社労士試験・徴収法頻出「印紙保険料」!覚えるべき事項をチェック

更新日:2021年7月13日

社労士の専門分野になじみのない方であれば、「印紙保険料」と聞いてすぐに雇用保険を連想できる方はなかなか稀かもしれません。実際のところ、「試験勉強を開始して初めて、印紙保険料という言葉を知った」という社労士受験生も多いのではないでしょうか?

印紙保険料とは、雇用保険の日雇労働被保険者に賃金を支払う都度、事業主が一般保険料と合わせて納付すべき保険料のこと。

社労士試験においては、手薄になりがちな分野である一方、しばしば問われるキーワードです。このページで、印紙保険料に関わる社労士試験頻出ポイントについておさえておきましょう。

目次

「印紙保険料」の社労士頻出ポイントを総復習

「建設現場

印紙保険料について、社労士試験対策上理解しておくべきは、「印紙保険料額」と「納付方法」、「雇用保険印紙購入通帳」、「帳簿の調製及び報告」、「追徴金」の各項目です。

印紙保険料自体、一般的にあまり聞きなれないテーマであり、具体的なイメージを持ちにくいと思いますが、テキストや過去問で狙われるポイントを中心に理解を深めていきましょう。

印紙保険料の額は「96円」「146円」「176円」の3段階

印紙保険料額は、賃金日額に応じて第1~3級の3段階に設定されており、事業主と日雇労働被保険者が折半負担します。

  • 第1級:賃金の日額が11,300円以上の者については、「176円」
  • 第2級:賃金の日額が8,200円以上11,300円未満の者については、「146円」
  • 第3級:賃金の日額が8,200円未満の者については、「96円」

印紙保険料納付に不可欠な「日雇労働被保険者手帳」

事業主は、日雇労働被保険者に賃金を支払う都度その者に係る印紙保険料を納付します。

印紙保険料の納付は、以下のいずれかの方法によって行います。

① 事業主が日雇労働被保険者手帳に、「雇用保険印紙を貼付し消印する」

② 事業主が日雇労働被保険者手帳に、「印紙保険料納付計器を使って納付印を押す」

原則的な方法は①ですが、複数種類の印紙を常備しておかなければならないこと、さらに盗難の恐れがあること等から、②の方法が認められています。

①の消印のための印影は、あらかじめ所轄の公共職業安定所長に届け出ておかなければなりません。

また、印紙保険料納付計器の設置には承認が必要であり、これを受けようとする場合には、所轄公共職業安定所長を経由して都道府県労働局歳入徴収官宛に申請することになっています。

社労士試験対策上、印紙保険料の2種類の納付方法とそれぞれに必要な届出や申請について整理しておきましょう。

「雇用保険印紙購入通帳」とは?

¥マークと電卓

社労士試験の印紙保険料の分野で、頻繁に問われるキーワードが「雇用保険印紙購入通帳」です。

事業主は、印紙を購入するために、あらかじめ所轄公共職業安定所長から雇用保険印紙購入通帳の交付を受ける必要があります。印紙は、雇用保険印紙購入通帳にある購入申込書を使って、郵便局で購入できます。

ちなみに、雇用保険印紙購入通帳の有効期限は、交付日の属する保険年度に限られます。

よって、有効期限の満了後も引き続き雇用保険印紙を購入しようとする場合には、有効期限満了日の翌日の1ヵ月前から満了日までの間に、更新手続きを済ませる必要があります。

雇用保険印紙を扱う事業主に課せられる「帳簿の調製及び報告」の義務

雇用保険印紙については、厚生労働省令により、厳格な管理・報告義務が定められています。

事業主は、日雇労働被保険者を使用した場合、印紙保険料の納付に関する雇用保険印紙受払簿に、雇用保険印紙の受払状況、印紙保険料納付計器の使用状況を記載して、翌月末日までに所轄公共職業安定所長を経由して所轄都道府県労働局歳入徴収官に報告しなければなりません。

印紙の買戻しルール

雇用保険印紙の買戻しルールは、社労士試験でよく問われるテーマのためおさえておきましょう。

事業主は、「雇用保険の保険関係が消滅したとき」や「日雇労働被保険者を使用しなくなったとき」等、雇用保険印紙が不要となった際にあらかじめの所轄公共職業安定所長の確認を得た上で、買戻し請求ができます。

併せて、保険料額の変更などで「雇用保険印紙が変更されたとき」にも、変更から6ヵ月以内に買戻しの請求が可能です。ただし印紙変更に伴う買戻しの際には、所轄公共職業安定所長による確認は不要です。

印紙保険料の「追徴金」

徴収法の観点からは、「追徴金」に関わる理解も不可欠です。

事業主が印紙保険料の納付を怠った場合、政府は、その納付すべき印紙保険料の額を決定し、これを事業主に通知することになっています。

また、正当な理由がないと認められるにもかかわらず、事業主が印紙保険料の納付を怠ったとき、政府は、認定決定した印紙保険料の額(1,000円未満切り捨て)の100分の25に相当する額の追徴金を徴収します。

なお、認定決定された印紙保険料及びこれに伴う追徴金は、雇用保険印紙ではなく現金で、日本銀行又は都道府県労働局収入官吏に納付することになっています。

「印紙保険料」の社労士試験出題実績

ノートとシャーペンとだるま

これまで、社労士試験で狙われやすい印紙保険料のポイントをざっくり解説しました。

具体的にイメージしにくい印紙保険料について、概要を掴むことができましたか?テキスト等で基本的な理解を深めた後は、過去問演習で知識に枝葉をつけていきましょう。

さっそく、印紙保険料に関わる社労士試験出題実績を確認していきます。

印紙保険料の額(平成30年雇用保険法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「賃金の日額が、11,300円以上である日雇労働被保険者に係る印紙保険料の額は、その労働者に支払う賃金の日額に1.5%を乗じて得た額である。」

回答:×

印紙保険料の日額は、第1~3級の区分に応じて定額で決まっているため、設問のような算出方法を用いません。

印紙保険料の納付方法(平成24年雇用保険法)

以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。

「印紙保険料の納付は、日雇労働被保険者に交付された日雇労働被保険者手帳に雇用保険印紙をはり、これに消印して行い、又は、あらかじめ所轄都道府県労働局歳入徴収官の承認を受けて、納入告知書に当該印紙保険料額を添えて直接金融機関に納付することによって行うことができる。」

回答:×

印紙保険料の納付方法に、現金収納はありません。現金による支払いが認められるのは、認定決定された印紙保険料及び追徴金を支払う場合のみです。

印紙保険料の納付方法は、「日雇労働被保険者手帳にあらかじめ購入した雇用保険印紙を貼り、これに消印する」もしくは「あらかじめ承認を受けて設置した印紙保険料納付什計器により、当該手帳に納付額を表示して納付印を押す」のいずれかです。

まとめ

  • 社労士試験対策上、印紙保険料についておさえておくべきは「印紙保険料額」と「納付方法」、「雇用保険印紙購入通帳」、「帳簿の調製及び報告」、「追徴金」の各項目です
  • 印紙保険料額は、賃金日額に応じた第1~3級の3段階について、それぞれ「176円」「146円」「96円」の定額で設定されています
  • 印紙保険料の納付は、事業主が日雇労働被保険者手帳に「雇用保険印紙を貼付し消印する」または「印紙保険料納付計器を使って納付印を押す」のいずれかの方法で行います
  • 雇用保険印紙の購入は、あらかじめ雇用保険印紙購入通帳の交付を受け、郵便局で購入します
  • 事業主が印紙保険料の納付を怠ったために政府が認定決定した印紙保険料、および追徴金(認定決定した印紙保険料の100分の25)は、印紙ではなく現金で納付します
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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