代理とは ― 任意代理と法定代理
テキスト44ページ、4番の「代理」に入ります。まず設例の1番です。Aさんは自分の家を売りたいと思っていますが、仕事が忙しくてなかなか自分ではできません。このような場合、Aさんはどうしたらいいのでしょうか。本来、自分のことは自分ですべきですが、忙しくてできないこともあります。そこで法は、他人に代わりにやってもらうという制度を認めました。これを代理といい、このように人から頼む場合を特に任意代理と呼んでいます。結論としては、Aさんは友達のBさんに頼んで、代わりに家を売ってもらえばよいということになります。
続いて45ページ、設例の2番です。Aさんは自分の家を売りたいと思っていますが、成年被後見人になってしまいました。成年被後見人は1人では何もできませんので、自分でやろうと思ってもできません。そこで法は、法律の規定によって一定の者が成年被後見人や未成年者の代理人になるものとしました。法律の規定によるものですから、これを法定代理と呼んでいます。この場合は、Aさんの後見人が代理人として家を売却すればよいことになります。
代理の全体像 ― 本人・代理人・相手方の3者関係
46ページの「代理の全体像」を見ていきましょう。代理においては、通常、次のような構造をとります。自分が本人だとイメージしてください。忙しくて自分では対応できないので、知り合いのBさんに①代理権を授与して代理人に任命します。次にこの代理人Bさんが、本人に代わって相手方の買主Cさんと取引、つまり②代理行為(契約)を行います。すると、③取引の効果はAC間に及び、Aさんが売主・Cさんが買主となる売買契約が成立します。
このように、代理はA・B、B・Cという3者間の取り決めであることを、まずここで確認しておきましょう。テキストには、この代理における問題点として、代理が有効であるための条件(要件)、任意代理と法定代理の違い、代理人が詐欺等にあった場合の処理、という3点も挙げられています。
代理の要件 ― 代理権と顕名
47ページ、代理がきちんと成立するための要件を見ていきましょう。まず必要なのが代理権です。他人の代わりにやってあげられる権利のことを代理権と呼び、AさんがBさんに「頼む」ことで代理権を与えます。さらに必要なのが2番、「名乗る」こと。これを顕名(けんめい)といいます。「私BはAさんの代理人として参りました」というように、自分の立場を相手方に名乗ることです。この代理権と顕名がきちんとあることで代理が成立しますので、この点を押さえておきましょう。なお、任意代理では人から頼まれることによって代理権を取得し、法定代理では法律の規定によって代理権が生じます。
無権代理 ― 原則と例外(追認)
48ページ、今度は無権代理です。先ほどまでは、きちんと代理権が与えられていたので全く問題ありません。漢字を見て分かるとおり、権利がないのに勝手にやっている代理、つまり頼みもしないことを勝手に代理人が行った場合を無権代理と呼んでいます。テキストでは重要度★5、10年間の出題率5/12とされている最重要テーマですので、しっかり見ていきましょう。
効果の1番、原則です。勝手にやっていることですから、当然、本人に効果は生じません。頼みもしないのに勝手にBさんが交わした契約が、AさんとCさんの間で生じるのではAさんがかわいそうだからです。しかし原則があれば例外があります。勝手にやったことが、場合によっては本人に都合がいいこともあります。そこで、本人が無権代理人もしくは相手方に追認すれば、追認の時ではなく最初の契約の時から有効な代理行為があったことになります。「契約の時から有効になる」という点を押さえておきましょう。
無権代理人の責任と相手方の保護
では、追認がなかったらどうなるのでしょうか。本人の追認がなければ、代わりにやった人=無権代理人が責任を負うのが当然です。その内容は相手方の選択に従い、あくまでも契約を実行してもらう履行、またはお金で解決する損害賠償請求となります。ただし、無権代理ということを相手方が知っていた(悪意)か、過失によって知らなかった場合には、無権代理人の責任は生じません。相手方が悪意もしくは過失がある場合には、保護する必要がないからです。
続いて相手方の保護です。1つ目は催告権。相手方は相当の期間内に無権代理行為を追認するか否かを確答すべき旨を、本人に催告することができます。その期間内に本人が確答しないときは、追認を拒絶したものとみなされます。2つ目は取消権。相手方は、本人が追認しない間、無権代理人と結んだ契約を取り消すことができます。ただし、相手方が契約の当時、無権代理だということを知っていた場合には取り消すことができません。このあたりは少しややこしいところですので、しっかり復習しておいてください。
自己契約・双方代理と代理権の濫用
49ページ、自己契約・双方代理です。本人を代理して自分と契約すること(自己契約)や、契約当事者双方の代理人としてした行為(双方代理)は、無権代理とみなされます。ただし、単なる債務の履行であったり、本人があらかじめ許諾した場合には、無権代理とはみなされません。
もう1つが代理権の濫用です。代理人が代理権の範囲内の行為を、自己または第三者の利益を図る目的で行うことを代理権の濫用と呼んでいます。濫用があった場合で、相手方がその目的について悪意(知っていた)または善意有過失のときは、無権代理行為とみなされます。自己契約・双方代理、そして代理権の濫用を押さえておきましょう。
表見代理 ― 成立要件と3つの類型
50ページ、表見代理です。これも重要なテーマとなります。どういう内容かというと、代わりにやった人に代理権がないのに、本人に効果が及ぶことを表見代理といいます。簡単に言えば、本当は代理権がないのに、ぱっと見は代理権があるように見える場合です。原則は、そもそも代理権がないので無権代理として扱い、本人に効果は及びません。しかし、本人に責められるべき事情(帰責事由)があり、なおかつ相手方が保護に値する(善意・無過失)ならば、相手方を保護して本人に効果を及ぼそう、というのが表見代理です。要件は、①本人に帰責事由(落ち度)があること、②相手方が善意・無過失であること、の2つです。
では、どんな場合に成立するのでしょうか。テキストは3つの場合を挙げています。①代理権の範囲を超えた場合(例:100万円の範囲で頼んだのに、200万円も使ってしまった場合)、②以前には代理権があった場合(例:代理人を辞めてもらったが、委任状を放置していた場合)、③実際には代理権を与えていなかったのに、本人が与えたと表示した場合(例:代理人でもないのに委任状を渡した場合)。いずれも本人に帰責事由があるといえますので、この3つのパターンを見ておいてください。




代理は権利関係の中でも出題頻度が非常に高いテーマです。無権代理と表見代理の違いを図で理解し、判例知識も含めて対策しておきましょう。