時効の更新とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説
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時効の更新とは
そもそも時効とは長い間ある状態が続いているので、その状態を尊重するために認められた制度です。ある状態が途切れたならば、その時点までの状態を尊重する必要はありません。
そこで、認められたのが更新です。2020年4月1日に施行された改正民法より前は「中断」と呼ばれていました。更新があると、それまでの時効期間はリセットされ、そのときから新たに時効期間が進行します(民法第152条)。
目黒さんの家に森谷さんが勝手に住んでいた場合、その8年目に森谷さんが目黒さんに、「この家は目黒さんのものだ」と認めれば(承認)、今まで続いてきた「この家は、森谷さんのものらしい」という状態を尊重する必要はありません。

取得時効と消滅時効
取得時効と消滅時効では、時効の完成猶予と更新がキーワードとなります。それぞれの要件をまとめました。
| 取得時効 | 消滅時効 | |
| 完成猶予の事由 | 1.裁判上の請求・支払督促・和解・調停・破産手続参加など(その事由が終了するまで。民法第147条第1項) 2.強制執行・担保権の実行など(その事由が終了するまで。民法第148条第1項) 3.仮差押え・仮処分(その事由が終了した時から6か月。民法第149条) 4.催告(催告の時から6か月。民法第150条第1項) 5.協議を行う旨の書面による合意(民法第151条第1項) | 同左 |
| 更新の事由 | 1.裁判上の請求等により確定判決等で権利が確定したとき(民法第147条第2項) ※仮差押え・仮処分・催告・協議の合意には、更新の効力はありません | 同左 |
| 取得時効に特有の「中断」 | 占有者が任意にその占有を中止し、または他人によってその占有を奪われたとき(民法第164条) | — |
| 効果 | 完成猶予=その期間を経過するまで時効が完成しない(それまでの期間はゼロにならない)。更新=それまでの期間はゼロになり、そのときから新たに時効が進行する。 | 同左 |
不法行為の損害賠償請求権と時効の完成猶予・更新
不法行為は、現実に損害が生じたときから効果が生じます。
ただし、被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年間損害賠償請求をしないと、請求権は時効により消滅します。不法行為の時から20年を経過したときも同様です。
では、どのようなときに不法行為の消滅時効の完成が猶予されたり、時効が更新されたりするのでしょうか。原則、上で説明した消滅時効の完成猶予・更新の事由のとおりとなります。
たとえば、裁判によらずに損害賠償を請求(催告)すれば、その時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます(民法第150条第1項)。加害者側が損害賠償債務の存在を認めた場合(承認)は、その時から新たに時効期間が進行します(民法第152条第1項)。
時効の更新~口頭での承認は有効?具体例は?~
時効の更新事由の1つに承認があります。承認とは、債務者が、その債務の存在を認めることです(民法第152条第1項)。
さて、このとき承認は口頭、つまり書面などを用意せずに言葉で言っただけで有効になるのでしょうか。答えは「口頭でも有効になる」です。口頭でも更新となりますし、間接的に認める形でも、時効の更新と判断されます。
また、借金の場合は過払い金などと相殺した場合も時効が更新されます。承認の具体例としては、債務の返済や、債務の返済期間の猶予をお願いすることもこれに当たります。
時効の更新と完成猶予の違い
時効の完成猶予とは、時効の完成間際に、債権者が時効を更新する手続をとることが難しくなるような事由がある場合などに適用されます。2020年4月1日に施行された改正民法より前は「時効の停止」と呼ばれていました。
例えば、時効期間の満了の時に大地震や津波などの天災その他避けることのできない事変のため、裁判上の請求や強制執行などの手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は、時効は完成しません(民法第161条)。
時効の更新との違いは、更新は振り出しに戻るのに対し、完成猶予は、最初から起算するのではなく、一定の期間が経過するまで時効の完成を先延ばしにする点にあります。
したがって、完成猶予では、それまでの時効完成までの期間が無駄にはならず、猶予の期間が経過するまでに時効が更新されなければ時効は完成します。

時効の中断に関する民法改正(2020年4月1日施行)
消滅時効に関する民法の改正は、2020年4月1日に施行されました。改正のポイントは、以下の4点です。
- 「権利を行使することができることを知ったときから5年間、権利を行使することができる時から10年間」に変更
改正前は、消滅時効の時効期間を考える上で、商法上の商人かどうかが重要なポイントでした。商人の場合は消滅時効期間が5年、それ以外の一般的な債権の場合は10年だったからです。改正により、商事債権の時効を5年間と定めていた商法第522条は削除され、商事債権かどうかにかかわらず、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」「権利を行使することができる時から10年間」のいずれか早く満了する方で消滅することになりました(民法第166条第1項)。 - 「更新」「完成猶予」という新たな概念
改正前の「中断」が「更新」に、「停止」が「完成猶予」にそれぞれ変わりました。 - 「更新」「完成猶予」の事由が一部変更
改正前は仮差押え・仮処分が時効の中断事由でしたが、現在は完成猶予の事由です(民法第149条)。また、強制執行等は、その事由が終了するまでの完成猶予と、終了した時からの更新の、両方の効力を持ちます(民法第148条)。 - 協議による時効の完成猶予の規定の新設
法的な諍いが起きた場合、いつもすぐに法定で争われるわけではなく、まずは話合いで解決しようという動きが出るのが一般的です。しかし、話合いが継続している中で時効が迫ってきたときに、時効を中断させるためだけに訴訟を起こすことは、債権者・債務者の両方に有益とは言い難い面があります。また、話合いで解決を試みた債権者に対し、債務者が消滅時効を援用する目的で、話合いによる解決を反故にした場合、信義則に反すると言えます。このような背景のもと、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは時効の完成が猶予される、という規定が新設されました(民法第151条第1項)。
時効の更新とはふりだしに戻る(ゼロから再スタート)ことです。
借金がある場合、原則として、弁済期(借金や利息の支払期日)から5年を経過すると時効によって消滅し、借金を返済しなくてもよくなるのですが、例えば、弁済期から3年経過したときに、債務者が一部を支払ったりすると債務の存在を承認したとみなされて、時効が更新されます。
時効の中断は登記によらずとも中断できます。民法164条では、「占有者が任意にその占有を中止し、または他人によってその占有を奪われたときは、中断する」とありますので、時効をたくらむ不法占有者を追い出せばよいだけです。
