旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

「旅行業法の目的」とは?

旅行業法では、冒頭でこの法律の目的(第1条)と、旅行業の定義(第2条)を掲げています。
どちらも、旅行業法だけでなく、この法律に基づく命令(旅行業法施行規則及び旅行業者が旅行者と締結する契約等に関する規則)全体を貫く、最も基本的な理念であり、この定めに反する条文はありません。その意味で、旅行業法令全体を理解するためには絶対に欠かせない根本的な知識です。

今回は、第1条「目的」をわかりやすく解説してみます。
法第1条には、この法律で定める目的と、その目的達成のための手段が掲げられています。旅行業法に限らず、どの法律でも、必ず第1条にはその法律の制定目的が明示されます。目的が定かでなければ、何のために作った法律かわかりませんので、法律には必須の条項です。
以下、旅行業法の第1条全文です。

「この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的とする。」

これを整理すると、次のようになります。
1.旅行業法の目的
① 旅行業務に関する取引の公正の維持
② 旅行の安全の確保
③ 旅行者の利便の増進

具体的には、①旅行業務について取引をした相手の利益を不当に害さないこと、②旅行中の旅行者の身体、生命、財産等の損害を防止すること、③旅行者に対し、適切かつ確実なサービスを提供し、その質的向上を図ることの3点が旅行業法の目的であり、とりわけ消費者である旅行者の利益の確保が最も重要な命題です。

一方で、上記の目的を実現するための手段も定められています。
2.目的達成のための手段
① 登録制度の実施
② 旅行業等を営む者の業務の適正な運営の確保
③ 旅行業者等の組織する団体の適正な活動の促進

具体的には、①一定の要件を満たす者にのみ旅行業等を営むことを認め、不適切な者が旅行業務を行うことを防ぐこと、②旅行業務取扱管理者の選任を旅行業者等に義務付け、取引準則に定める諸規定を順守させること(旅行業者には営業保証金の供託も義務付ける)、③旅行業者等の組織する団体(旅行業協会)に法定業務を行わせることで、旅行業務の適切な運営と業界の質的向上を図ることの3点を定めています。旅行業者等や旅行業協会にさまざまな規制をかけ、義務を負わせることにより、法の目的を実現させようというものです。

この「目的」と「手段」をあわせて、広義の「目的」として捉えてください。ここにある定めは、旅行業法令のすべての条文に共通する基本的な理念です。
国家試験では、「第1条(目的)に定められている(いない)ものはどれか」という形式で出題されることがほとんどです。それぞれの項目を、記述どおりに正確に把握しておきましょう。

例)令和3年度総合旅行業務取扱管理者試験
問15.次の記述のうち、「法第1条(目的)」に定められていないものをすべて選びなさい。

a.旅行業等を営む者の適正な利潤の確保
b.旅行業務に関する取引の公正の維持
c.旅行業等を営む者が組織する団体の国際交流の促進
d.旅行者の利便の増進

(正解)a.c.

a.とc.は、どちらも至極もっともなことです。aでは、利潤が上がらなければ旅行業者は商売を行うことができません。cも、旅行業のみに関わらず政治・経済・文化面でも大切なことでしょう。
しかし、どちらも最初に掲げた第1条に定められてはいません。第1条に定められていなければ、どんな事柄でも誤りです。
このような、「もっともらしい」記述が第1条に関する問題に必ず出てきます。シビアに割り切り、文言通りであるか否かで正誤を判断してください。