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『恍惚の人』有吉佐和子

『恍惚の人』有吉佐和子

輝く女性の先駆け、有吉佐和子と昭子

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安倍首相が、「女性が輝く社会を」と、女性の社会進出を支援する政策を推し進めている現在ですが、輝く女性と言えば、有吉佐和子こそ、その先駆けでしょう。
1931年生まれの有吉佐和子は、超・男性社会だった当時、「女流作家」として高い地位を獲得しました。その生き生きと力強い物語は人々の心を強くつかみ、数々のベストセラーを生み出しました。

有吉佐和子の『恍惚の人』の主人公、昭子は「働く女性」のタイピスト。会社でバリバリ働いてるのですが、その一方で家事・育児もちゃんとこなします。休みの日に、おかずをまとめて作ったりしてるシーンが出てきたりして、今と同じだなあと思ったりします。
その意味では、専業主婦の妻・姑と夫をめぐる、じっとり閉じた、おどろおどろしい話が展開される『花岡青洲の妻』とは対極にあるかもしれません。

高齢化社会と働く女性の苦悩を描いて大反響を呼んだ小説

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『恍惚の人』は、昭子が道で舅(しゅうと)に偶然出会うところから始まります。そのときの舅の様子が奇妙で、「あれ?」と思った昭子。あとで舅が認知症になっていることが判明します。昭子、夫の信利、息子の敏は、そんな舅の行動にほんろうされて・・・という話の展開になっています。
詳細は省きますが、酔って深夜に帰ってきた信利が、舅の奇矯な行動に出くわして、思わず芭蕉の句になぞらえるシーンなど、その鮮やかで巧みな話運びにうならせられます。やっぱり有吉佐和子は素晴らしい。

『恍惚の人』を読んで思うのは、高齢化社会の到来とか、働く女性の家事・育児との両立の難しさという、当時、現在含めてマスで言われてきたこととはちょっと違うこと。昭子の就いている「タイピスト」という職業です。
タイピストって、今、無い仕事ですよね。昔はたくさんいたけど、コンピューターが広まって、誰でもワープロソフトでカンタンに文書が作れるようになったので、タイピストは要らなくなりました。
仕事を失ったタイピストたちは、その後どうやって生きていったんだろうと思うのです。今のPCを使った事務に切り替わった人が多数いるにしても、どうみても、絶対数は減ったはずだから。

AIとタイピストに共通する問い

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AIの発達により、10年後には今ある仕事の約半分は無くなると言われています。一体どうなるか、将来分かりませんが、間違いなく私たちは『恍惚の人』のあとに、そういう事態を経験しているはずなのです。
未来をあれこれ予測するより、過去を振り返るほうに、その答えのヒントがあるはずだと、『恍惚の人』を読んだときの私は思いました。はっと気づいたのです。
『恍惚の人』は40年前の小説ですが、現在を生きる私たちに、リアルタイムな「気付き」を与えてくれる、すごい小説です。読むたびに発見があります。

「どう生きるべきか?」という問いを抱いたら、有吉佐和子の小説を開くといいかもしれませんよ。きっと、考えるきっかけを与えてくれるはず。

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