【合格者たちのその後】File.02:「安定」から「挑戦」へ。大手企業の人事部から独立した社労士が語る、年収とやりがいのリアルな変化

※本事例は、複数の合格者・社労士の声をもとに構成したイメージケースです。実在の特定個人を指すものではありません。 大手企業の人事部。安定した給与、充実した福利厚生、社会的な信用――。それは、多くの人が目指すキャリアの一つかもしれません。社労士資格を取得し、その専門性を組織内で発揮することに、手応えを感じている方も多いでしょう。一方で、「会社の看板がなければ、自分に価値はあるのだろうか」と立ち止まる方も少なくありません。本企画『合格者たちのその後』File.02では、その葛藤の末に大手企業を離れて独立を選んだ社労士、佐藤由美さん(仮名)の事例を紹介します。大手メーカーの人事部から独立開業――その先で生じた年収とやりがいの変化を、佐藤さんの事例から具体的に紹介します。
なお、本記事は、社労士資格取得後の多様なキャリアを解説する『【社労士】資格のキャリアについて』の一部です。社労士のキャリア全体の選択肢にご興味のある方は、ぜひこちらのピラーページもご覧ください。
File.02:佐藤由美さん(40歳)のプロフィール
※本プロフィールはイメージケースであり、実在の特定個人を指すものではありません。
氏名: 佐藤 由美(匿名)
年齢: 40歳
経歴: 大学卒業後、大手電機メーカーに就職。人事部に15年間在籍し、給与計算から人事制度企画、労務コンプライアンス体制の構築まで幅広く担当。35歳の時にフォーサイトの通信講座で社労士資格を取得。38歳で独立開業し、現在3年目。
独立前の年収: 約1,000万円
現在の年収: 約1,500万円
独立を決意した理由: 大規模な組織の中で、制度を「運用」することに手応えを感じつつも、個々の従業員の顔が見えづらいことや、経営の意思決定に直接関与しにくいことへのもどかしさを感じるように。「もっと経営者の近くで、組織が変わる瞬間に立ち会いたい」という想いが強くなり、独立を決めました。
独立前夜:年収1,000万円の裏にあった葛藤
「福利厚生は手厚く、周囲からは『勝ち組』と言われました」と佐藤さんは当時を振り返ります。数千人規模の人事制度改定プロジェクトを任されるなど、仕事のスケールは大きく、社労士としての知識も存分に活かせる環境でした。しかし、その一方で、自分が作った制度が現場でどう受け止められているのか、その手応えは希薄でした。
「制度を整えても、それが目の前の誰か一人に届いているのか、はっきり実感できなかったんです」と佐藤さんは語ります。
企業内人事という立場は、多くの人が一定の安定を感じる仕事です。年収1,000万円という報酬、福利厚生、社会的な信用。これらは確かに魅力でした。一方で佐藤さんの中には、次第に「このままでいいのだろうか」という疑問が芽生えていったといいます。
制度を「作る」ことはできても、その制度が従業員一人ひとりにどう届いているのか見えにくい。経営層と現場の間に立ちながら、どちらの本音にも踏み込みにくい――。そんなもどかしさが、日々の業務の中で積み重なっていきました。
転機:「その制度、本当に従業員のためになっていますか?」
ある時、佐藤さんはメンタルヘルス不調で休職する従業員の面談を担当しました。彼が口にしたのは、「会社の立派な制度は、僕たち現場の苦しみとはどこかズレている」という言葉でした。
「その一言が強く残りました。会社を守るための『守りの人事』に徹してきたけれど、本当に向き合うべきは、目の前で苦しんでいるこの一人だったのではないか、と」佐藤さんは当時を振り返ります。
この経験を機に、佐藤さんは「会社のルール」を作る側から、一社一社の経営者と従業員に寄り添い、現場で機能する制度を一緒に組み立てる側に回りたいと考えるようになりました。それは、安定した立場を手放す決断でもありました。
独立後の現実と逆転の軌跡
最初の顧問先は1社。貯金を切り崩した1年目
「独立すれば、大手での経験を武器にすぐ仕事が来るだろうと、少し甘く見ていました」と佐藤さんは苦笑します。最初の半年間、顧問契約はわずか1社。収入は月10万円にも満たず、会社員時代の貯金を切り崩す日々が続きました。
「安定した給与が毎月振り込まれることのありがたさを、痛いほど感じましたね。何度も『会社に戻りたい』と思いました」と佐藤さんは正直に語ります。
独立1年目の年収は約400万円。在職時の年収1,000万円と比べると、6割の減少です。生活費を切り詰め、将来への不安を抱えながら、それでも佐藤さんは活動を続けました。この時期の試行錯誤が、後の顧客開拓につながっていきます。
逆転の武器は「大手での経験」。3年目で年収1,500万円へ
転機となったのは、あるIPO準備企業からの労務デューデリジェンスの依頼でした。「前職で培ったコンプライアンス体制構築の知識が、そのまま活きたんです」と佐藤さんは振り返ります。
その仕事が高く評価され、口コミでIPO支援や複雑な人事制度設計の依頼が舞い込むようになりました。「組織人事の現場での『当たり前』は、中小・ベンチャーにとっては『特別なノウハウ』だったんです」と佐藤さんは語ります。
3年目には顧問先も30社を超え、年収は1,500万円に到達しました。独立前の1.5倍、独立1年目と比べると約3.75倍の水準です。
佐藤さんの事例は、大手企業で15年間積み重ねてきた経験と知識が、独立後の差別化要因として活きた一例といえます。IPO準備の「駆け込み寺」に!上場支援コンサル社労士の仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
【特別インタビュー】独立で見えた、年収以外の報酬
ここからは、佐藤さんに独立後の「年収」と「やりがい」の変化について、より詳しくお話を伺いました。
Q1. ズバリ、年収はどう変わりましたか?
「金額で言えば1.5倍になりました。でも、それ以上に大きいのは『自分の提供した価値がそのまま報酬になる』という感覚なんですよ。会社員時代は評価の一部でしたが、今はクライアントからの報酬が、私の仕事への評価そのものです」
佐藤さんの年収変化について、参考データと比較してみます。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、大企業の管理職クラス(部長級・課長級など)の平均年収は、年度や区分によって概ね900万円~1,100万円台のレンジで報告されています(詳細は厚生労働省 賃金構造基本統計調査をご確認ください)。佐藤さんの独立前の年収1,000万円は、この水準に近い位置にあります。
一方、独立開業した社労士の年収については、業界調査や報道では、開業初期の社労士の年収は400~800万円台のレンジで語られることが多いとされています(具体的な水準・年度は全国社会保険労務士会連合会等の最新調査をご確認ください)。佐藤さんの3年目での年収1,500万円は、開業数年で水準を伸ばした事例の一つといえます(成果には個人差があります)。
社労士の年収は?について、より詳しい統計データや年収アップの方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
Q2. 「やりがい」の質は、どう変わりましたか?
「会社員時代は『制度を作る』ことがゴールでしたが、今は『社長の表情と、従業員が落ち着いて働ける状態を見届ける』ことがゴールになりました。経営者の隣で、組織が変わり、人が育っていく場面に立ち会える。その手応えが、独立して得た一番大きな収穫だと感じます」
佐藤さんが語る変化は、単なる満足度の話にとどまりません。自分の仕事が誰のために、どのような価値を生み出しているのかが見えやすい環境へ移ったことが、働き方そのものを変えています。
大手企業では、一つの制度が完成するまでに多くの部署や人が関わります。その中で自分の貢献度を実感することは難しく、また制度が実際に従業員にどう受け止められているかを直接知る機会も限られていました。
独立後は、クライアント企業の経営者や従業員と直接対話し、課題を一緒に解決していく過程全体に関われます。お礼の言葉を直接聞けることや、自分の提案を受けてクライアントが組織を変えていく姿を間近で見られること――。これが、佐藤さんが感じている独立後のやりがいです。
Q3. 大手企業での経験は、独立後にどう役立ちましたか?
「正直に言うと、体系的な知識とコンプライアンス意識が一番役立っています。中小企業の経営者には、経験則で判断されている方も少なくありません。そこに『前職の大規模組織ではこういう運用でした』と根拠を添えて説明すると、納得していただきやすいんです。前職で学ばせてもらった経験が、今の仕事の土台になっています」
佐藤さんの言葉からは、会社員時代の経験が独立後の差別化要因として機能していることが分かります。企業内社労士のキャリアパスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
佐藤さんから、同じように迷っている方へ
「もし今の環境に少しでも疑問を感じているなら、それは自分の中に変化を求める気持ちが芽生え始めているサインかもしれません。独立にはリスクがあります。ただ、会社の看板に頼らず自分の名前で仕事をする経験は、確かな自信と、自分なりの安定感を育ててくれるはずです」
「社労士の知識は、自分自身を守り、新しい挑戦を後押ししてくれます。まずは資格取得という土台づくりから始めてみてください。その先に、新しい景色が見えてくるはずです」
佐藤さんの言葉には、同じ葛藤を経験したからこそ語れる説得力があります。会社に残るか、独立するか。答えは一つではありません。ただ、どちらの道を選ぶにせよ、確かな知識と資格を備えておくことが、選択肢を広げる土台になります。
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まとめ
- 佐藤由美さんの事例は、大手企業の人事部から独立を選んだ社労士の歩みを描いたイメージケースです。年収1,000万円の前職を離れ、独立1年目には年収400万円という現実に直面。一方で、それまでの組織で培った経験と知識を活かし、3年目には年収1,500万円に到達。同時に、自分の仕事の手応えを直接感じられる働き方を得ることができました。
- 佐藤さんの事例で鍵になっているのは、フォーサイトで学んだ知識と、大手企業で積み重ねた実務経験です。どのキャリアを選ぶ場合でも、その土台となる基礎知識を備えておくことが、選択肢を広げる支えになります。
- 新しい一歩を考えている方は、まず学習をスタートしてみてください。フォーサイトは学習の進め方からキャリア相談まで、しっかりサポートします。

講師からのアドバイス
佐藤さんの素晴らしいキャリアは、社労士資格が持つ可能性を象徴しています。企業内で専門性を深める道も、独立して挑戦する道も、どちらも正解です。大切なのは、そのどちらの道でも通用する『揺るぎない基礎知識』を身につけること。私たちの講義の信条は『わかる+活かす=合格』ですが、その『活かす』先は無限に広がっています。フォーサイトは、皆さんがどんな未来を描いても、その土台となる知識を提供することをお約束します。(二神 大貴 講師)