追加保証金(追証)が発生する仕組みと計算手順
信用取引では、当初に差し入れた委託保証金が値下がりや評価損によって目減りすると、追加保証金(追証)が必要になります。この講義では、委託保証金の最低維持率20%という基準を確認したうえで、追加保証金の金額を求める設例、追加保証金が必要になる株価を逆算する設例、代用有価証券に加えて現金を差し入れている設例の3つのパターンを解説します。

追加保証金は「追証(おいしょう)」とも呼ばれます。金融商品取引業者は、信用取引に係る受入委託保証金から建株の評価損を差し引いた保証金残額が約定価額の20%を下回る場合には、約定価額の20%を満たす金額を、損失計算が生じた日から起算して3営業日目の正午までの業者が指定する日時までに顧客から徴収しなければなりません。この20%を委託保証金の最低維持率といいます。

イメージ図で流れを押さえておきましょう。当初は約定価額の30%以上の委託保証金を差し入れますが、代用有価証券が値下がりしたり建玉に評価損が出たりすると、保証金の残額は目減りしていきます。当初の受入委託保証金から代用有価証券の値下がり分と建玉の評価損を差し引いた残りが約定価額の20%を下回ると、20%を維持する金額が追加保証金として徴収されます。

設例1は、時価800円のA社株式1,000株を制度信用取引で買い建て、委託保証金代用有価証券として時価400円のB社株式800株を差し入れたケースです。その後A社株式が700円、B社株式が280円になった場合の追加保証金を求めます。受入保証金は280円×800株×0.8=179,200円、評価損益は(700円-800円)×1,000株=△100,000円、約定価額×20%は800円×1,000株×20%=160,000円です。したがって追加保証金は160,000円-(179,200円-100,000円)=80,800円となります。

設例2は、「株価がいくらまで下がったら追証になるか」を逆に求める問題です。時価4,000円のA社株式1,000株を買い建て、代用有価証券として時価2,000円のB社株式1,200株を差し入れた後、B社株式が1,800円になった場合を考えます。約定価額は400万円、追加保証金が必要となる額はその20%で80万円、受入委託保証金額は1,800円×1,200株×80%=1,728,000円です。差額の928,000円が許容できる評価損なので、1株あたりでは928,000円÷1,000株=928円。買値4,000円から928円を引いた3,072円を下回ると追加保証金が必要になります。

設例3は、代用有価証券に加えて現金も差し入れているケースです。時価1,500円のA社株式6,000株を買い建て、代用有価証券として時価450円のB社株式5,000株と現金100万円を差し入れ、その後A社株式が1,350円に、B社株式が400円に値下がりした場合を計算します。約定価額900万円の20%=180万円に対し、受入保証金残額は400円×5,000株×80%+100万円+△900,000円=170万円です。したがって追加保証金は180万円-170万円=10万円となります。現金部分は値下がりしないので、そのまま足し合わせる点に注意しましょう。

最後に〇✕問題で確認します。時価900円のA社株式2,000株を買い建て、代用有価証券として時価1,000円のB社株式1,000株を差し入れた後、A社株式が660円に、B社株式が700円になった場合、「追加保証金は8万円以上必要である」という記述の正誤を判定します。受入保証金は700円×1,000株×0.8=560,000円、評価損益は(660円-900円)×2,000株=△480,000円で、受入保証金から評価損を差し引いた残りは80,000円しかありません。約定価額×20%は900円×2,000株×20%=360,000円ですから、追加保証金額は360,000円-80,000円=280,000円となります。設問にある8万円は、この計算の途中に出てくる保証金の残額であって、追加で差し入れる金額ではありません。8万円では必要額に届かず、差し入れなければならないのは280,000円以上なので、答えは✕です。

この計算は最初は難しく感じられると思いますが、パターンに慣れて「毎回こことここを出せばよい」とつかめれば必ず解けるようになります。3つの設例と最後の確認問題を、答えを見ずにご自身で解けるところまで繰り返してください。