開校式の概要
心に残る開校式を
ラオス地方部、サラワン県ドンニャイ村のドンニャイ校において、私たちは2棟の校舎建設を支援している。2016年3月に第1回現地視察に伺った際は1棟目の校舎が出来たばかりで、机などの設置もまだという状況だった。今回は2棟目の完成に合わせて開校式を開催していただけるということで、フォーサイト代表山田を始め総勢5名のスタッフがお伺いすることとなった。
開校式の様子は後述させていただくが、「外国からふんぞり返った支援者がやってきて、勝手に満足して帰っていった」と現地の方に思われるような式にはしたくないとの想いが山田にはあった。どのような開校式にすれば村の子どもたちや親御さんに「よい思い出」として記憶され、これからも校舎を大切に運用してもらえるか…。そこでパートナーNPOのAEFAさんや、現地NGOスタッフのノンさんにも相談させていただき、「村人参加型」の開校式にチャレンジする案が浮上した。
ドンニャイ校は幼・小・中・高校を擁する地域の基幹校で、複数の村々から生徒が通ってくる。しかし、違う村との交流の機会は乏しく、共に何かを行うことはほとんどないという。そこで今回の開校式においては、ドンニャイ校を中心として人々の交流を深め、教育・学校が地域のハブスポットとなるような催しを企画した。
具体的には各村々から料理を提供していただき、それをドンニャイ校に通う生徒、保護者、先生など全ての関係者で一緒に食べるという、「開校式食事フェスタ」を実施することとなった。数々の開校式を手掛けた経験のあるAEFAさんやノンさんでさえ「前代未聞」と言う開校式の様子を紹介したい。
開校式の様子
盛大なお出迎え
参加者数約600人。これだけの人々が開校式のために集まってくださったことに、まずは感謝を申し上げたい。正直なところ、異例とも言える今回の開校式が現地の方々に受け入れられるか少なからず心配ではあった。しかしそれは杞憂であったことが、ドンニャイ校に到着した瞬間分かった。
「ありがとう フォーサイト」の声に包まれ大歓迎を受ける。歓迎の花飾りは全て手作り。生花なので、きっと朝摘んで仕上げてくれたのだろう。繊細な仕事にその作業量を思い、胸が熱くなる。一つ一つの気配りに驚きと感謝の念を抱きつつ始まった開校式。動画や画像を通して、当日の熱気を感じていただければ幸いだ。
ドンニャイ村 中学・高校校舎完成 開校式
開校式では幼・小・中学生と様々な年齢の子どもたちが歓迎のダンスを披露してくれた。息もぴったりで、このために練習を重ねてくれたことが伺える。幼い子どもたちの可愛らしいダンスに、現地の方々からも温かい拍手と笑顔が向けられた。
ドンニャイ校校長先生と固い握手を交わす代表山田。子どもたち、保護者の方々、地域の皆さまに親しまれる学校になってくれればなによりだ。
山田が伝えたかったこと
式では山田がラオス語でスピーチを行った。どうしても現地の言葉で直接伝えたいという山田たっての願いで日本語からラオス語に翻訳していただき、現地NOOの方に発声・録音していただいたものを繰り返し聞き練習した。ラオス渡航を控えた時期は社長室からラオス語でスピーチの練習をする音が漏れ聞こえるほど熱心に備えていた。そのかいあって山田の想いはしっかり伝わったと皆さんから言っていただけた。
【山田のスピーチ 日本語の原文】
皆さん、こんにちは!こんなに素敵な校舎ができたのは、皆さんのまわりの、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、地域の方々のおかげです。 感謝の気持ちを持って、たくさん学んでくださいね。 この地域、この国が発展するには、生徒の皆さん、ひとりひとりの力が必要です。 皆さん自身の夢に向かって、一生懸命勉強してくださいね。 一緒にがんばりましょう!
また式では実際に校舎建設にご尽力いただいた工事関係者の皆さまにもお礼をお伝えした。日本から持参した日本酒をお土産としてお渡しし、とても喜んでいただけた。ラオスには「ラオラオ」という米を原料とした地酒があるので、きっと日本酒も親しんでいただけたものと思う。(ラオラオはアルコール度数45度程度なので、日本酒よりもはるかに強いお酒ではあるが…お酒好きの方はぜひラオラオをお試しいただきたい)
末永く愛される学校に
今回新しく完成した高等学校校舎を見学させていただく。明るい日差しが窓から入り込む。これからここで多くの学生が学び、賑やかな声が絶えないことだろう。
こちらは3月に完成していた1棟目の中学校の様子。学生たちが馴染んでいるようで、私たちも嬉しくなる。心なしか前回訪問した時よりも笑顔が〝大きく〟なったように思えた。実際、この校舎が出来て欠席率が大幅に下がり、成績も向上したという。「学校に来るのが楽しくなった」という学生の声が、このプロジェクトの成功を感じさせてくれた。
真っすぐな眼差しで筆者を見つめたこの子も、いずれこの校舎で学ぶことだろう。世代を超えて愛される学校になってくれることを切に願う。真っすぐな眼差しで筆者を見つめたこの子も、いずれこの校舎で学ぶことだろう。世代を超えて愛される学校になってくれることを切に願う。
心がこもった「バーシー」の儀式
出生や結婚などに際して行われるラオス伝統の宗教的行事「バーシーの儀式」。今回は私たちの来訪を喜び、健康・幸せを祈る意味で執り行ってくれた。ラオスの人々にとって大切な習慣であり、心から歓迎されていることがここからも伝わる。
年少者はとても真剣に、年長者は祈りの言葉をかけながら私たちの手に紐を結んでくれた。バーシーの儀式を通じて「縁が繋がる」ことを強く意識する。CSRや仕事を抜きにして、筆者個人としても数年後、数十年後にまたドンニャイ村を訪れ、皆さんと笑い合いたいたいと心から思った。こんな思いにさせてくださった村の人々にただただ感謝したい。
「フォーサイ」の木
植林されたのは「フォーサイの木」。実際に現地で「フォーサイ」と呼ばれているこの木は、お寺など神聖な場所で育てられることが多いという。育つと大木になり、日差しが厳しいラオスにおいて貴重な木陰をもたらすことから「癒しの木」として親しまれている。偶然にも私たちの社名と似ていることに驚き、運命を感じると共に、サプライズでこのような準備をしてくださったラオスの方々の洒落た心遣いが胸に響いた。
開校式イベントの一環で綱引き大会が行われた。綱引きは準備が簡単で多くの人が楽しめるのでドンニャイ村では娯楽の一つとしてよく行われるそうだ。男子だけでなく、女の子や大人の女性も混じって真剣勝負が繰り広げられた。老若男女、みんなの笑顔が眩しい。
学生、村人との交流
「毎日学校に通うのが楽しい」
学生へのインタビュー
ドンニャイ校で実際に学んでいる学生と、校長先生にインタビューをさせていただく。前回訪問時に旧校舎を見せていただき筆者は以下のように記した。
「木造の校舎の壁には、パッチワークのようにトタンが張り付けてあった。足元も剥き出しで、雨季にはきっと勉強どころではないだろう。」
上記のような状況が確かに改善されたことがインタビューから伺えた。いつでも安心して綺麗な校舎で学べること。日本人からすると当然に思えるが、それはとても幸せな環境なのだ。「毎日学校に通うのが楽しい」とはにかみながら答える姿に、素朴だがとても大切な「幸せ」を見た。
見えてきた課題
校長先生からは校舎というハード面が整った今後の課題も伺った。特に教員養成の部分がまだ足りないという。私たちもこれまで教員養成の面での支援も行ってきたが(参考:2015年11月~12月教員研修支援)、校舎完成後も引き続き支援の道を探りたい。ここまでドンニャイ校を発展させてきた校長先生の「いい学校にはいい先生が不可欠なんです」という言葉には大いに実感がこもっていた。
村人参加型の食事会
普段交流のない村々を結び、ドンニャイ校を「地域の中心」として皆で盛り立てていただきたいとの思いで企画した今回の開校式。前代未聞の約600人という人数が参加してくだったのは、食事会を盛り込んだことも大きいだろう。材料費はこちらで負担させていただき、現地の方々に調理を依頼した。数百人分の料理を用意していただくのはとても大変だったと思うが、みなさん楽しんで準備をしてくれたそうだ。
普段はなかなか食べる機会がないという肉や魚をふんだんに使った料理の数々はどれも文句なしに美味で、私たちも村の方々も笑顔が絶えなかった。「同じ釜の飯を食う」ことが親近感に繋がるのは世界共通なのだろう。
子どもたちの輝いた笑顔を見ると、「思い出に残るような開校式を届けたい」という私たちの願いも叶えられたのではないかと胸を撫で下ろす。
教育は人生を変える
ドンニャイ村では心からの歓迎を受けた。生花が細かく編み込まれた手作りの腕飾り一つを取っても、並々ならぬ心遣いを感じた。これまで何件も開校式を見てきたAEFAの方や現地NGOスタッフからも「こんなに盛り上がって、住民が一体になった開校式は見たことがない」という声が上がった。言葉はほとんど通じないが、子どもたちや親御さんの笑顔が全てを語っていた。
「学校を作ることが、こんなにも喜ばれる」有意義なことだということは当然分かっていたが、実際に現地で「熱」を肌で感じると、頭で分かっていたことなど現実には遠く及ばないことを痛感する。「教育は人生を変えうる」という実感をラオスの地で得ることができた。
日本で「人生を変える通信講座」を運営し、多くの方にご支持いただいた結果、遠く離れた国の人々の「人生を変える」一助になれたことを誇りに思う。