旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

約款Q&A−5

ついに「約款」Q&Aも5回目となってしまいました。法令Q&Aが1回だけでしたので、ちょっとアンバランスですね。法令に付きましては、後日またフォローしたいと思います。また、他の科目・分野についても載せていくつもりです。
今回は国内航空運送約款と貸切バス運送約款に関するQ&Aです。

⑪航空運送約款

Q.受け取った手荷物の損害通知期限について、正しくは、受け取りの日から7日以内だと思うのですが、受け取りの日の翌日から起算して7日以内と書いてあることがあります。どちらが正しいのでしょうか?

A.手荷物の損害通知期限は、全日空と日本航空で記述の違いがあります。並べて書くと、以下のとおりです。何か、1日ずれるような感じがしますね。

a.日本航空の規定…受け取りの日から7日以内
b.全日空の規定…受け取りの日の翌日から起算して7日以内

民法の定めでは、期間・日数を数えるときに特別にことわりがない限り、基準となる初日を算入せず、翌日から数える方法(翌日起算)をとるのが原則です。航空運送約款も、基本的に翌日起算です。日本航空は特にことわりがないので、原則通り「翌日起算」となります。
また全日空は、「翌日から起算して」とわざわざことわっているので、やはり「翌日起算」です。よって、表現上の違いはありますが、どちらの場合も同じことをいっており、翌日から数え始めて7日後が通知期限となります。

例として、4月1日が受け取りの日であれば、4月8日までとなります。航空券の有効期間も翌日から起算することになっていて、1月1日発行の航空券は、翌年の1月1日まで有効です。
なお、「○○の日から起算して」とある場合は、起算日の当日から日数を起算します(当日起算)。旅行業法における登録の有効期間は「登録の日から起算して」となっており、当日起算です。JR、フェリーの有効期間も当日起算となっています。

⑫貸切バス

Q.貸切バスは配車時刻から30分経過しても客が乗車意思を表示しないときは運送の全部を終了したとみなす、とありますが、これは旅客が契約を解除したということですか?

A.具体例でご説明しますと、ある団体が貸切バスの予約をし、○○駅前に×月×日の午前8時に配車、午前8時20分に出発する内容で契約したとします(目的地や終了時間等は省略します)。
ところが当日、天災地変などやむを得ない場合を除いて、配車時刻や出発時刻を過ぎても旅客が現れないため、貸切バスはやむを得ずそのまま待機を続けたとします。ただし、いつまでも待機するわけには行きませんので、「出発時刻後30分は待機する」というのが約款の定めです。

この場合、8時50分(出発時刻の30分後)を過ぎても旅客が全く現れないなど乗車の意思を示さない場合は、旅客が無連絡で貸切バスの利用を放棄したということです。バス会社側には何の責任もなく、契約どおりに配車をしています。よって、バス会社は契約上の責任を果たした、すなわち運送契約のすべてが「終了」したとみなします。運賃料金は全額収受し、払い戻しはしません。
これを「旅行者が契約を解除した」とみなすと、当日の解除は50%の違約料が適用され、50%を旅行者に返金しなければなりません。

なお、貸切バス約款では、「配車日時」をいろいろな期日・期限の基準としているのですが、この規定に関しては「出発時刻」を基準としていることに注意してください。