旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

ヤッカンはヤッカイ?! -その5 国内・国際航空運送約款

約款Q&Aの最終回です。今回は、航空運送約款で多くいただくご質問を2つ解説します。
どちらも、国内・国際の両方の約款に共通の規定です。

Q1.旅客が、他の旅客に不快感を与え、又は迷惑を及ぼすおそれがある場合は、航空会社はその旅客を拘束することができますか?

A1.航空機の安全・快適な運航を妨げる旅客に対しては、運送の拒絶や降機の措置をとることができます。約款にはいくつもの具体的事項が定められており、そのどれかに旅客が該当する場合です。
このうち、旅客の拘束も行うことができるのは、以下の2項目の行為を行った場合のみです。

① 旅客自身若しくは他の旅客や航空機、物品に危害を及ぼすおそれがある
これは特に危険な行為であり、極端に言えばハイジャックやテロ行為、自爆行為です

② 航空会社係員の業務の遂行を妨げ、又はその指示に従わない
離着陸時にシートベルトを締めない、座席を起こさない、着席しない、その他乗員への妨害など

上記の2項目はとりわけ危険なので、拘束手段もとることができます。ただしこれ以外の行為は、旅客の拘束まではできません。したがって、単に不快感を与え、又は迷惑を及ぼすおそれがあるだけでは上記の2項目に該当せず、拘束まではできません。
なお、旅客の行為がだんだんエスカレートして、乗員や乗客に暴力を振るったりすると、拘束もできることになります。国内線で、コロナ禍のおりマスクを付けない旅客が降機させられた事件もありました。とりあえず降機措置には従ったので、拘束まではされませんでした。これも乗員に腕力で抵抗すれば、拘束もやむなしとなります。

Q2.受託手荷物の損害通知期限について、日本航空では「受取りの日から7日以内」、一方、全日空では「受取りの日の翌日から起算して7日以内」に文書で通知することとなっています。2社で通知期限が違うのでしょうか?

A2.日本航空と全日空の運送約款では、ご質問のように記述が異なっているのですが、実は同じことを言っています。
民法では、特にことわりがない限り、期間・日数を数えるときには初日を算入せず、翌日から数える方法(翌日起算)をとります。ふだん私たちが日数を数えるときに使っている、ごく普通の数え方です(1月1日の3日後は1月4日。1月1日の1年後は、翌年の1月1日)。
航空運送約款も基本的に翌日起算ですが、手荷物の損害通知期限は、以下のように2社で記述が違っています。

① 日本航空の規定…受け取りの日から7日以内
② 全日空の規定…受け取りの日の翌日から起算して7日以内

日本航空は特にことわりがないので、原則通り翌日起算となります。
また全日空は、「翌日から起算して」とわざわざことわっているので、やはり翌日起算です。
よって、表現上の違いはありますが、どちらの場合も、翌日から数え始めて7日後が通知期限となります。
4月1日が受け取りの日であれば、2社とも4月8日までとなります。

※旅行業法や標準旅行業約款でも基本的に翌日起算です。ただし例外として、旅行業の登録の有効期限は、「登録の日から起算して…」と書かれていますので、登録日当日を含めなければならず、当日起算となります。
(例)4月1日に登録→5年後の3月31日まで有効(4月1日ではない)

※JR旅客営業規則では、初日を含めて計算する「当日起算」を原則としています。
(例)4月1日から7日間有効→4月7日まで有効(4月8日ではない)