プロジェクトの概要
タイとは
- 国名
- タイ王国
- 人口
- 約7040万人(2022年)※日本の約2分の1
- GDP
- 約1兆5200億ドル(2022年)※日本の約4分の1
- 面積
- 約331,000㎢
支援内容
場所 | タイ王国チェンマイ県オムゴイ郡ソプラーン |
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支援内容 | 中学校校舎建設(3教室+1教室)、黒板・机・椅子など備品。 |
スケジュール | 2017年1月、着工。2017年6月、竣工予定。 |
ポイント | 少数民族が多く居住しているタイ北部山岳地帯は、交通の便が悪く経済力も低く、平地・都市部との格差は広がる一方です。中学校がなかった地域に校舎を新設することで、教育環境の改善を図ります。 |
成長を続けるタイ 地方部の現状
タイの経済格差と地方部の課題
私たちはこれまでラオスとベトナムで教育支援、学校校舎建設の支援を行ってきた。パートナーNPOのアジア教育友好協会(AEFA)から、タイでも支援を必要としている地域があることは以前から伺っていた。タイはアジアの中でも成長著しい国で、GDPで比較しても、タイ4068億USドル、ベトナム2026億USドル、ラオス159億USドル(全て2016年)と、ベトナムの2倍、ラオスと比べるとなんと25倍もの開きがあるほど「豊かな」国だ。
しかしそんなタイでも、「深南部」と呼ばれるマレーシアとの国境沿いでは武力闘争、テロ活動が続いているし、北部の山岳地帯では少数民族が近代化とは縁遠い暮らしを営んでいる。高層ビルも立ち並ぶ首都バンコクの華々しさと反比例して、地方部は様々な面で不安定な環境となっているのが、タイの現状だろう。
山岳地帯への学校建設の挑戦
AEFAから提案を受けたのも、少数民族が多く居住しているタイ北部山岳地帯への学校建設案件だった。タイ北部の都市チェンマイから車で約5時間の山間部、チェンマイ県オムコイ郡ソプラーン。交通の便が悪く経済力も低く、平地・都市部との格差は広がる一方だという。小学校まではかろうじて整備されているが、地域に中学校が存在せず、小学校を卒業しても受け皿がない。Googleマップの衛星写真で現地を見てみると、小学校らしき建物を確認できるが、それ以外は民家が集まっているだけで、周囲は…ほぼ山だ。確かにこれでは「他の地域にある中学校に通う」という選択肢はおよそ現実的ではない。
現在運営されている小学校校舎も老朽化が見られるが、現地では中学校校舎が熱望されているという。現場で何が求められているかこそを重視するAEFAと想いを同じくする私たちは、タイ・ソプラーン中学校校舎建設への支援を決定した。
2017年11月 ソプラーン校 新校舎開校式
ソプラーン中学校 笑顔に彩られた開校式
成田空港からバンコクで乗り継ぎ、タイ北部チェンマイへ。チェンマイから山道を車で揺られること数時間、オムコイの町に到着する。さらにそこから1時間半、どこまでも続く山道を抜けてようやくソプラーンに辿り着く。白い民族衣装を身にまとった笑顔の生徒たちが出迎えてくれた。
新校舎の開校にあたり、学校に通じる道を新しく整備したという。学校が村の中心となって、人々の生活と行動を変えていくことが実感される。開通の儀式として年配の男性が演じる剣舞を先頭に、多くの村民が開講式の舞台である中学校に集まっていく。
生徒との交流で分かち合う歓び
式典は女子生徒が司会の大役を担いながら進行していった。きっと成績優秀に違いない彼女も、新しい中学校で学び続けてくれるだろう。バンブーダンスや収穫を祝う踊りなど、子ども達からの歓迎を受ける。この日のために一生懸命練習してきたのかと思うと、感謝したいのはこちらだと伝えたくなる。
そんな私たちの感謝の想いを、フォーサイト代表の山田がタイ語でのスピーチで精いっぱい伝えた。大人たちにはおおむね伝わっていたように映る。少数民族である彼らは、普段は民族の言葉であるカレン語を使っているため、小さい子どもや年配者のなかにはタイ語が分からない人もいるそうだ。子ども達は教育によって共通語であるタイ語を学んでいく。いつか山田のタイ語のスピーチを、子どもたちが自ら得た知識で読めるようになってくれたら嬉しく思う。
熱心な先生方と、純粋な子どもたち
開校式に続いて、授業風景を見学させていただいた。現地の言葉であるカレン語をベースにタイ語を教える必要があるため、どちらの言語についても見識の高い指導レベルも持った教員が赴任するそうだ。どこの国、地域でも言えることだが、教員の質は教育において本当に重要な要素だ。
校舎があっても教える先生がいない、しっかりと指導ができないようでは意味がない。ここソプラーンでは、先生方は非常にモチベーションが高く、子どもたちが問題に答えると大きな声で褒めるなど、とても力強く熱意の伝わる授業を行っていた。こんな頼りになる先生たちなら、ソプラーン校は安心だ。
中庭は子どもたちの楽しい遊び場に
鮮やかな青が印象的な新しい校舎。山の上に位置するため、校舎が一番上、一段下に中庭、その下にサッカー場などが配置されている、「段々」になっているイメージだ。
お土産としてプレゼントした遊具を、子ども達は気に入ってくれたようだ。式典用に着てくれたと思われる民族衣装では少し動きにくそうではあったが、みんな交代でバドミントンやクリケットを楽しんでくれた。一緒に遊ぶことで、子ども達との距離感も縮まった様に思える。
子どもたちの笑顔は新しい未来への希望へ
子ども達はカメラを向けると、照れ笑いをしたり満面の笑みをくれたり、様々な表情を見せてくれる。学校の主役は彼ら彼女らであり、今後も色々な事を学んでいき、世界を広げていってくれればと願う。
学びが真の豊かさに繋がることを願って
学校から車で5分程の距離にある住宅地。主な収入源は農業で、この日は収穫のため多くの村人が不在だったが、髭が特徴的な副村長が村の案内をしてくれた。一般的な住宅は高床式で、家畜を飼っている家庭が多い。女性が集まって織物を作るための施設をちょうど建築中だった。日本も含めた農業を営む国ではよく見る風景が広がっている。日本から遠く離れたタイの奥地で、私たちの原風景を見た気分に浸る。新たな学びの場が彼らの生活を壊すような方向に作用することなく、よりよいものにしていく一助になってくれればなによりだ。「学び」は経済面や物質面だけでなく、心の豊かさにも繋がるのだから。