旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

約款Q&A−2

今回も引き続き、受講生の方からのご質問に基づく、「約款」のQ&Aです。今回は、出題頻度は少ないけれど、分かりにくい規定も含んでいます。

④ 取消料・違約料−2

Q.旅行者が指定期日までに旅行代金を支払わない場合、企画旅行契約では「期日の翌日に旅行者が契約を解除」したとみなしますが、手配旅行契約では「旅行業者の解除権」として定められています。また、手配旅行契約では解除の期日がはっきりしません。この違いはなぜですか?

A.ご質問の規定は、企画旅行契約と手配旅行契約では、ほぼ真逆になっています。

①企画旅行契約
期日の「翌日」に、「旅行者が」契約を解除したとみなす。
→旅行者の意思に基づく解除とみなされます。→取消料相当額の違約料を請求できます。

②手配旅行契約
旅行業者の解除権として定められています。解除の期日は特に定められていません。
→旅行サービス提供機関に係る取消料・違約料、旅行業務取扱料金等を請求できます。

上記のように、解除する側が旅行者と旅行業者と、正反対になっています。
どちらも旅行者の債務不履行に該当しますが、民法では手配旅行契約のような規定が基本で、支払いを受けず不利益を被る側に契約の解除権が認められています(このケースでは旅行業者)。また、解除期日を定めていないのは、支払い期日以降、交渉期間を含めて、いつでも旅行業者が解除権を行使できるためです。
企画旅行契約で逆の規定になっているのは、「旅行者が解除した」とみなすと、取消料に相当する違約料が請求できるからです。この違約料の額を確定するため、「支払い期日の翌日」と解除日を明確にしています。「旅行業者が解除した」とすると、企画旅行契約の規定上、旅行代金の全額を払い戻さなければなりません。
試験では、手配旅行契約に関しては余り出題されておらず、企画旅行契約がもっぱら出題されていますので、「翌日」「旅行者が」「違約料」という点にご注意ください。

⑤ 添乗業務

Q.添乗員を同行させることについて、企画旅行と手配旅行の違いはなぜですか。

A.一番大きな違いは、旅程管理責任の有無です。旅行に添乗員を同行させるか同行させないかは、次のように決定します。

①企画旅行(募集型、受注型とも同じ)
契約の内容により、旅行業者が同行の有無を判断します。企画旅行契約では旅程管理が義務づけられていますので、契約責任者(旅行者)の意思にかかわらず、添乗員の同行が必要と旅行業者が判断すれば、添乗員を同行させます。また、添乗員の同行が必要ないと旅行業者が判断しても、現地係員や現地旅行業者等に旅程管理措置を行わせなければなりません。

②手配旅行
契約責任者(旅行者)から添乗員の同行を求められた場合に、添乗員を同行させます(求めがなければ同行させる必要はありません)。手配旅行契約では、旅行者の意思が最優先です。また、旅程管理を行う義務がありませんので、旅行業者の判断で添乗員を同行させることはありません。

⑥ 損害賠償責任―1

Q.天災地変等、旅行業者が関与し得ない事由で旅行者が損害を被ったときでも、旅行業者に故意又は過失があれば賠償責任を負うのはどうしてですか? 旅行業者には責任が生じないと思いますが。

A.旅行者が損害を被った直接の原因が不可抗力によるものであっても、旅行者の損害に旅行業者の故意又は過失が関係するときは、損害賠償責任を問われます。
たとえば、目的地で感染症が発生して危険な状況であるのに、旅行業者が「大丈夫です、安全です」と案内し、それを信じた旅行者が目的地で感染症に感染した場合は、不適切な情報を提供した旅行業者の責任が問われます。また、地震が発生し、避難をするのに旅行業者が誤った指示や誘導をして、旅行者が損害を被ったような場合も同様です。旅行業者が注意を払えば損害を回避できたのに、それをしなかったことで生じた損害には、旅行業者の責任が生じます。

過去に頂いた約款のご質問を振り返ってみると、まだまだ「これはお伝えしたい」という疑問があります。次回も、約款Q&Aを続けます。