旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

世界遺産のはなし(2)日本の世界遺産

世界遺産条約に日本が批准したのは、世界遺産条約が成立してから20年後の1992年のことで、世界で125番目です。「文化国家」を自認する割にはちょっと遅いですね。
その理由には、もともと日本は文化財や自然の保護に関する法律が充実し、余り緊急性を持っていなかったことと、例によって縦割り行政の弊害があったといわれています。
ともあれ結果的には、いわゆる先進国の中ではどん尻の加盟でした。

現在、日本では文化遺産20件、自然遺産5件の計25件が登録されています。
しかし世界を見渡すと、登録数第1位はイタリアの58件、第2位は中国の56件、第3位ドイツの51件と比べると日本は半分以下で、11位です。
少ないようですが、意外にも、米国は日本に次ぐ12位。オーストラリア、カナダは14位です。国が大きいからといって多いわけでもありません。ま、数の多さが絶対的なものではありませんけど・・・
また、世界遺産が1つだけの国は35か国もあり、さすがに小さな国がほとんどです。この他、1つもない国は27か国あります。

●世界遺産の登録基準
世界遺産に登録されるためには、登録基準のうち、いずれか1つ以上を満たす必要があります。この審査がなかなかシビアで、こちらが「満たしている」と思っても、あちら(世界遺産委員会)が必ずしも同じ評価とは限りません。このあたりのやり取りは、胃潰瘍になるほど結構大変なようです。

紙面の都合上、登録基準の詳細は省略しますが、以下の日本ユネスコ協会ホームページで確認できます。
世界遺産の登録基準|公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟

各世界遺産の詳細な特徴・特色は、文化庁のホームページでご覧になれます。
世界遺産|文化庁HP

●「日本ならでは」の世界遺産
世界遺産登録物件は、圧倒的にヨーロッパが多くなっています。そもそもの発足経緯からしてやむを得ないと思いますが、特に文化遺産についてヨーロッパとわが国を対比してみると、大きな違いが見られます。それは、「石」と「木」の文化の違いです。

石の文化は、基本的に造った当時のものがそのまま残されているケースがほとんどです。ヨーロッパの教会やローマ文明遺跡などはその代表でしょう。しかし、日本を含め東アジア諸国では、建物はほとんどが木材を利用しています。木は腐食や火災に弱く、現に日本の多くの寺院・神社等は再建若しくは補修を繰り返しています。創建当初のものは、法隆寺などごく僅かの例外を除き、ほとんど残されていません。それでも、歴史や伝統、その中に息づく精神文化は、形には見えなくても日本及び東洋の文化的特徴といえます。これをどう評価するか、世界遺産委員会にもかなりの意識革命をもたらしたようです。

●「この次」の世界遺産
将来、世界遺産にしたいと思う物件は、暫定一覧表に記載してUNESCOに提出します。現在、わが国では以下の物件が暫定一覧表に記載されています。

・古都鎌倉の寺院・神社ほか
・彦根城
・飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群
・金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群(現在推薦中)
・平泉-仏国土(浄土)を表す建築庭園及び考古学的遺産群(拡張)

鎌倉や彦根城のように、二十年以上も暫定一覧表に記載されたまま、ひたすら推薦を待つ物件もあります。また、前回も書きましたが、現在推薦中の佐渡金山は何かと足踏みが続いています。来年に再度登録の審議がされると思いますので、期待しましょう。

次回は、暗雲漂う世界遺産についてお話します。