旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

登録制度

 旅行業法令の前半部分では、登録制度と営業保証金制度が大きなヤマ場です。どちらも範囲が広く、聞きなれない用語や数字が多いので、なかなか全体を理解しにくいのではないでしょうか。
 しかし、営業保証金制度はせいぜい1問。ややこしいので、とりあえず概要だけ掴んで、先に進んでもかまいません。今回は、出題の多い登録制度についてです。

1.登録制度の趣旨
 旅行業等又は旅行サービス手配業は、誰でも今すぐに事業を開始できるものではありません。観光庁長官により、一定の資格・要件を満たす者として登録された者だけが、事業を営むことができます。この資格要件を厳しく定めることによって、不適切な業者を排除し、消費者である旅行者の権利を守ろうとする制度です。旅行業の定義、営業保証金制度をはじめ、旅行業法の他の分野とも密接に関連があります。

2.重要用語と注意ポイント
① 登録と届出
・登録
事業を行う前に登録行政庁に登録の申請を行い、登録の拒否要件に該当しないか審査をし、すべて該当しない者だけが登録されます。制約が免許制よりは緩く、届出制よりは厳しい制度といえます。
・届出
基本的に、完備した必要書類を行政庁に届け出れば受理され、登録のような審査はありません。登録事項のうち、業務の範囲、旅行業者代理業者の所属旅行業者の名称を除く事項に変更が生じた場合は、変更後に届け出ればよいことになっています。

②「旅行業」と「旅行業等」
 この「等」は、一般に使われる「その他」という意味ではありません。旅行業法で「旅行業等」という場合は、「旅行業者」と「旅行業者代理業者」の2者のみをいいます。したがって、運送・宿泊業者や旅行サービス手配業者などの関連業者などを含めて「旅行業等」と呼ぶことはありません。
・旅行業=第1種から第3種までの旅行業及び地域限定旅行業を呼ぶときに用い、旅行業者代理業は含まれない。
・旅行業等=上記の旅行業者と、旅行業者代理業者を含めて呼ぶ場合に用いる。
*「旅行業者」「旅行業者等」と呼ぶ場合も同様です。

③「旅行業等」と「旅行サービス手配業」
 どちらも、運送・宿泊等の旅行サービスの手配を行いますので、まぎらわしい業態です。大きな違いは、旅行業者等は直接旅行者と旅行業務に関する取引を行うのに対し、旅行サービス手配業は、旅行業者を代理して手配業務を行う者で、旅行者とは直接取引を行いません。そのため、登録制度をはじめ、さまざまな規定の違いがあります。

④ 登録の有効期間
 登録の有効期間は、旅行業者にのみ定められています(5年間)。旅行業者代理業及び旅行サービス手配業には、有効期間の定めがありません。登録が抹消されない限りは期限なしで有効です。

⑤ 変更登録等
 登録事項に変更が生じた場合は、以下の3つの手続のうち、どれかを行う必要があります。それぞれの手続が必要な者と不要な(できない)者があります。
 ・変更登録
旅行業者が、業務の範囲を変更する場合にのみ行います。旅行業者代理業者及び旅行サービス手配業者は業務の範囲の定めがないので、変更登録を行うことがありません。この点がいちばん間違いやすい規定です。たとえば、旅行業者代理業者が旅行業者になろうとするとき(この逆でも同じ)は、変更登録ではなく新規登録を行わなければなりません。
 ・登録事項の変更の届出
どの業者にも必要な手続です(登録事項は、事業の種別ごとに違いがあります)。
 ・更新登録
この手続も、旅行業者のみに必要なものです。事業を継続しようとする旅行業者は、5年ごとに更新登録を行わなければなりません。旅行業者代理業者及び旅行サービス手配業者は有効期間の定めがないので、更新登録を行うことがありません。

煩雑な制度ですが、登録制度をクリアしたら旅行業法令学習の峠を越えた、と言っていいでしょう。