社労士として登録するメリットは?必要な実務経験、費用、期限、再登録の方法等をご紹介!

会議する手元

社労士試験合格後に登録については、有資格者であればまず頭を悩ませるポイントです。当初から社労士として開業、もしくは勤務することを目的にしていたのであれば、何ら問題なく社労士登録にコマを進められます。一方で、合格後に社労士資格を活用するかどうかはさておき、とりあえず合格のみを目標に頑張ってきた合格者の存在は決して珍しくありません。現状、受験生として奮闘されている方の中にも、後者のタイプは多いのではないでしょうか?
このページでご紹介する社労士登録のメリットや方法、登録の種類、費用、期限などを参考に、試験合格後、社労士としての具体的な一歩に目を向けてみましょう!

目次

社労士として登録しよう!そのメリットとは?

「社労士試験に合格できても、登録というとちょっとハードルが高い・・・」という方、まずは社労士として登録するとどのようなメリットが期待できるのかを具体的に考えてみましょう。社労士登録が、人生を大きく変えるチャンスとなるかもしれません。

登録すれば堂々と「社労士」を名乗れる

社労士登録によって、対外的に「社会保険労務士」であることをアピールできるようになります。開業登録をすれば事務所を構えて社労士業務を受注することができますし、勤務等登録をして勤務先を登録すればその会社の社労士業務を担うことができるようになります。

社労士試験に合格したての方の場合、有資格者である旨を名刺に記載しているケースを見かけることがあります。しかしながら、正式に登録を済ませて「社会保険労務士」と名乗るのと、ただの「有資格者」と名乗るのとでは、社会的評価に確実に差が生じることは言うまでもありません。

社労士登録後は様々な「研修」参加でスキルアップ可能

社労士登録をすると、全国社会保険労務士会連合会、都道府県社会保険労務士会、そして所属支部から定期的に会報が送られてきます。そこに取り上げられている法改正項目や判例、その時々の旬の話題など、業界の最新情報に触れることは、知識のブラッシュアップにつながります。また、社労士会から案内される前・後期の必須研修や独自セミナー等への参加を通じて、継続的なスキルアップが可能です。
社労士試験に合格しても、そのまま何も行動を起こさなければ知識は劣化し、気が付いた時には“ただの人”。とはいえ、自力で業界情報を収集し続けるのはなかなか難しいことです。その点、社労士登録をすることで、頭の中を常に最新にアップデートする機会が設けられます。

社労士登録を通じて人脈が広がる

社労士として登録すると、支部活動や研修会への出席、行政協力などを通して、同じく「社会保険労務士」と名乗る人と幅広く交流することができます。人脈がビジネスに活かされることも珍しくありませんから、登録後、社労士同士のネットワークは広げておくに越したことはありません。もちろん、活躍する同業者の姿が励みにすることが、自身の取り組みに良い影響を及ぼすことも多々あります。

社労士登録の流れを確認

積み木を置く指

社労士登録の流れは非常にシンプルで、下記の2ステップを経ることにより完了します。

<ステップ1.社労士試験合格>
まずは社労士試験に合格することで、社労士登録、社労士会への入会資格を得ることができます。年に一度の社労士試験で合格を掴みとりましょう。

<ステップ2.登録・入会の手続き>
晴れて社労士試験に合格したら、社労士登録と社労士会入会への手続きに進みます。

手続きは、開業登録は事務所のある都道府県社会保険労務士会で、勤務等登録は勤務先または住所地の社会保険労務士会で行います。
登録・入会に必要な書類や費用は、都道府県社会保険労務士会のウェブサイトよりご確認いただけます。

参考:東京都社会保険労務士会「登録・入会について」

社労士登録に必要な実務経験とは?

社労士登録に伴い、「社労士試験合格」と併せてもう一つ、「実務経験」に関わる要件を満たす必要があります。全国社会保険労務士会連合会が求める「実務経験」要件をクリアできなければ、社労士として登録することはできません。
社労士登録に必要な「実務経験」要件は、下記のいずれかの方法で満たすことができます。

社労士の登録要件を満たす実務経験は「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」

社労士登録に必要な「実務経験」の大原則は、「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」を有することです。具体的な業務については、下記に関連する事務に従事した期間が対象となります。
・雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得届・喪失届
・健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届
・雇用保険被保険者離職証明書
・労働保険の概算・確定保険料の申告・納付
・就業規則(変更)届
・36協定届
・労働者名簿
社労士登録に先立ち、事前に所定の「実務経験」の有無を満たしているかどうかを、社労士会連合会に確認しておくと良いでしょう。

参考:全国社会保険労務士会連合会「労働社会保険諸法令関係事務従事期間証明書」

社労士の登録は、実務経験がなくても可能です

2年間の実務経験を満たすことができない場合、社労士会連合会が行う「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」を修了することによって、登録要件を満たすことができます。事務指定講習の詳細については『社労士の事務指定講習は受けないとダメ?通信指導や面接指導の中身を知る』のページで解説しますが、例年、合格発表後の11月中旬から申し込みが開始され、翌年2月より通信指導過程、7月から8月にかけて面接指導過程をそれぞれ受講し、修了する必要があります。
実務経験のない受験生や有資格者にも、幅広く社労士登録の道は開かれています。安心して、社労士登録に臨みましょう。

社労士の登録の種類

ひと口に「社労士登録」といっても、その種類は1つのみではないことをご存知でしょうか?社労士登録の区分は「開業」と「勤務等」の2つに分かれており、それぞれの働き方に合った形態で登録する必要があります。また、実務に携わらなくとも登録可能である点は、他資格にはない、社労士登録ならではの制度といえるでしょう。
試験合格後、ご自身がどの区分で社労士登録すれば良いかを確認しておきましょう。

社労士の開業登録

開業登録は、ご自身で社労士事務所を立ち上げる場合に必要な登録です。自分一人で事務所運営するにも、事務員を雇用して幅広く業務に携わるにも、社労士事務所を構える場合には開業登録を受けた社労士の存在が不可欠です。また、税理士事務所など他士業事務所内で開業する場合や、社労士法人の法人社員となる場合にも、個人の開業登録が必要となります。

社労士の勤務等登録

勤務登録は、社労士事務所や社労士法人に雇用されて社労士業務に携わる場合、もしくは一般企業の人事部や総務部などに所属して会社内で社労士業務に従事する場合に必要な登録です。開業登録との違いは、「勤務先以外の仕事を引き受けることができない」ことです。勤務社労士である以上、依頼があっても顧客と直接契約し、社労士業を行うことはできません。
また、「勤務等」の中には、いわゆる「その他」登録者も含まれます。

社労士の「その他」登録とは?

「その他」登録とは、勤務等登録の一部であり、勤務先を指定して登録しなければ自動的に「その他」登録とみなされます。厳密にいうと「その他」という登録区分があるわけではなく、あくまで勤務等登録に属します。
その他登録の場合、社労士業務に携わることはできません。しかしながら、社労士登録を済ませていることに変わりありませんから、社労士会や支部の集まりや研修には参加できます。ゆくゆくは開業社労士もしくは勤務社労士になるが今は準備をしている、開業社労士もしくは勤務社労士だったが事情があって一時的に休業している等のケースで、「その他」登録が選ばれることがあります。

社労士登録に必要な費用

小銭を積む指

社労士登録時には、登録関連費用として
・登録免許税  30,000円(収入印紙)
・登録手数料  30,000円
の他、社労士会への入会関連として会費等が必要になります。入会費と会費は都道府県ごとに、また「開業」「勤務等」の区分によって異なります。一例として、東京都社会保険労務士会に入会する場合の入会金と年会費を紹介します。
<開業>
入会金 50,000円 / 年会費96,000円
<勤務等>
入会金 30,000円 / 年会費42,000円
勤務等登録の場合、登録関連費用や入会金、年会費などを会社が負担してくれることがあります。特に年会費は毎年かかるものですから、自己負担となるか会社負担となるかは重要なポイントといえるでしょう。社労士登録に先立ち、このあたりは事前に確認しておくようにしましょう。

参考:東京都社会保険労務士会「登録・入会について」

社労士登録に期限はあるの?

砂時計とカレンダー

社労士の場合、試験合格後、いつまでに登録をしなければならないという決まりはありません。一度試験に合格すれば、その資格は生涯有効となり、必要な際に申請すればいつでも登録が可能です。毎月25日までに社労士会に受理された登録申請は、翌月1日付で登録されます。
ちなみに、社労士登録に必要な「実務経験」の要件を証明するための「従事期間証明書」や「事務指定講習の修了」についても同様に、有効期限はありません。

社労士登録は、一度抹消しても再登録できる?

記入する手元

何らかの事情があって社労士登録を抹消したとしても、その後いつでも再登録が可能です。すでにご紹介した通り、登録せずとも、登録に必要な「社労士試験合格」と「実務経験」の2要件に有効期限はないからです。ただし、社労士登録を一度抹消してしまうと、再登録の際に再び登録関連費用(計60,000円)と都道府県社労士会への入会金を支払うことになります。よって、一時的に社労士業から離れる場合、従事しない期間によっては非開業登録(勤務等)に切り替えて籍を残しておく方が良いケースもあります。

社労士登録は、「社労士試験合格」「実務経験(もしくは事務指定講習の修了)」の2つの要件を満たすことで、思い立ったときにいつでも申請可能です。そういった意味では、先々の展望が固まっていなくともひとまず社労士試験に合格しておけば、その後の資格の活用についてはじっくり考えることができます。将来的な可能性を広げるために、まずは社労士試験合格を掴みとりましょう!

この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

「そうだったのか!」という驚きや嬉しさを積み重ねましょう
【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

社労士コラム一覧へ戻る