ラオス教育支援プロジェクト

ラオス・ビエンチャン教育施設視察2 IV-JAPAN 職業訓練校

IV-JAPAN 職業訓練校

日本のNGO「IV-JAPAN(アイブイジャパン)」が、ラオス教育スポーツ省と協同して実施している職業訓練の様子を見学させて頂く。

IV-JAPANがJICAや日本外務省、企業からの支援を元に職業訓練プログラムを実施し、軌道に乗ったところでラオス政府に移管して事業を継続してもらう流れになっている。IV-JAPANは与えるだけの支援ではなく、「自立」を重要視している。それこそが教育の本質であり、私たちも常にその視点を持たなくてはならないとラオスの地で思いを新たにする。

「調理・縫製・理美容・木工」4つの職業訓練コースを見学させて頂く。それぞれ教室での座学・実技と共に、実際に制作した商品を販売したり接客をするOJTが用意されている。「ここを卒業すれば仕事に就ける、開業できる」という学生の将来まで考えた教育が実践されていた。

学ぶ学生たちは真剣そのもので、カメラを向けると恥ずかしそうに微笑むが、手はもくもくと作業を続けていた。調理コースの授業風景。このときは座学中だったが、教室の隣にはキッチンがあり、調理実習ができるようになっていた。

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  • 調理コース授業風景

理美容コースの授業では、学生たちは先生の実演を真剣に見つめていた。
和気藹々とした雰囲気で、楽しそうに学んでいた縫製コース。

  • 理美容コース授業風景
  • 縫製コース授業風景

理美容コースのOJTでは一般のお客さんを実際に相手にする。男性は気持ちよさそうに施術を受けていた。
調理コースはOJTでお客さんに料理を提供している。被写体の女性はラオスの人にしては珍しく積極的にポーズを取ってくれた。

  • 理美容コースOJT
  • 調理コースOJT

木工コースのOJT。視察した際には学生はお休みで、先生がもくもくと作業をしていた。学生たちが作った机やキャビネットは、実際に買い手が決まっている商品も多数あった。

  • 木工コースOJT
  • 学生たちが作った机やキャビネット

持続可能な教育

木工コースの運営を担当されているIV-JAPANの飯村さんにインタビューさせて頂いた。現地に入り込んだからこそ見える視点でお話し頂き、とても得るものが多かった。

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  • 飯村氏インタビューの様子

飯村氏のインタビューより

・ラオスの人々の自立のために職業訓練を実施している。 ・「調理・理美容・縫製」は比較的簡単に自営業として開業できるため開講している。(IV-JAPANも就職よりも開業を推奨している。開業なら田舎の家でもできるし、時間の融通もきくため。)
・農業以外で働く経験をしたことがない人が多いので、職業訓練・OJTを通して「働くこと」への意識を変える意味もある。
・女性向けのコースが多いのは、IV-JAPANの代表が女性であり自立した女性を応援したいという趣旨と、男性は農業など主たる仕事があり、それにプラスして女性が農業の合間などで仕事ができれば収入が増えるという狙いから。
・「木工」コースの受講生たちは、家具工場勤務等で、ある程度の技能・経験を身に付けたら地元に戻って工房を開くなどしたいと希望している。
・地元活性化というよりも家族を養いたいという意向が大きい。
・そもそも地方の人間は都会に出て働くという意識があまりない。自分の周りにも都会で生活している人間がほとんどいないので都会で生活し、工場等で働くがイメージできない。家族の結束が強く、遠く離れることもなかなか難しい。
・地方でも「食べる分には困らない」という状況がある(だから都会に出ることも少ない)。
・地方の公務員(先生)も学びに来ていて、自分がスキルを付けて地元で「木工」を教えたいと考えている熱心な人もいる。
・現状は「仕事」自体が限られていて、より高度なビジネス人材の育成という意味では、まだラオスはそこまで追いついていない印象を持っている。

今、ラオスで必要なこと

私たちが支援を行っているラオス地方部のドンニャイ村では、「テクノロジー」の授業としてマウスやキーボードなどパソコンに関する知識を学んでいた。しかし村には先生用の1台しかパソコンがなく、校長先生から「もっとパソコンを設置したい」との声も頂いていた。

フォーサイトには社内にシステム開発を担う部署があることや、ITパスポートの資格講座を運営しているため、ITスキルやビジネススキルの面での教育支援もできるのではないかと〝安易に〟考えたこともあった。しかし、今回実際にラオスで行われている職業訓練の現場を見学し、お話を伺っていくと、「まずは手に職」こそが重要だと痛感した。

いくらITの知識を付けたところで、発揮する場所がなければ意味がない。今ラオスで必要なことは、農業プラスアルファの仕事だったり、「働くこと」へ意識を向けることだ。

飯村氏のインタビューからは、真にラオスの人々を想っていることがひしひしと伝わってきた。相手が望むことを鵜吞みにするのではなく、継続性を考え、共に段階を踏んでいくことが教育支援に求められる視点だということを学ばせて頂いた。

IV-JAPANでは今後、新事業としてホスピタリティ・介護職業訓練も計画中だという。より詳しい活動は下記HPをご覧頂きたい。

IV-JAPAN  http://iv-japan.wixsite.com/iv-japan

ラオスという国

ラオスにおける各所での教育現場を視察させて頂き、環境が異なれば必要となる教育の形も異なることを再認識する。そして〝外〟から見ていては本当に大切な部分は見えてこないことも実感した。これからもラオスやアジア諸国で教育支援に携わるうえで、とても良い経験になった。多忙の中お時間を割いてくださった関係各所の皆様に感謝を申し上げたい。

今回ご協力頂いた方々からは「ラオスのことをもっと知ってもらいたい」という言葉が頻繁に出ていた。実際、日本でのラオスの認知度は低いだろう。ここに記すことで少しでもラオスに興味を持ってもらえればなによりだ。

開校式で頂いたラオス料理はお世辞抜きで美味しいものだった。開校式だけでなくラオスで食べた料理はどれをとっても美味で、日本人の口に合うのは保証する。人々は温厚で治安の悪さを感じることもなく、とても過ごしやすい国だ。私たちも是非また訪れることができればと願っている。

今後の教育支援

ドンニャイ村に関しては校舎の部分ではだいぶ充実してきたと思われ、教員養成などのソフト面での支援や、図書室など施設面で協力できることを模索していきたい。

また、今回ドンニャイ村に訪問する前に別の村を訪問させて頂いていた。その村の学校は生徒数が増え、現状の校舎では全く収まりきらないという。今後の支援先として検討させて頂く。これからも子どもたちの笑顔を増やせるよう、精進していきたい。

  • 生徒数が増加し校舎のキャパシティが足りないという
  • AEFA谷川理事長より状況を伺う
  • 大きな生徒?に少し緊張
  • また彼の笑顔に出逢いたいと思う