社労士の仕事についてもっと詳しく知る!社労士ナビ

人事のプロ」で終わらない、企業内社労士のキャリアパス。経営幹部・役員を目指すための3つのステップ

「人事のプロ」で終わらない、企業内社労士のキャリアパス。経営幹部・役員を目指すための3つのステップ

「企業内社労士として専門性を磨いてきたが、この先のキャリアの伸ばし方が見えない」――そんな悩みを抱える人事・労務担当者は少なくありません。日々の労務相談や社会保険手続きをこなす「人事のプロ」として評価されつつも、経営の意思決定からは距離があると感じている方も多いのではないでしょうか。専門知識を給与計算や就業規則整備といった守りの業務だけで終わらせるのは、もったいない使い方です。本記事では、現代の経営テーマである「人的資本経営」を背景に、企業内社労士が「人事部長」の先にある「経営幹部・役員」を目指すための実践的な3つのステップを解説します。読み終わるころには、明日から取り組むべき次の一手が見えてくるはずです。手続きの専門家に留まらず、企業の未来づくりに関わるキャリアの第一歩を、ここから踏み出していきましょう。

なお、本記事は、社労士資格取得後の多様なキャリアを解説する【社労士】資格のキャリアについての一部です。社労士のキャリア全体の選択肢にご興味のある方は、ぜひこちらのピラーページもご覧ください。

無料資料請求(サンプル教材付き)

まずは社労士資格の価値を再確認!フォーサイトの合格メソッドが詰まった教材を、あなたのキャリアプランニングにお役立てください。

もくじ

なぜ今、企業内社労士が「経営幹部」を目指すべきなのか?

「人的資本経営」への移行という時代の流れが、社労士を専門職から経営の中核を担う戦略パートナーへと押し上げつつあります。現代の企業価値は、設備や資金といった有形資産だけでなく、人材という「人的資本」によって大きく左右されるようになりました。投資家も企業の持続的成長を見極める上で、人材戦略を重視しています。この「ヒト」に関する戦略の策定と実行において、労働法規から人材育成、組織開発までを扱う社労士は、重要な役割を担いやすい立場にあります。

時代は「人的資本経営」へ。社労士こそがそのキーパーソン

内閣官房 非財務情報可視化研究会が公表した「人的資本可視化指針」では、企業に対して人材育成方針や従業員エンゲージメント、労働慣行といった非財務情報の開示を求めています。これらはまさに社労士の専門領域です。法令遵守という「守り」の観点だけでなく、従業員の価値を高めて企業価値向上につなげる「攻め」の戦略立案でも、社労士の知見が求められる場面が増えています。

経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、経営戦略と人材戦略の連動が求められており、人事部門が経営の中心的な役割を担う必要性が示されています。社労士が持つ専門知識を経営層が理解しやすい数値・指標に置き換え、戦略的な提言を行う力が、今後ますます問われるようになる流れです。

CHRO(最高人事責任者)という新たなキャリアの頂点

この流れの中で、日本企業でもCHRO(最高人事責任者)という役職を設ける動きが見られます。CHROは人事部長とは異なり、CEOのパートナーとして経営戦略の策定から関与し、人材戦略の観点から意思決定を行う経営幹部です。社労士が持つ「ヒト」に関する専門性は、CHROとして経営の舵取りを担う際に、有力な土台となります。

つまり、企業内社労士が経営幹部を目指す道は、時代の要請を踏まえれば現実的な選択肢のひとつになっています。

経営幹部への3つのステップ

経営幹部への3つのステップ

ステップ1:「守りの人事」から「攻めの戦略人事」へのマインドシフト

経営幹部に近づく最初の取り組みは、日々のオペレーション業務から一歩進み、経営課題の解決に直結する「戦略人事」を実践することです。経営層が評価する対象は、給与計算や社会保険手続きの正確さといった「できて当たり前」の業務ではなく、その専門知識を事業成長や組織課題の解決にどう活かしているか、という点にあります。

オペレーション業務を効率化し、戦略的時間を創出する

まずは、テクノロジーを活用して定型業務を徹底的に効率化・自動化し、より付加価値の高い業務に取り組む時間を捻出します。クラウド勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入はその一例です。これにより、「作業者」から「戦略家」へと役割を変える土台を作ります。

具体的には、RPAツールを活用した定型業務の自動化、人事管理システムの統合による情報の一元化、ペーパーレス化による業務フローの簡素化などが挙げられます。これらの取り組みにより、従来は日々の処理に費やしていた時間を、戦略的な人事施策の企画立案に充てることができるようになります。

経営課題を「人事の言葉」で語るデータ活用術

次に、人事データを分析し、経営層が理解できる「数字」で課題を可視化します。例えば、「離職率の高さ」を嘆くだけでなく、「特定の部署で離職率が他部署より30%高く、その結果、年間で数百万円規模の採用・再教育コストが発生している」と具体的に示すイメージです。人事評価制度や賃金制度の改定が、従業員のエンゲージメントや生産性にどう影響するかをデータで示し、費用対効果を明確にした上で改善策を提言します。

厚生労働省の賃金統計データなどの公的データと自社の状況を比較分析することで、客観的な根拠に基づいた提言ができます。また、従業員満足度調査やエンゲージメント調査の結果を、離職率や生産性といった経営指標と関連付けて分析すると、人事施策の投資対効果を示しやすくなります。

守りの業務を完璧にこなすだけでは、経営層からの評価には届きにくい面があります。データをもとに人事課題を経営課題として捉え直し、解決策を提言する「攻めの姿勢」こそが、経営層からの信頼を得る土台になります。

ステップ2:人事の壁を越え、「経営視点」を身につける

人事の専門家であると同時に、ビジネス全体を理解する「経営の当事者」としての視点を持つことが重要になります。経営幹部は、人事だけでなく、財務、営業、開発といった会社全体の機能を俯瞰し、最適な経営資源の配分を判断する立場です。人事施策がビジネス全体に与える影響を理解できないと、的確な戦略は描きにくくなります。

財務諸表からビジネスを読む力

自社の損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)を読み解き、「売上はどこから生まれ、コストは何にかかっているのか」「人件費の増減が利益にどの程度影響するのか」を把握します。これにより、「なぜ今、この事業に投資するのか」「なぜコスト削減が必要なのか」といった経営判断の背景を理解でき、現実的で効果の高い人事戦略を立案しやすくなります。

例えば、営業利益率が業界平均を下回っている場合、単に人件費削減を提案するのではなく、売上向上のための営業人材の育成強化や、生産性向上のための業務プロセス改善といった、より戦略的な人事施策を提案できます。財務の視点を持つことで、人事部門は費用がかかるだけの部門ではなく、企業価値を生み出す部門としての役割を担えるようになります。

財務知識の習得には、簿記3級・2級の学習FP講座での金融知識の学習が有効です。社労士に加えてこうした資格を持つことで、人事と経営の両面から企業を支えられる人材になりやすくなります。

「越境学習」で事業部門のリアルを学ぶ

人事部の外に出て、他部門と積極的に関わります。営業会議に参加して顧客の声を直接聞く、開発部門のプロジェクトに人事として参画するなど、他部門での経験を重ねることで、各部門が抱える課題やビジネスの現場感覚を肌で感じられます。これにより、机上の空論ではない、現場に即した人事施策を打ち出しやすくなります。

具体的には、営業部門の同行営業で顧客ニーズを直接理解する、製造現場での労働環境を自ら体験する、新規事業の立ち上げに人事の協働者として参画するなど、さまざまな形での他部門経験が考えられます。これらの経験を通じて、各部門特有の課題や文化を理解し、部門横断的な人事戦略を立案する力が身についていきます。

自分の専門領域という縦割りから抜け出し、ビジネス全体の言葉と論理を学ぶこと。それが、人事のプロから経営のプロへと歩みを進める鍵になります。

ステップ3:変革の「実行者」となり、リーダーシップを発揮する

最後の段階は、専門知識と経営視点を背景に、分析や提言に留まらず、自らが先頭に立って組織を動かし、変革を進めていくことです。役員に求められるのは、優れた評論家ではなく、困難な状況でも組織を率いて結果を出す「実行者」としての力だからです。

チームを率いるマネジメントスキルを磨く

まずは人事部内のプロジェクトリーダーやマネージャーとして、チームの目標設定、進捗管理、メンバーの育成といった経験を積みます。小さな成功体験を積み重ね、周囲から「あの人に任せればチームをまとめてくれる」という信頼を得ることが大切です。

マネジメントの基本は、明確な目標設定とメンバーへの権限委譲、そして適切なフィードバックです。人事制度改定プロジェクトや新人事システム導入プロジェクトなど、複数の関係者を巻き込む取り組みでリーダーシップを発揮し、成果を出した実績が、経営幹部への信頼を築く重要な要素となります。

経営層を動かす提言力と議論を進める力

経営会議などの場で、データに基づいた論理的な提言を行うだけでなく、反対意見にも耳を傾け、議論を建設的な結論へ導く進行力を磨きます。自分の意見を通すだけでなく、多様な意見をまとめ、組織全体にとっての最適解を見つけ出す過程を主導することで、経営者としての資質を示せます。

企業理念の浸透や組織風土の改革といった、答えのないテーマについて議論を率い、具体的な行動計画に落とし込む経験は、役員に求められる重要な実績となります。関係者全員が納得できる解決策を導き出し、それを実行に移せる人材が、経営幹部として求められる人物像です。

知識や分析力は、実行されて初めて価値を生みます。リスクを恐れず変革の旗手となり、組織を動かした実績が、経営幹部への評価につながっていきます。

簿記の紹介を見る FP講座の紹介を見る

「簿記」「FP」講座で経営視点を強化し、キャリアの幅を広げていきましょう。

労務管理の進化

労務管理の進化

フォーサイト講師のアドバイス

まとめ

この記事のまとめ
  • 本記事では、企業内社労士が「人事のプロ」で終わらず、経営幹部・役員へとキャリアアップするための具体的なステップを解説しました。

社労士資格は、経営の議論に加わる立場へ近づくための土台となる資格です。日々の業務に追われるだけでなく、一歩高い視座を持ち、戦略的にキャリアを組み立てていくことで、市場価値の伸び方は大きく変わります。

経営幹部になることで得られる経済的リターンについては、社労士の年収は?勤務・独立別に徹底解説で詳しく解説しています。また、社労士の基本的な仕事内容については、社労士の仕事内容とは?をご覧ください。

あなたの挑戦を、フォーサイトは全力でサポートします。

バリューセット講座に申し込む

社労士資格を経営層クラスのキャリアへつなげるための学びを、ここから始めていきましょう。

この記事の監修は二神大貴(ふたがみ だいき)
まずは試験範囲を1周してみましょう。
出身
大阪府
経歴
東京大学法学部卒業。社会保険労務士資格(2017年合格)、社会保険労務士登録(2018年)、年金アドバイザー3級を保有。
趣味
お笑い、子供への読み聞かせ
座右の銘
冬は必ず春となる
社労士ナビ一覧へ戻る