ファイナンシャルプランナー講座の講師ブログ

資金循環統計から家計の金融資産の動きを確認する(その1)

皆さん、こんにちは。
フォーサイトFP専任講師の伊藤です。

日本銀行は、日本国内の金融活動を包括的に示す「資金循環統計」を公表しています。2022年9月20日に、資金循環統計(22年4~6月期)が公表されたため、最新の状況をもとに、2回に分けて家計の金融資産に的を絞って動きを解説していきたいと思います。

■9月末の個人金融資産残高は過去最高を更新する可能性あり
2022年6月末の個人金融資産残高は、前年比25兆円増の2007兆円となりました。2021年12月末時点の個人金融資産は2014兆円であったため、過去最高には及んでいないものの、3四半期連続で2000兆円を超える結果となっています。
これには様々な理由が考えられます。コロナ禍前までは必ずしも戻ってはいないものの、消費が正常化しつつあり家計がお金を使うようになってきていることで金融資産が減少したとも捉えられます。また、国内外の株安により時価が減少したことも金融資産が減少したことの要因と言えましょう。なお、賞与等による資金の純流入が35兆円あるため、必ずしも個人金融資産が大きく減少しているわけではありません。足元の7-9月期においては、賞与による資金の純流入は期待できないものの、家計貯蓄率はプラス状況であり消費増大に大きくつながるかどうかは未だ不明な部分もあります。そのため、現預金の増加は今後も続く可能性はあるといえ、個人金融資産は増加する見込みと想定されます。もちろん、国内外の株価の影響にも左右される側面はあるものの、順調にいけば9月末段階の個人金融資産残高は過去最高を更新する可能性があります。

■流動性預金は増加、定期性預金は減少
それでは、個人金融資産の内訳から、昨今の変動において特徴的であるといえる点について解説します。まず、現預金残高が6月末時点で1102兆円と初めて1100兆円を超え過去最高を更新している点は気にすべき内容と言えるかもしれません。
中でも普通預金などの流動性預金への純流入が16兆円となっており、一方で定期性預金は2兆円の純流出となっています。何かあった場合に備えて、比較的現金化のしやすい状況にはしておきたいという思いと、昨今の金融緩和により利息がほとんどつかない状況を考慮すると定期性預金に預ける意欲も薄らいでいるものと思われます。そして、世界的なインフレを考慮すれば、定期性預金に預け入れることで実質的な預金が目減りする可能性がある点も考慮されている可能性があります。
実は、定期性預金からの純流出は26四半期連続であり、26四半期で計76兆円が流出しています。この結果、定期性預金が個人金融資産に占める割合は19.2%に低下してきています。流動性預金は同期間に227兆円の資金流入となっており、流動性預金が個人金融資産に占める割合は30.2%と着実に高まっているのです。今後も現状の金融緩和が続くのであれば、定期性預金から預金が流出する可能性は否定できません。

次回に続く。

<過去問題の演習>
3級・2級受験者、いずれも解いてみてください。

次の問題に答えなさい。○✕問題

【問題1】
第1号被保険者が出産する場合、所定の届出により、出産予定月の前月から4ヵ月間(多胎妊娠の場合は出産予定月の3ヵ月前から6ヵ月間)、保険料の納付が免除される。

<解答> ○
2019年4月から、国民年金第1号被保険者が出産した際に、出産前後の一定期間の国民年金保険料が免除される制度が始まりました。具体的には、出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除されます。多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の国民年金保険料が免除されます。なお、産前産後期間は付加保険料の納付ができます。

【問題2】
国民年金の保険料免除期間に係る保険料を追納する場合、追納保険料は、追納する時期にかかわらず、免除された時点における保険料の額となる。

<解答> ✕
保険料の免除・猶予を受けた翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、保険料に対して経過期間に応じた「加算額」が上乗せされます。なお、追納ができるのは追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています。

いかがでしたでしょうか?

それではまた次回、お楽しみに★