「総括安全衛生管理者」とは?社労士試験頻出「選任義務」と「職務」
- 試験内容と難易度

総括安全衛生管理者とは、労働安全衛生法に基づき一定規模以上の事業場で安全衛生管理全般を統括する責任者です。業種と労働者数に応じて選任が義務付けられています。
安衛法上、一定の規模以上の事業場においては、事業を実質的に統括管理する者を「総括安全衛生管理者」に定め、事業場の安全衛生管理全般の指揮をとらせることが義務付けられています。
「総括安全衛生管理者」のキーワードは、社労士試験にも頻繁に登場するため、合格を目指す受験生であれば出題傾向から理解を深めておきましょう。
総括安全衛生管理者とは? どんな役割の人ですか?
総括安全衛生管理者とは、一定規模以上の事業場で、事業を実質的に統括管理する者が就く安全衛生管理全般の責任者です。社労士試験では「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」を特に押さえておきましょう。
「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」は、総括安全衛生管理者を始めとする安全衛生関連の各種管理者について、社労士試験対策上特に覚えておきたい事項です。
それぞれの管理者についてポイントをおさえるだけでなく、それぞれの管理者の要件との混同にも注意が必要です。
総括安全衛生管理者を選任すべき事業場規模・業種
総括安全衛生管理者を選任すべき事業場は、常時雇用の従業員数や業種によって定められています。
具体的には、屋外工業(林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業)であれば「100人以上」、屋内工業(製造業や電気業、ガス業、熱供給業、水道業等)で「300人以上」、その他の業種で「1,000人以上」となっています。
「300人以上」で選任義務が生じる屋内工業については、ここで挙げた他にもう少し数がありますので、詳しくはテキストや参考書で学習しましょう。
総括安全衛生管理者になる者とは?
総括安全衛生管理者の選任要件に、資格や経験の決まりはありません。
ただし、「事業場において、その事業の実施を実質的に統括管理する権限及び責任を有する者」とされていますので、実態として工場長等が選任されています。
総括安全衛生管理者の選任期日と届出
総括安全衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく所轄の労働基準監督署長へ報告しなければなりません。
安全衛生管理上、選任すべき管理者には概ね届出義務がありますが、小規模事業場で選任すべき安全衛生推進者、衛生推進者は周知徹底のみで足りるとされる点をおさえておきましょう。
総括安全衛生管理者の職務
総括安全衛生管理者は、事業場において「安全管理者、衛生管理者、建設業の爆発火災事故防止に関する技術管理者」を指揮するとともに、安全衛生管理全般を取りまとめることが仕事です。
具体的な統括事項として、以下の5項目が挙げられます。
| ① 労働者の危険または健康障害を防止するための措置に関すること ② 労働者の安全または衛生のための教育の実施に関すること ③ 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること ④ 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること ⑤ その他労働災害を防止するため必要な業務 |
法律上、職場巡視頻度に関わる定めはなし
労働安全衛生法上、総括安全衛生管理者の職場巡視やその頻度に関わる定めはありません。
法定で定期巡視が課せられているのは「衛生管理者」であり、こちらは週1回の巡視が義務とされています。
また、混同しやすいポイントとして「統括安全衛生責任者」には巡視義務が課せられている点が挙げられます。
統括安全衛生責任者とは、複数の関係請負人の労働者が混在する場所等で労働災害防止に関して指揮及び統括管理を行う者であり、こちらは「毎作業日1回以上」の巡視義務が課せられています。
総括安全衛生管理者に「勧告」できるのは誰ですか?

都道府県労働局長は総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告でき、産業医は職務に関して総括安全衛生管理者に勧告できます。
事業場の安全衛生管理体制として選任すべき管理者について、社労士試験対策上おさえるべきは「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」ですが、総括安全衛生管理者についてはもうひとつ、「勧告」のキーワードを頭に入れておきましょう。
✓ 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるとき、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告できる ✓ 産業医は、産業医の職務に関し、総括安全衛生管理者に対して勧告、または衛生管理者に対して指導、もしくは助言ができる |
社労士試験では総括安全衛生管理者はどう出題されますか?

過去の本試験では、選任要件(平成18年)や都道府県労働局長による勧告(平成19年)が問われています。他の管理者の要件と混同させる出題に注意が必要です。
社労士試験における総括安全衛生管理者関連の出題では、前述の頻出キーワードについて、他の管理者に関わる要件との知識の混同に注意する必要があります。
まずは覚えるべきポイントを正しくインプットし、その後、十分な過去問演習を通じて効果的に横断学習を進めましょう。
総括安全衛生管理者の選任要件(平成18年安衛法)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者をもって充てなければならない。」
回答:×
総括安全衛生管理者は「当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者」を選任すべきであり、「これに準ずる者」の規定はありません
都道府県労働局長による勧告(平成19年安衛法)
以下の選択肢について、正誤を判別する問題です。
「都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者にその改善を命令することができる。」
回答:×
都道府県労働局長が行えるのは、「改善命令」ではなく「勧告」です
まとめ
- 総括安全衛生管理者は、一定規模以上の事業場で選任する必要のある、安全衛生管理全般の責任者を指します
- 社労士試験対策上、総括安全衛生管理者についておさえるべきは「選任期日」「届出」「資格要件」「巡視義務」「勧告」に関わる事項です
- 総括安全衛生管理者は「事業を実質的に統括管理する者」であり、その他、資格や実務経験年数に関わる定めはありません
- 社労士試験における総括安全衛生管理者関連の対策では、正確な知識の習得、過去問演習を通じた横断学習が不可欠です
よくある質問
「総括安全衛生管理者」と「統括安全衛生責任者」は何が違いますか?
総括安全衛生管理者は、一定規模以上の事業場で、その事業場の安全衛生管理全般を統括管理する者です(労働安全衛生法第10条)。統括安全衛生責任者は、建設業などで複数の関係請負人の労働者が同じ場所で作業する場合に、労働災害防止の指揮・統括管理を行う者で、本記事で触れたとおり毎作業日1回以上の巡視義務があります。名称は似ていますが、選任される場面も職務も別の制度です。
※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
安全管理者・衛生管理者・産業医との役割の違いは何ですか?
総括安全衛生管理者は安全管理者・衛生管理者を指揮し、安全衛生管理全般を統括します(労働安全衛生法第10条)。安全管理者は安全に係る技術的事項(同法第11条)、衛生管理者は衛生に係る技術的事項(同法第12条)をそれぞれ管理し、衛生管理者には週1回の職場巡視義務があります。産業医は医師の中から選任され、労働者の健康管理等を行い、必要があるときは事業者に勧告できます(同法第13条)。
※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
総括安全衛生管理者を選任しなかった場合、罰則はありますか?
あります。選任義務(労働安全衛生法第10条1項)に違反した場合、50万円以下の罰金が科されます(同法第120条1号)。安全管理者・衛生管理者・産業医の選任義務違反も、同じ条文で同額の罰金の対象です。
※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
総括安全衛生管理者が出張や病気で不在のときはどうしますか?
事業者は、総括安全衛生管理者が旅行、疾病、事故その他やむを得ない事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければなりません(労働安全衛生規則第3条)。
※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
複数の事業場がある会社では、会社で1人選任すればよいですか?
いいえ。選任は会社単位ではなく「事業場ごと」に行います(労働安全衛生法第10条1項)。本記事のとおり、業種と事業場の常時使用する労働者数(屋外産業的業種は100人以上、屋内産業的業種は300人以上、その他の業種は1,000人以上)で判断し、該当する事業場ごとに選任します。
※出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
