譲渡所得の基本 ― 課税標準の計算式
テキスト100ページ、5の4番の「所得税」を見ていきましょう。ここからも内容が少しハードになります。まずはまとめです。所得税は国税ですから、課税団体は国になります。続いて課税物件ですが、資産(不動産)の譲渡による所得に対して課税されます。納税義務者は、自分が持っている不動産を譲り渡した人ですね。
では、何が税金計算のベースになるのか。課税標準です。原則パターンとして、譲渡所得金額=譲渡価格−(取得費+譲渡費用)となります。売った金額(譲渡価格)から、その物件を手に入れたときの取得費と、譲渡にかかった費用を足し算したものを差し引いた金額が譲渡所得金額になり、これが税金計算のベースとなります。取得費や譲渡費用の定義については、皆さんの方でテキストを確認してください。
特別控除の全体像と収用交換等の5,000万円特別控除
101ページをご覧ください。この課税標準には、実は特別控除という特例があります。譲渡所得金額の特別控除の主なものは、①収用交換等の場合(5,000万円控除)と②居住用財産を譲渡した場合(3,000万円控除)の2つで、①②は所有期間の長期・短期(所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下であれば短期)を問わず適用されます。同年中に2つ以上の土地等を譲渡した場合、複数の特別控除の適用を受ける場合もあり得ますが、その場合にもし複数の特別控除の合計額が5,000万円を超えるときでも、5,000万円の範囲内でのみ控除が可能です。この点を押さえておきましょう。
102ページをご覧ください。1つ目の収用交換等の5,000万円特別控除です。要件は、①土地等が土地収用法・都市計画法等の規定に基づいて収用等される場合、②土地等が国や地方公共団体等により、一団の住宅施設のために買い取られる場合が該当します。内容は、5,000万円が譲渡所得金額から控除されます。これが5,000万円特別控除になるわけです。
居住用財産の3,000万円特別控除
103ページをご覧ください。特別控除の2つ目、居住用財産の3,000万円特別控除です。簡単に言えば、自分が住んでいる居住用財産を売った場合ですね。趣旨から見ていきましょう。本来、マイホームも土地と建物である以上、それを売ったら所得税が課されるはずです。しかし、通常の土地・建物と同じようにマイホームに所得税が課税されるのでは、負担として重すぎます。そこで、居住用財産の譲渡については、譲渡所得金額から3,000万円を差し引いて、負担を軽減するものとしました。
この特別控除を受けるには要件があります。①居住用財産の譲渡であること。②配偶者および直系血族、同一生計の親族、譲渡後にその居住用家屋に同居する親族、同族会社等に対する譲渡でないこと。③前年または前々年にこの3,000万円の特別控除を受けていないこと。言い換えれば、この特例は3年に1回だけ適用できます。④本年・前年・前々年に居住用財産の買換えの特例を受けていないこと。つまり、買換えの特例と3,000万円特別控除は選択適用とされています。
効果は、譲渡所得金額から3,000万円を控除できます。注意点は、①長期のみならず短期譲渡にも適用されること、②譲渡した年の1月1日において所有期間10年超の場合には、控除後の譲渡益に後で見る軽減税率を重ねて適用できること。①と②はしっかりと頭に入れておいてください。
税率 ― 長期・短期と軽減税率の特例
104ページをご覧ください。4番の税率を見ていきましょう。まずは長期です。長期とは所有期間が5年を超えている場合で、原則は一律15%です。ただし、居住用財産を譲渡した場合にはもう少し安くしてくれます。これが居住用財産の軽減税率の特例で、居住用財産で所有期間10年超の場合、①譲渡所得金額6,000万円以下の部分は10%、②6,000万円を超える部分は15%となります。③売った年の前年および前々年にこの特例を受けていないことも必要です。
もう1つ軽減税率の特例があります。優良住宅地造成のために土地を譲渡した場合で、こちらは所有期間が5年を超えている場合です。①譲渡所得金額2,000万円以下の部分は10%、②2,000万円を超える部分は15%という軽減税率があります。そして短期、つまり所有期間が5年以下の場合には、30%とされています。
納付税額と住宅ローン控除制度
106ページをご覧ください。5番の納付税額です。原則は、課税譲渡所得金額に税率をかけることで納付税額を計算できます。この納付税額には特例があります。住宅ローン控除制度ですね。趣旨は持家政策の促進を図るためです。内容は、住宅ローンを利用して住宅を新築・取得または増改築等した場合、一定期間、借入金の年末残高のうち一定額以下の部分について、一定割合の金額が所得税から控除される制度です。
ただし、これを受けるには要件があります。①10年以上の住宅ローンであること。②控除を受ける年の年間所得は2,000万円以下であること。③先ほど見た居住用財産の3,000万円特別控除、居住用財産の軽減税率、そして後で見る特定の居住用財産の買換えの特例の適用を受けていないこと。④家屋の床面積が50㎡以上であること。⑤取得等の後6か月以内に自己の居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること。この①から⑤はしっかりと頭に入れておいてください。
107ページの納付方法ですが、申告納税方式で、納付期日は翌年の2月16日から3月15日までの間、要するに確定申告ですね。非課税のパターンもあり、①国や地方公共団体、特定の公益法人に対する贈与、②相続税の物納の場合には非課税とされています。
特定の居住用財産の買換えの特例
108ページをご覧ください。6番の特定の居住用財産の買換えの特例です。概要から見ていきましょう。個人が一定の要件のもとにマイホームを売って、新しいマイホームを買ったときに適用される特例です。この場合、譲渡による収入のうち買換資産の購入にあてられたと考えられる部分については課税されない、つまり儲かった部分についてだけ課税される、というイメージを持ちましょう。
要件は、手放す方の譲渡資産と、新しく手に入れる買換資産に分けて理解してください。譲渡資産の要件: ①居住の用に供している家屋であること(居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡を含む)。②と③は注意しましょう。②居住期間が10年以上であること、③所有期間が10年を超えていること。②が居住=10年以上、③が所有=10年オーバーです。⑤も重要で、譲渡にかかる対価の額が1億円以下であることが必要です。
買換資産の要件: ①住宅の用に供する部分の床面積が50㎡以上であること、②①の家屋の敷地の面積が500㎡以下であること。そして重要なのが一番下の「その他」で、その年・前年または前々年に3,000万円特別控除や軽減税率などの適用を受けていないことが必要です。手続きは確定申告が必要とされています。
各特例の適用関係
110ページをご覧ください。7番の各特例の適用関係です。要するに、この特例とこの特例は併用して使えるのか、という点が本試験ではよく問われます。つまり、譲渡所得税における特例相互の適用関係の知識がよく出るのです。課税標準については、①通年で控除できるのは5,000万円まで、②居住用財産の3,000万円特別控除と、特定の居住用財産の買換えの特例は併用不可となります。この110ページ、そして隣の111ページに適用関係がまとめられていますので、復習の際にしっかりと確認をしておいてください。




所得税は計算問題が出やすいテーマです。譲渡所得の基本式と3,000万円特別控除の要件は確実に覚え、各特例の併用可否も整理しておきましょう。