ファイナンシャルプランナー講座の講師ブログ

知っておきたい昨今の税制・制度・法改正③

皆さん、こんにちは。
フォーサイトFP専任講師の伊藤です。

前回に続き、知っておきたい昨今の税制・制度・法改正について解説していきます。

■特例的な繰下げみなし増額制度(老齢年金の繰下げ制度)

老齢年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、老齢年金を65歳から受給することができる人は、希望すれば受給開始時期を66歳以降75歳(1952年4月1日以前に生まれた人については、70歳)まで自由に繰り下げすることができます。

繰下げ受給をすると、受給できる年金額は増額され、増額された年金額が生涯支給されます。増額率(昭和16年4月2日以後に生まれた方の場合の増額率)は、0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数です。

繰下げ受給を希望する場合は、66歳以降で繰下げ受給を希望する時期に、支給繰下げの申出を行います。2022年4月より老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられたことにより、2023年4月より「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始されました。

特例的な繰下げみなし増額制度とは、70歳到達後に繰下げの申出をせず、さかのぼって年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申し出をしたものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができます。以前は、繰下げ受給の上限年齢が70歳でしたので、時効(=5年)で消滅することはありませんでした。しかし、上限年齢が75歳になったことで、70歳以降に繰下げ受給を選択せずに、本来受給を選択すると、5年以上前の老齢年金については、時効によって消滅される場合が出てきます。

そこで、繰り下げ方法として2パターン選択できるようになります。1つは単純に繰り下げにより、その後増額した年金を受け取る方法。もう1つは、65歳から見て5年を超えてから本来の受給を選択する場合には、受給時からさかのぼって5年分は一括で年金を受け取り、それより前の部分は繰り下げたことによりその後の年金額が増額される方法です。これにより、時効により過去の年金受取部分は消滅せず、受け取ることができるようになりました。

いずれの方法が良いかは、実際に受け取るときに検討すればよいでしょう。資金繰り的に厳しい場合は5年分一括で受け取ることも検討に値します。資金に余裕がある場合は、すべて繰り下げによりその後の生活費をカバーすべきです。状況に合わせて受け取り方を選択すればよいでしょう。

<過去問題の演習>
3級・2級受験者、いずれも解いてみてください。

次の問題に答えなさい。

【問題1】
貯蓄預金は、給与、年金等の自動受取口座や公共料金等の自動振替口座に指定することができる。

<解答>×
不適切。貯蓄預金は、給与、年金等の自動受取口座や公共料金等の自動振替口座に指定することはできません。

いかがでしたでしょうか?

それではまた次回、お楽しみに★