旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

約款Q&A−4

またまた今回も、「約款」のQ&Aです。
実は、約款編は2回にしようと考えていたのですが、質問履歴を振り返るうちに、あれもこれもとなってしまいました。もう少し、お付き合いください。
今回は、特別補償規程です。ただでさえ煩雑な規定が多いのですが、その中でも分かりにくさ1、2を争うものを選びました。幸い、出題頻度はかなり低いのですが、昨年の国内試験では珍しく出題されました(ということは、あと数年は出ない・・・?)。余り気にせず、ご参考までにお読みください。

⑩特別補償−1

Q.「旅行サービスの提供を一切受けない日は企画旅行参加中とみなさない」ということは、特別補償がまったく適用されないということでしょうか? 終日自由行動日とどこが違うのでしょうか?

A.旅慣れた人向けに、運送機関・宿泊機関等を旅行者が選択できる企画旅行をダイナミック・パッケージといいます。その組み合わせで、旅行日程の一部に、運送・宿泊等の旅行サービスが一切含まれない日がある場合が対象となります。そのような日について、企画旅行参加中としない(=特別補償を適用しない)ことをあらかじめ契約書面で明示した場合は、当該日に事故が生じたとしても特別補償の対象となりません。

例)以下の旅程では、第2日目が上記に該当する日となります。
第1日 A都市 → B都市 到着後市内観光 ホテル泊・夕食付
第2日 終日自由行動            ホテルなし・食事なし
第3日 終日自由行動            ホテル泊・食事なし
第4日 出発まで自由行動  B都市 → A都市

*第2日について、契約書面に「企画旅行参加中としない」と明示したときは、この日に事故が起きても特別補償は適用されません。
*通常の終日自由行動日は、第3日のように、少なくとも宿泊サービスが含まれます。この日は、特別補償の対象となります。

⑪特別補償−2

Q.「代位(旅行業者が旅行者に代わって請求すること)」が、よく理解できません。具体的に補償金や賠償金の流れはどうなるのでしょうか。

A.(テキストP.87の図も参照してください)事故の原因が、旅行業者以外の第三者の故意又は過失に基づくものである場合でも、特別補償規程により旅行者に補償金が支払われますが、旅行者(又は法定相続人)が第三者に対して損害賠償を請求できる権利(損害賠償請求権)は、次のように扱います。

①死亡・身体傷害の場合
旅行者の損害賠償請求権に変化はなく、旅行業者からの補償金と第三者からの賠償金の両方を受け取ることができます。

【例】航空会社の責任による事故で旅行者が死亡した場合
旅行者の法定相続人は、旅行業者の特別補償責任に基づく死亡補償金と、航空会社の損害賠償責任に基づく損害賠償金の両方を受け取ることができます。 海外企画旅行で、航空会社の損害賠償金が5,000万円とすると、2,500万円+5,000万円=7,500万円となります。

②携帯品の損害の場合
旅行者が第三者に対して有する損害賠償請求権は、旅行業者が旅行者に支払った携帯品損害補償金の範囲内で旅行業者に移転します(二重に支払われることはない)。

【例】旅館の責任により、旅行者の携帯品に20万円の損害を与えた場合
特別補償規程により、旅行業者から旅行者に15万円の携帯品損害補償金が支払われますが、旅行者が旅館に対して有する損害賠償請求権はこの損害補償金の額だけ縮減し、旅館に請求できるのは差し引き5万円となります。旅行者は、補償金15万円+賠償金5万円=20万円の支払いを受けるので、損害額は填補されます。
この場合に、縮減した15万円分の損害賠償請求の権利は旅行業者に移転することとなり、旅行業者は旅館に対し15万円の賠償請求を行うことができます。このように権利が移転するので、このことを「代位」といいます。

すっかり「約款づくし」になってしまいました。この際、運送宿泊約款についても次回で載せます!