FPによる保険見直しの極意|相談すべきタイミングと「入ってはいけない保険」の見抜き方
- 職務の専門分野

加入した保険の内容を、最後に確認したのはいつでしょうか。契約したときのまま、何年も見直していないという方は少なくありません。
この記事では、保険を見直すべきタイミングと、ライフステージに合わなくなった保険を見抜く視点を、FPの相談業務の観点から解説します。見直しの順番や、解約するときの注意点も整理します。
なお、本記事はFPのキャリアを扱うFPナビの一部です。FPの仕事内容や年収から確認したい方は、まずこちらのページをご覧ください。
保険は「入ったら終わり」ではない
ライフステージの変化に、保険は自動では追いつかない
保険は、加入した時点のライフステージに合わせて設計されています。その後で状況が変わっても、内容が自動的に更新されるわけではありません。
結婚・出産・住宅購入・転職など、ライフイベントのたびに、必要な保障の内容や金額は変化していきます。ところが、独身時代に加入した保険をそのまま、家族ができた後も継続しているというケースは珍しくありません。
逆の形もあります。子どもの独立後も、教育費のために備えていた保障をそのまま払い続けている場合です。どちらも、契約時には適切だったものが、時間の経過で合わなくなっているという点は同じです。
「保険に入っているから安心」ではなく、「今の自分に合っているか」という視点で、定期的に内容を確認する必要があります。
保険を見直すべきタイミング
ライフイベントの前後が見直しの好機
結婚・出産・住宅購入・転職・子どもの独立など、ライフイベントの前後は、保険を見直す好機です。必要な保障の種類や金額は、家族構成や収入、抱えている負債によって大きく変わるためです。
たとえば住宅ローンを組んだ際には、団体信用生命保険が付くことが多く、それまで加入していた死亡保障の必要額が変わる場合があります。住宅ローンの残債が保険金で弁済されるなら、その分を死亡保障で別に備える必要は小さくなります。
転職や独立で働き方が変わるときも、見直しの機会です。勤務先の福利厚生や加入している社会保険が変われば、自分で備えるべき範囲も変わります。
「何かが変わったとき」を見直しのきっかけにする習慣を持つと、放置の期間が短くなります。
住宅購入とあわせて検討したい住宅ローンについては失敗しない住宅ローンの選び方で解説しています。
「入ってはいけない保険」とは何か|見直しが必要なパターン
商品名ではなく、合っているかどうかで判断する
「入ってはいけない保険」という言い方をよく見かけますが、これは特定の保険会社や商品が悪いという意味ではありません。今の自分の状況に合わなくなった保険を指していると捉えるのが、実態に近い考え方です。
加入時には適切だった保障内容も、ライフステージの変化によって過不足が生じます。具体的には、次のような状態が見直しのサインとして挙げられます。
・保障内容が今のライフステージに合っていない
・必要以上に保障が重複している
・保障期間と、実際に保障が必要な期間がずれている
3つ目は見落とされやすい項目です。保障が必要な期間はすでに終わっているのに契約が続いている、逆に必要な時期の途中で保障期間が終わる、という形で起こります。
「この保険は入ってはいけない」と商品名で判断するのではなく、自分の状況との整合性で判断する視点を持ってください。
保障の重複はなぜ起こるのか
別々の時期に入ると、全体が見えなくなる
保障の重複は、異なる時期に別々の保険へ加入した結果、全体を把握できないまま同じような保障が重なっている状態を指します。
一つひとつの保険は、加入時の目的に沿って選ばれています。ただ、複数を組み合わせたときに保障範囲が重なっていないかまでは、自分では気づきにくいものです。勤務先の団体保険や、クレジットカードに付帯する保障まで含めると、把握はさらに難しくなります。
たとえば医療保険とがん保険、あるいは複数の生命保険に別々に加入している場合、保障内容が一部重なっていることがあります。同じ入院に対して二重に備えている、というような形です。
手元の保険証券をすべて並べて確認するだけでも、重複に気づけることがあります。保障の種類・金額・期間を一覧にすると、全体像が見えてきます。
公的な保障を確認してから、不足分を考える
民間の保険は「差分」を埋めるもの
見直しの順番として押さえておきたいのが、公的な保障を先に確認することです。
会社員であれば健康保険、自営業であれば国民健康保険に加入しており、医療費の自己負担には高額療養費制度という上限の仕組みがあります。遺族への備えについても、公的年金に遺族年金の仕組みがあります。つまり、必要な備えのすべてを民間の保険で用意しなければならないわけではありません。
この順番を飛ばすと、公的な保障でまかなわれる部分まで重ねて備えることになります。保険料が必要以上に高くなる原因のひとつです。
自分がどの制度に加入していて、どこまで保障されるのかは、勤務先や加入先、年金の記録で確認できます。そのうえで残る不足分を、民間の保険で埋める。この順番で考えると、必要な保障額の根拠がはっきりします。
見直しは「減らす」だけではない
足りていない側も同じだけ問題になる
見直しという言葉から、保険料を下げることを思い浮かべる方は多いかもしれません。ただ、見直しの結果として保障を足すことになる場合もあります。
結婚や出産で扶養する家族が増えたとき、住宅ローンを組んだとき、独立して勤務先の保障がなくなったとき。こうした変化のあとは、以前の保障では足りなくなっていることがあります。
保険料を下げることだけを目的にすると、足りていない側の問題は見つかりません。見直しは「今の状況に合わせ直す」作業であって、増減はその結果です。
結果として保険料が上がることもありますが、必要な備えができていない状態を続けるより、把握したうえで判断できるほうが確かです。
解約の順番で気をつけること
先に解約してしまわない
見直しで乗り換えを考えるとき、順番を間違えると困ることがあります。
多くの保険は、加入時に健康状態の告知が必要です。今の契約を先に解約してから新しい保険に申し込むと、健康状態によっては加入できず、保障のない期間ができてしまう可能性があります。新しい契約の成立を確認してから、古い契約を解約する。この順番を守ってください。
もうひとつ確認しておきたいのが、解約したときに戻るお金の有無です。契約の種類や経過期間によっては、払い込んだ額を下回ることもあります。解約前に、いくら戻るのかを保険会社に確認しておきましょう。
乗り換えではなく、保障額や特約だけを変更できる場合もあります。解約と新規加入以外の選択肢があるかどうかも、あわせて確認するとよいでしょう。
FPに相談することで得られる視点
家計全体の中で保険を位置づける
FPに相談する意義は、保険を家計全体・ライフプラン全体の中に置き直せる点にあります。保険単体では判断できない部分を、一緒に整理できます。
FPの相談業務は、ヒアリング、ライフプランニング、提案という3つのステップで進みます。保険もその一部として、収入・支出・将来の資金計画とあわせて検討されます。だからこそ、保険料を下げた分をどこに回すのか、という話まで含めて考えられます。
「保険料を減らしたい」という相談であっても、単純に解約を勧めるのではなく、将来必要になる保障とのバランスを踏まえて提案する視点が求められます。
FPの相談業務全体についてはFPの相談業務とはで詳しく解説しています。
講師からのアドバイス
見直しの相談で大事にしていること
金山 浩晃講師の経歴はFP講座の講師紹介ページでご覧いただけます。
この記事のまとめ
よくある質問
結婚・出産・住宅購入・転職・子どもの独立など、ライフイベントの前後が好機です。そのつど扶養する相手や負債の有無が変わり、備えるべき範囲も動くためです。
特定の会社や商品が悪いという意味ではなく、今の自分の状況に合わなくなった保険を指すと捉えるほうが実態に近い考え方です。商品名ではなく、自分の状況との整合性で判断してください。
手元の保険証券をすべて並べ、保障の種類・金額・期間を一覧にすると気づきやすくなります。勤務先の団体保険やクレジットカードに付帯する保障も含めて確認してください。
安くなるとは限りません。扶養する家族が増えた場合など、保障を足す判断になることもあります。保険料を下げること自体を目的にすると、足りていない部分を見落とします。
順番を逆にしてください。加入時に健康状態の告知が必要な商品が多く、先に解約すると健康状態によっては新しい保険に加入できず、保障のない期間ができる可能性があります。

保険の見直しの相談では、まず「今、何のためにその保険に入っているのか」を一緒に整理することを大事にしています。目的がはっきりすれば、過不足はおのずと見えてきます。保障の過不足はライフステージが変わるたびに生まれるものなので、一度きりの見直しで終わらせず、定期的に振り返る習慣を持っていただけたらと思います。