旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

約款の用語解説

 今回は、標準旅行業約款の前半で出てくる用語の解説です。前回のブログでも書きましたが、約款の記述は、法令と比べれば日常的な文章で読みやすいものです。しかし、中にはわかりづらいものもあります。そのいくつかを掲げてみました。

① 特約
 生命保険のCMで「ガン特約」という言葉をお聞きになったことがあると思います。基本となる契約があって、そこにプラスする「特別な約束」が特約です。特約自体を単独で結ぶことはできませんが、特約の成立要件を満たせば、約款の規定と異なることも定めることができます。
② 国内旅行と海外旅行
 ナマ条文はまるで禅問答のようで、わかったようなわからないような定義の代表格です。「国内旅行」とは、日本国内のみの旅行をいい、それ以外が「海外旅行」です。つまり、海外のみの旅行はもちろん、海外旅行に国内旅行が付随した旅行も、国内部分を含めて全体が「海外旅行」となります。国内旅行と海外旅行では、期間・日数や金額で異なる規定があります。
③ 通信契約
 旅行商品の通信販売のことです。約款は、基本的に店頭での取引を想定して作られていますが、現在は楽天、じゃらんなど、ネット販売に特化した業者も増えており、既存の旅行業者も営業の大きな柱としています。定義や契約の成立などで、通常の契約(店頭販売)と異なる規定があります。
④ 申し込み・予約・契約
 我々はよく、「旅行の申し込みをしてきたよ」とか「ツアーの予約がとれた」と無意識にいいます。日常の会話であれば全然問題ないのですが、厳密には申し込みも予約も、確実に旅行に行けることを意味しません。
・申し込み…「旅行に行きたい」という旅行者の一方的な意思表示であり、旅行業者が申し込みを受け入れるかどうかは別のことです。一方的にプロポーズをしても、相手がOKしてくれるかどうかわかりませんよね。
・予約…予め約束するという意味で、「仮押さえ」「仮契約」の段階をいいます。仮押さえの期限までに所定の手続きをしなければ、旅行に行けません。まあ、婚約期間といったところでしょうか。
・契約…旅行者が申込書と申込金を提出し、旅行業者が契約の締結を承諾して申込金を受理することで、「旅行契約」が成立します。これで、晴れてゴールイン! 新婚旅行に行くことができます。めでたし、ですね。
⑤ 情報通信の技術を利用する方法
 第11条に定めのある規定です。いかにもお役所的文章で、わかりにくさは約款で一番かも知れません。これは主にネット販売を想定したもので、具体的にはネット上で書面の記載事項をダウンロードする、又は読んだときに「OK」や「同意する」をポチッとすることなどを意味します。ネット販売では原則として営業所に行くことがないので、店頭で各書面を交付する代りとするものです。この場合、必ず旅行者の同意を得ることがポイントです。
 ナマの条文がそのまま出題されることがありますので、原条文も読んで文意に注意してください。それにしてもこの規定の文章、なんとかならないものでしょうか・・・

 ここまでは募集型企画旅行契約・受注型企画旅行契約・手配旅行契約に共通した規定です。この他にも注意すべき規定がたくさんありますので、おいおいこのブログでも取り上げて行きたいと思います。