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問契約ゼロから1年で50社獲得。紹介だけで顧客が増える、ある開業社労士の「聞く力」※参考事例

顧問契約ゼロから1年で50社獲得。紹介だけで顧客が増える、ある開業社労士の「聞く力」※参考事例

「社労士として独立したい。でも、自分には営業の経験もセンスもない...」難関試験を突破する知識はあっても、顧客ゼロから事業を立ち上げる「営業力」への不安が、独立への夢にブレーキをかけているケースは少なくありません。多くの開業セミナーでは「人脈を作れ」「交流会に行け」と語られますが、人と話すのが得意ではない自分が見知らぬ経営者に自らを売り込む姿を想像すると、足がすくんでしまう。そうした「自分を売り込むことへの抵抗感」は、真面目な専門家が独立をためらう大きな壁になりがちです。本企画『合格者たちのその後』File.03では、一切売り込むことなく、顧客の方から「ぜひお願いしたい」と言われ、その顧客が新たな顧客を連れてきてくれる――そんな循環をつくった元公務員の社労士、鈴木誠さん(仮名)を取材しました。たった1年で顧問先50社を「紹介のみ」で獲得した背景にあったのは、「話す力」ではなく、徹底した「聞く力」でした。(※参考事例)この記事では、「営業が苦手」という弱みが、大きな武器になり得る理由を、鈴木さんの実践した具体的な手法とともに紐解いていきます。

なお、本記事は、社労士資格取得後の多様なキャリアを解説する『【社労士】資格のキャリアについて』の一部です。社労士のキャリア全体の選択肢にご興味のある方は、ぜひこちらのピラーページもご覧ください。

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もくじ

File.03:鈴木 誠さん(42歳)のプロフィール

※本プロフィール・内容は参考事例であり、実在の特定個人を指すものではありません。

氏名: 鈴木 誠(匿名)

年齢: 42歳

経歴: 大学卒業後、市役所に18年間勤務。市民課や商工振興課で、日々多くの市民や中小企業経営者の相談に対応。行政の縦割りの中で、一人ひとりの悩みに深く寄り添えないことにもどかしさを感じ、40歳で独立を決意。フォーサイトの通信講座で社労士資格を取得し、開業。

開業時の状況: 顧客ゼロ、営業経験ゼロ。

現在の状況: 開業3年目。顧問先は100社を超え、すべて既存顧客や提携士業からの紹介。

紹介が生まれる「聞く力」の3つの極意

紹介が生まれる「聞く力」の3つの極意

独立の壁:「営業が苦手だ...」元公務員を襲った静かな絶望

「いやー、開業届を出した翌週、電話が一本も鳴らなくて。あの静けさは今でも忘れられません」と鈴木さんは苦笑します。交流会に参加しても、華やかな経営者たちの輪には入れず、名刺交換をするだけで精一杯。「自分を売り込むなんて、どうやればいいか全く分からなかった。市役所時代は、黙って座っていれば相談者が来てくれた。あの環境がいかに恵まれていたか、痛感しました」。

貯金だけが減っていく日々に、「自分は独立に向いていなかったのかもしれない」と、廃業を真剣に考えた時期もあったという。営業経験ゼロ、自分を売り込むことへの苦手意識。独立開業に一般的に求められるとされるスキルが、当時の鈴木さんには十分ではないように感じられました。

しかし、この「営業が苦手」という特性が、後に大きな強みへと転じていきます。

極意1【信頼の土台】:相手の心を開く「アクティブリスニング」

転機は、ある税理士から紹介された一件の就業規則作成依頼でした。「このチャンスを逃すまいと、私がやったのは売り込みではなく、ただひたすら社長の話を聞くことでした」。

鈴木さんが実践したのは「アクティブリスニング(積極的傾聴)」という技法です。これは、単に相手の話を聞くだけでなく、相手が「自分の話を真剣に聞いてもらえている」と実感できるコミュニケーション技術です。

アクティブリスニングで意識したいこと

1. うなずきと相槌

相手の話すペースに合わせ、単調にならないよう「はい」「なるほど」「それで?」と反応を変えます。これにより、相手は「ちゃんと聞いてくれている」という安心感を得られます。

2. 感情の反映(オウム返し)

「その時は本当に大変でしたね」「それは嬉しい報告ですね」と、社長の言葉に含まれる感情を繰り返すことで、「この人は自分の気持ちを分かってくれる」という信頼感を与えます。

3. 沈黙を恐れない

相手が言葉に詰まった時、焦って次の質問をしません。沈黙は、相手が思考を整理している重要な時間だと捉え、じっと待ちます。この「待つ力」こそが、深い信頼を生む鍵となります。

「法律の話は全体の1割。9割は、社長の創業時の苦労話や、従業員への想いを聞いていました。すると、社長がポツリと『こんなに話を聞いてくれた専門家は初めてだ』と言ってくれたんです」と鈴木さんは振り返ります。

極意2【課題の核心】:経営者の本当の悩みを見抜く「SPIN話法」

信頼関係の土台ができた上で、鈴木さんは課題の核心に迫ります。「就業規則を作りたい」という表面的な要望の裏にある、本当の課題を探るために、彼は自然な会話の中で「SPIN話法」を用いていました。

SPIN話法とは、英国 Huthwaite International 創業者の Neil Rackham 氏が著書『SPIN Selling』(1988年)で体系化した質問技法で、4つの段階的な質問によって顧客の潜在ニーズを引き出す方法です。

SPIN話法を構成する4段階の質問

S(状況質問:Situation)

「現在の従業員数は何名ですか?」「勤怠管理はどのようにされていますか?」と、客観的な事実を確認します。これにより、顧客の現状を正確に把握します。

P(問題質問:Problem)

「勤怠管理で、何か不便に感じている点はありますか?」「最近、従業員の定着率で気になることは?」と、潜在的な問題点を引き出します。多くの経営者は、問題を明確に認識していないことがあります。

I(示唆質問:Implication)

「もし残業代の計算にミスがあった場合、将来的にどのような懸念が考えられますか?」「採用がうまくいかないと、事業計画にどんな影響が出そうでしょうか?」と、問題がもたらす影響に気づいてもらいます。

N(解決質問:Need-payoff)

「もし、明確な評価制度があって、社員のやる気が上がったら、会社にとってどんな良いことがありますか?」と、課題解決後の理想の姿をイメージさせます。

このプロセスを通じて、当初の「就業規則作成」という依頼は、「優秀な人材が定着する評価制度の構築」という、より本質的で付加価値の高いコンサルティングへと昇華していきました。就業規則の作成・変更は社労士の腕の見せ所!では、ヒアリングから始まる就業規則作成の実務について詳しく解説しています。

「営業が苦手」は武器になる!鈴木さんの成功への道のり

「営業が苦手」は武器になる!鈴木さんの成功への道のり

極意3【伴走の姿勢】:経営者の孤独に寄り添う「カウンセリングマインド」

鈴木さんの「聞く力」の真髄は、単なる技術論ではありません。「経営者は孤独です。市役所時代、多くの経営者が誰にも言えない悩みを抱えているのを見てきました」と鈴木さんは語ります。

鈴木さんは、法的なアドバイスをするだけでなく、経営者の個人的な不安や葛藤にも耳を傾けます。これが「カウンセリングマインド」です。

「先日も、ある社長から深夜に『眠れない』と電話がありました。資金繰りの話でも労務トラブルでもない。ただ、プレッシャーで押しつぶされそうだ、と。私は何も解決策は言えません。ただ1時間、相槌を打ちながら話を聞いただけです。でも電話を切る時、社長は『ありがとう。明日も頑張れそうだ』と言ってくれました」

この「いつでも話を聞いてくれる」という安心感が、鈴木さんを経営者にとって頼れる「経営の伴走者」にしているのです。社労士は法律の専門家であると同時に、経営者の身近な相談相手でもあります。

社労士には社会保険労務士法第21条で守秘義務が課され、違反した場合は同法第32条の2により刑事罰(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の対象となります。

鈴木さんは「この守秘義務こそが、経営者が安心して本音を話せる理由だ」と語ります。専門家としての誠実さが、深い信頼関係の基盤となっているのです。

「鈴木さんじゃないとダメだ」―こうして「紹介ループ」は生まれた

最初のクライアントは、鈴木さんの仕事ぶりに深く満足し、取引先の経営者にこう紹介しました。「すごい社労士がいる。とにかく、一度話を聞いてもらってみてくれ」。

紹介された経営者もまた、鈴木さんの「聞く力」に感銘を受け、熱心な支持者になります。そして、また別の経営者を紹介する――。これが、広告費ゼロで顧客が増え続ける「紹介ループ」の正体です。

紹介ループを支える要素

1. 感情面まで含めた顧客満足

課題が的確に解決されるだけでなく、「自分のことを深く理解してくれた」という感情面の満足が生まれます。この実感こそが、顧客を熱心な支持者に変える力となります。

2. 紹介のしやすさ

「法律に詳しい先生」ではなく、「とにかく親身に話を聞いてくれる先生」という紹介の仕方は、相手に警戒心を与えません。誰もが「話を聞いてほしい」という普遍的なニーズを持っているからです。

3. 関係性の質の高さ

信頼できる人からの紹介であるため、最初から良好な関係でスタートできます。これにより、契約率も非常に高くなります。

この好循環により、鈴木さんの顧問先は、わずか1年で50社に達しました。そして3年目の現在、100社を超える顧問先を持ち、そのすべてが紹介によるものです。社労士の年収は?では、顧客獲得が収入に直結する仕組みについて詳しく解説しています。※参考事例

広告費ゼロで顧客が増え続ける「紹介ループ」の正体

広告費ゼロで顧客が増え続ける「紹介ループ」の正体

【特別インタビュー】僕が「売らない営業」で成功できた理由

ここからは、鈴木さんに「聞く力」による顧客獲得の秘訣について、より詳しくお話を伺いました。

Q1. なぜ「聞くこと」が、これほど強力な武器になったのだと思いますか?

「経営者の多くは『答え』を求めているというより、頭の中で絡まった『問い』を整理してくれる相手を探しているのだと思います。私が質問し、じっくり聞きながら言語化していく――その対話のやりとりそのものに価値を感じてもらえたのかもしれません。」

Q2. 市役所での経験は、今の仕事にどう活きていますか?

「市民相談の窓口で、毎日何十人もの方の、理路整然としない話を聞き続けた経験は大きいですね。相手が本当に言いたいことは何か、言葉の裏にある感情は何かを探る訓練が、無意識にできていたのかもしれません。」

「いやー、当時は本当に泥臭くて。ある日、市民課の窓口で40分くらい怒鳴り続けた方がいたんです。最初は『手続きの不備』への苦情のように見えたんですが、よくよく聞くと、亡くなった奥様の手続きで役所を回り続けて疲れ切っていた、というのが本音でした。怒鳴っている内容と、本当に伝えたいことは別物なんだ――そう気づいた経験は、今でも経営者と向き合う時の支えになっています。」

「行政の縦割りを嫌というほど見てきたので、経営者の悩みを『これは労務、これは税務』と切り分けず、全体として受け止める視点も身につきました。経営者は会社全体のことを考えているので、専門分野だけに閉じこもらない姿勢が信頼につながったと思います。」

Q3. 営業が苦手な後輩に、一つだけアドバイスするとしたら?

「『自分を売ろう』としないでください。代わりに、『相手を誰よりも理解しよう』と決めてください。自分が話すのではなく、相手に9割話してもらう。それができれば、相手の方から『あなたにお願いしたい』と言ってくれるようになります。」

「人と話すのが得意ではない人が、傾聴のコミュニケーションと相性が良いことは少なくありません。自分を前面に出さない分、相手を主役にしやすい。結果として、それが自分に合ったスタイルだったと、今は感じています。」

二神講師

講師からのアドバイス

鈴木さんの成功は、社労士という仕事の本質を見事に体現しています。私たちの役割は、法律知識を披露することではありません。その知識を使い、目の前の一人の経営者、一人の従業員の悩みを解決することです。そのためには、まず相手を深く知る『聞く力』が不可欠。フォーサイトの講義では、単なる知識のインプットだけでなく、その知識が実務でどう活かされるのか、常に『人』を起点に考える視点を大切にしています。(二神 大貴 講師)

鈴木さんから、顧客開拓に不安を抱くあなたへ

「独立当初、私は自分の『口下手』な性格を呪いました。しかし今は、この性格こそが最大の武器だったと確信しています。無理に自分を変える必要はありません。あなたの中にある誠実さや、人の話に真摯に耳を傾ける姿勢を、プロの『技術』として磨いていけばいいのです。」

「社労士の知識は、そのための強力な土台になります。もしあなたが『営業が苦手だから』と独立をためらっているなら、それはもしかしたら、あなたにこそ大きな成功の可能性があるというサインなのかもしれません。」

鈴木さんの言葉には、かつて同じ不安を抱えていた人だからこそ伝えられる、確かな説得力があります。営業が苦手でも、いや、営業が苦手だからこそ歩める道がある。その可能性を、鈴木さんは自らの実践で示してくれました。

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この記事の監修は二神大貴(ふたがみ だいき)
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出身
大阪府
経歴
東京大学法学部卒業。社会保険労務士資格(2017年合格)、社会保険労務士登録(2018年)、年金アドバイザー3級を保有。
趣味
お笑い、子供への読み聞かせ
座右の銘
冬は必ず春となる
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