旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

約款Q&A−3

今回も引き続き、受講生の方からのご質問に基づく、「約款」のQ&Aです。
今回は、出題頻度は余り高くはありませんが、理解しにくい規定です。解説が長めになりますので、我慢してください。

⑦ 損害賠償責任−2

Q.「重大な過失」とは、具体的にどのような過失のことでしょうか。重大な過失か、そうでないかは、どのように判断されるのでしょうか。

A.「重大な過失」と「重大でない過失」の境い目は具体的に何なのか、詳細に示すことは約款の役割を超えています。実際にこれらの境い目は多くがグレーゾーンであって、明確な線引きはできないことです。
また「重大」にも程度があり、損害賠償は、過失割合により賠償額が変わってきます。示談か、あるいは、司法が過失責任の軽重を判断することになります。
ということで、約款では「重大」という言葉で、「普通レベルのミスではないので、旅行業者の責任は重くなります」というにとどめ、具体的な解決は事後の交渉に委ねています。
似たような記述は、たとえば契約の拒否事由で「迷惑な旅行者」の迷惑の基準、旅行業者の解除権にある「合理的な範囲を超える負担の要求」の合理的範囲など、どの程度のことが規定に該当するか、具体的には明示がありません。随所にある「おそれ」という言葉もきわめて曖昧で抽象的です。
この回答も、まさに「具体性」を欠く回答で恐縮ですが、約款とはそういうものとご理解ください。試験でも、重大かどうかは問題文に明記されますが、何が重大な過失なのか、具体的な明示はありません。「重大な過失」か「重大でない過失」か、問題文の記述で判断してください。
なお、敢えて具体例を挙げれば、添乗員が旅行者の手荷物を「私が責任を持ってお預かりします」と明言して預かったが、そのまま失念してしまい、手荷物が紛失したような場合は、「重大な過失」といっていいでしょう(断言できるものではありません)。

⑧ 旅程保証−1

Q.変更補償金の支払いについて、旅行者からの通知は不要とありますが、「旅行者の責任」では、旅行地で契約内容に変更が生じ、異なるサービスが提供されたときに、旅行者は、旅行地において速やかに申し出なければならないとなっています。矛盾してないでしょうか?

A.この規定は、「旅行者の責任」として定められているもので、旅程保証、旅行業者の損害賠償責任とは別個の規定です。ただし、後でご説明するように、これらの規定が重複することもあります。
現地に着いたら旅行サービスが違うものになっていた事案は、実際の旅行でも起きることです。よくあることですが、帰ってきてから苦情を申し立てる旅行者もいます。しかし、旅行終了後では、せいぜい金銭的解決しか対処のしようがなく、変更そのものの対処には手遅れとなります。それよりも、現地で早めに対応するほうが、はるかにより良い解決につながります。
そのため、旅行者の義務として、このような事案は可能な限り現地で、旅行業者、手配代行者、当該旅行サービス提供機関等に早く申し出ることを求めています。

なお、この規定とは別に、変更そのものの取り扱いは、次のようになります。

①旅行業者に責任がある(重要かどうかを問わない)…旅行業者に損害賠償責任が発生。ただし旅程保証は適用外
②旅行業者に責任はないが、重要な変更に該当する…旅行業者に旅程保証責任が発生
③旅行業者に責任がなく、重要な変更にも該当しない…旅行業者に損害賠償責任も旅程保証責任も発生しない

上記②の場合には、変更補償金の支払いが発生しますので、旅行者からの通知の有無にかかわらず、所定期日までに補償金を支払います。それとは別に、旅行者としては変更が生じたらすぐに旅行業者に通知して対処を求めるべきでしょう。

⑨ 旅程保証−2

Q.旅程保証で、契約書面の記載内容と確定書面の記載内容との間、又は確定書面の記載内容と実際に提供されたサービス内容との間に変更補償金の支払対象となる重要な変更が生じたときは変更2件と扱うとありますが、どうして2件と数えるのか、よくわかりません。

A.重要な変更となるものは、a.契約書面に記載のないものが確定書面に記載された場合と、b.確定書面に記載のないものが実際に提供された場合です。それぞれが1件ずつの変更となります。

事例をいくつか挙げますと、次の通りです。
まず前提として、「契約書面にはAホテル又はBホテルと記載されていた」ものとします。

①確定書面ではCホテルとなった →実際の提供はDホテルであった
②確定書面ではCホテルとなった →実際の提供はAホテルであった
③確定書面ではBホテルとなった →実際の提供はCホテルであった
④確定書面ではAホテルとなった →実際の提供はBホテルであった

上記の①と②は、a.(契約書面と確定書面の間)、b.(確定書面と実際の提供サービスの間の変更)とも生じていますので、2件の変更として数えます。
また、③と④は、a.には変更がありませんが、b.が生じているので1件となります。
②と④で、実際に提供されたものが契約書面に記載されたものであっても、確定書面には記載されていないものなので、重要な変更に該当します。
クイズのようにややこしいので、実際の過去問でも事例をお確かめください。

約款のQ&A、まだ続きます!