社労士試験対策「年次有給休暇」!発生要件や付与日数の基本を理解

更新日:2021年5月21日

年次有給休暇は、働く人にとっては比較的身近な労務関連キーワードのひとつです。

労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的とする年次有給休暇は、使用者から賃金が支払われる休暇であり、原則として理由を問わず、労働者が請求する時季に付与されます。

有休取得時に支払われる賃金は、「平均賃金」「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」または「労使協定に基づく健康保険法上の標準報酬日額相当額」のいずれか、会社指定の基準を元に算出します。

目次

社労士試験頻出!年次有給休暇の発生要件は2つ

年次有給休暇の発生要件は2つ

年次有給休暇はすべての労働者に対して付与されるわけではなく、以下の2要件を満たす場合に権利が生じます。

✓ 雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務
✓ 全労働日の8割以上出勤

それぞれの要件は、一見すると分かりやすいように感じられますが、一つひとつの用語の定義は意外と複雑です。社労士試験対策として年次有給休暇を学ぶ上では、一歩踏み込んだ理解が不可欠です。

年次有給休暇の発生要件である「継続勤務」とは?

「継続勤務」とは、労働契約の存続期間、つまり在籍期間のことを指します。

例えば、定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合や非正規から正規雇用に転換した場合であっても、実質的に労働関係が継続している限りは勤務年数を通算し、継続勤務として取り扱います。

出勤率算定の基礎となる「全労働日」とはどのように考える?

年次有給休暇の付与の有無には出勤率が関係し、具体的には「8割以上の出勤」が求められます。この出勤率の算定期間は、雇入れ日から6ヵ月間の総暦日数から下記項目を差し引いた日数とします。

  • 所定休日(休日労働日を含む)
  • 不可抗力による休業日
  • 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日
  • 正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日

これらのうち、「休日労働をした日は出勤率算定に含めない」という点は、社労士試験対策はもちろん実務上も注意すべきポイントです。

出勤率の算定時に留意すべき、みなし出勤日

一方で、出勤率算定時に「みなし出勤日」として扱うべき期間もあります。

具体的には、業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間、女性労働者が法律上の産前産後休業を取得した期間等が挙げられます。

この点は社労士試験でも特に狙われるポイントであり、「子の看護休暇を取得した期間」や「年次有給休暇を取得した日」についてはみなし出勤日として扱われないという点について出題されています。

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇はフルタイム勤務の正社員だけに付与されるわけではなく、要件を満たす限り、パート・アルバイトに対しても週の所定労働日数に応じた付与があります。

原則的な年次有給休暇の付与日数

まずはフルタイム勤務の正社員のような、通常の労働者に対する年次有給休暇の付与日数をご紹介しましょう。

原則的な年次有給休暇の付与日数

出典:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

年次有給休暇は半年ごとに付与され、継続勤務年数に応じて付与日数が増えていきます。

年次有給休暇付与に関わる前述の2要件を満たさない場合、法定ではその年の付与は「0」となり、上図の付与日数を減じて付与するルールはありません。

また、年次有給休暇の消滅時効は2年であり、労働者が保持できるのは最高で「40日間」となります。

パート・アルバイトへの年次有給休暇の付与日数

続いて、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数を確認しましょう。

パート・アルバイトへの年次有給休暇の付与日数

出典:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

パート・アルバイト等の年次有給休暇付与日数を決める「週所定労働日数」は、原則として雇用契約締結時の契約内容を基準とします。

週の労働日数について具体的な取り決めをしなかった場合は、これまでの勤務実績から所定労働日数を検討します。

上図の通り、年次有給休暇は、要件を満たす限り週1日勤務の労働者にも付与する必要がある点に注意しましょう。

社労士試験対策上、覚えておきたい年次有給休暇の付与ルール

年次有給休暇の付与ルール

近年、働き方改革や過労死防止に向けた取り組みとして、政府は具体的な数値目標を設けて、企業における年次有給休暇取得率向上を促しています。2021年度改定の過労死防止大綱に定める年次有給休暇取得率目標は「70%」とされており、2025年までの達成が目指されています。

年次有給休暇の付与は、1日ごとに行う他、計画的な付与や時間単位等、柔軟に取り扱うことができます。

また、働き方改革の一環として「年5日の有休取得義務」が新設され、日本企業における進まぬ有休消化を促進しています。

年次有給休暇の計画的付与

年次有給休暇の付与日数のうち5日を超える部分については、労使協定を結ぶことで、会社側が取得日を割り振り、計画的に付与できます。こうした取扱いによって、年次有給休暇の取得を促進できる他、まとまった休暇の確保も可能となります。

具体的な例でいえば、お盆や年末年始の休暇と併せて年次有給休暇を計画的に付与する、飛び石連休の合間の平日に年次有給休暇を付与する等が想定されます。

時間単位年休

年次有給休暇の付与単位は原則「1日」ですが、労使協定を結ぶことで、1時間単位で与えられるようになります。これにより、年次有給休暇の取得がこれまで以上に柔軟に行えるようになり、結果として取得を促進できるというメリットが期待できます。

時間単位年休の取得上限は、「年5日分まで」となっています。

社労士試験対策上、前述の計画的付与が「年5日を超える部分」について可能となる点との混同に注意する必要があります。

年5日の有休取得義務

そして働き方改革の柱として打ち出されたのが、2019年4月からスタートした「年5日の有休取得義務」です。

現状、事業規模を問わずすべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対し、使用者は年5日の有休を取得させなければならなくなりました。

制度新設以降の社労士試験ではさっそく関連する出題があり、「年に5日連続した有休を取得させなければならない」という誤りの選択肢として登場しています。

年5日の有休取得義務に違反した場合、労働基準法第120条違反として30万円以下の罰金が科せられることがあります。

参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

まとめ

  • 年次有給休暇は、使用者から賃金が支払われる休暇であり、原則として理由を問わず、労働者が請求する時季に付与されなければなりません
  • 年次有給休暇取得時の賃金は、「平均賃金」「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」または「労使協定に基づく健康保険法上の標準報酬日額相当額」のいずれかを元に算定され、この算定方法は就業規則等に定める必要があります
  • 年次有給休暇の発生要件は「雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務」「全労働日の8割以上出勤」であり、社労士試験対策上は「継続勤務」「全労働日」等の定義についてもおさえておく必要があります
  • 年次有給休暇はいわゆる正社員のみに付与されるものではなく、パート・アルバイト等にも週所定労働日数に応じた付与があります
  • 働き方改革を背景に、政府主導で有休消化率の向上が目指される影響で、最近の社労士試験でも「計画的付与」「時間単位年休」「年5日の有休取得義務」のテーマは頻出となっています
この記事の監修者は
小野賢一(おの けんいち)

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【出身】北海道
【経歴】横浜国立大学大学院国際社会科学府修了。社会保険労務士、日商簿記2級等の資格を保有
【趣味】楽器演奏
【受験歴】2022年社労士試験初回受験、合格
【講師歴】2023年よりフォーサイト社労士講座講師スタート
【座右の銘】昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
フォーサイト公式講師X 小野賢一@社労士専任講師

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