旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

世界遺産のはなし(4)広がる世界遺産

私事で恐縮ですが、私の郷里は新潟なので、ぜひ佐渡金山の登録をがんばってもらいたいものです。鉱山なので、すでに登録を受けている「石見銀山」の拡張でもいいと思います。併せて、暫定リストにはありませんが、足尾銅山も立候補してくれれば、「金・銀・銅」独占となるのですが。
ま、これは半分冗談として。

現在は登録審査も一段と厳しくなり、原則として1国1回に1物件しか推薦できません。前回の暫定リスト記載物件のすべてが世界遺産になるには、まだまだ時間がかかりそうです。

●「世界遺産」の仲間たち
ここまで述べた意味での「世界遺産」ではありませんが、希少な文化遺産を守るために、この他にも国際条約が結ばれています。また、日本独自、自治体独自の遺産認定も行われています。そのいくつかをご紹介します。

① 日本遺産
世界遺産の国内版で、文化庁が認定するものです。世界遺産とほぼ同じ趣旨ですが、世界遺産は文化財の価値付けと保護が主目的であるのに対して、日本遺産では地域の活性化が大きな目的となっているところです。認定を受けるには、歴史と風土、文化財の魅力や特色を語る「ストーリー」が明確でなければなりません。

② 無形文化遺産
「無形文化遺産」もご存知の方が多いと思います。世界遺産が有形のものを対象にしているのに対し、無形文化遺産は、無形の文化的創造物の保存と活用を奨励することが目的です。対象は、音楽、舞踊、演劇などの伝統芸能をはじめ、言語、神話、伝承、社会的慣習、儀式・祭礼、自然・万物に関する知識・慣習及び伝統工芸技術など、多岐にわたっています。

わが国の主な無形遺産は、「能楽」「歌舞伎」「和食」「和紙」「山・鉾・屋台行事」「来訪神 仮面・仮装の神々」などがあります。また、2020年には伝統建築にかかわる「工匠の技」が選定され、ニュースでも話題になりました。これらを含め、現在では23件が選ばれています。

現在は新たに「伝統的酒造り」として、麹菌を用い、日本文化にもかかわりが深い日本酒を提案中ですが、2022年は審査が見送られています。既に登録済みの和食や各種の祭礼に欠かせないものなので、登録を期待しましょう。

③ 世界の記憶(記憶遺産)
1997年から始まったもので、後世に伝えるべき歴史的文書、音楽、絵画、映像などを、デジタル化などの方法を通じて保存し、世界の人々のアクセスを可能とするものです。日本からの推薦案件は2011年までなかったため、まだ認知度が低い気がします。
有名な歴史書を連想しがちですが、選定されているものは主に1次資料が多く、後世の研究家にとって貴重なものとなるでしょう。
なお、わが国では「記憶遺産」と呼ばれることもありますが、英語名はMemory of the Worldであるため、日本ユネスコや文科省は「世界の記憶」を正式名称としています。

④ 農業遺産
社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた、独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、将来に受け継がれるべき重要な農林水産業システムを認定する制度です。
これには国連食糧農業機関による「世界農業遺産」と、日本の農林省が制定する「日本農業遺産」があり、多くの地域が選定されています。各地に残る棚田は、試験にもよく出されています。

⑤ ジオパーク
これも世界版と日本版があります。地質学的にみて国際的な価値のある地域の保護、教育、持続可能な開発が一体となり、管理されたエリアがジオパークです。ジオパークでは、価値ある地質遺産を保護しながら、環境教育、ジオツーリズムといった分野に活用することで、地域の持続可能な開発を促します。