行政事件訴訟法の第1条 ― 目的規定
ここからもう1つの大きな法律、行政事件訴訟法に入っていきます。まず1番、総論ということで第1条の目的規定から見ていきます。
繰り返しになりますが、各法律の第1条は行政書士試験でよく出題されます。短い条文であれば、覚えてしまうくらいの勢いで勉強しましょう。
行政事件訴訟法とは、行政上の法律関係に争いがある場合における訴訟手続を定めた法律です。
ベースは民事訴訟法 ― 刑事訴訟法・民事訴訟法との比較
ここがポイントなのですが、行政事件訴訟法のベースは民事訴訟法です。
刑事訴訟法の構造
訴訟法を大きく分けると、民事訴訟法と刑事訴訟法があります。簡単に言えば、刑事訴訟法とは、国家が国民を捕まえて、殺人罪や窃盗罪などで刑罰を科す ― つまり国が刑事司法を行う際に、裁判によって被疑者を懲役何年などと処断する、そうした作用を扱う法律です。一方当事者は国で、裁かれる側が国民です。弁護人はつきますが、国が国民を裁くという形が刑事訴訟法の大きな構造です。
民事訴訟法の構造
これに対して民事訴訟法とは、AさんとBさんがいて、売買契約をしたのにお金を払ってもらえないから訴えて、差押えを経て支払われる、といった場面を扱うものです。つまりAとBという対等な立場の当事者、国民同士が権利関係を争う手続です。国が一方的に上から裁くのではなく、互いに対等の立場で主張を交わし合います。そして裁判所がその間に立ち、公正中立なアンパイアとして関与するという構造です。
行政事件はどちらに近いか
では行政事件はどちらに近いかというと、一方が国であるため刑事訴訟に近いようにも感じられます。しかし、行政が行っている内容は、処分を下す、税金を取り立てるといったものです。どちらかというと構造は民事訴訟に近いのです。行政側と国民側がそれぞれの言い分を持ち寄り、双方の主張を突き合わせたうえで、中立の立場にある裁判所が判断を下します。このような構造に近いため、民事訴訟をベースにしたということです。
ただし、相手方の一方当事者が公の立場であることから、全くの民事訴訟と同じには扱えないため、行政事件というカテゴリーを設けて行政事件訴訟法が制定されました。ベースは民事訴訟にありつつも、特殊性があるため、行政事件を特別に扱う行政事件訴訟法が作られたのです。
行政事件訴訟法に定めがない場合は民事訴訟法を適用
行政事件訴訟法はそれ単体では完結しません。行政事件訴訟法に定めがない場合は、民事訴訟法の規定を適用するということになっています。
行政不服審査法との違い ― 適法・違法の判断のみ
もう1つ別の話があります。行政不服審査法との違いです。
行政事件訴訟は裁判所が関与する訴訟事件なので、行政処分が適法か違法かだけの判断を行います。つまり妥当かどうか(当・不当)の判断はしません。
ただし例外があり、行政庁の裁量処分について裁量権の範囲を超え、またはその濫用があったという場合、すなわち裁量の範囲を超えて違法と判断されるような場合には、裁判所が関与することができるとされています。


