとっては、今まで「重要」「必須」と位置づけられていた知識も確信が揺らぐものです。また、近年の超難問レベルを、どのように学習していけばよいのか、どこから(どこまで)手を付ければよいのか、迷いが生じることでしょう。これらは私たち講師泣かせの課題でもあります。
 しかし、すべての問題が「難問」というわけではありません。毎年てこずる実務科目でも、少なくも6割はAランク問題で、Bランクを含めると最低でも8割が、いわゆる「コア」と位置づけられる問題です。これらのコア問題でミスをしない力が一層強く求められるでしょう。
 最近5年間の合格率(全科目受験者)は、13.0%→18.5%→6.2%→13.5%→7.9%と乱高下しています。1年で2倍も3倍も合格率が違うような試験問題は、公平・公正の観点からいかがなものか、疑問を感ぜざるを得ません。受験される方は、「その年」が勝負なのですから。問題の品質が安定しないならば、宅建のような相対評価方式も考慮に値すると思います。