奇跡のリンゴ
常識破り、型破り、「絶対不可能」を覆し奇跡を起こした男のドラマ
神話をはじめ、多くの民話、説話に登場し、世界中の人々に親しまれている果実・リンゴ。ウイリアム・テルが射抜き、白雪姫が食し、ニュートンが万有引力を発見するきっかけとなり、Macintosh(マッキントッシュ)の商標としても使われています。
約4000年以上の歴史を持ち、品種改良を繰り返してきたリンゴ。「無農薬栽培は絶対不可能」というのが定説でしたが、それを覆したのが青森県のリンゴ農家。私財を投げうち、10年以上もの極貧生活に耐え、周囲の罵声にも屈せず、世界で初めてリンゴの自然栽培を成し遂げます。
今回ご紹介する『奇跡のリンゴ』は、木村秋則さんの実話を映画化したヒューマンドラマです。
妻思い・家族思いな「カマドケシ」が日本一有名なリンゴ農家になるまでの軌跡
日本一のリンゴの産地・青森県出身の木村さん。リンゴ農家の次男に生まれ、集団就職で首都圏の電機メーカーに入社するも、家庭の事情で退職。
地元・弘前に戻った木村さんは、結婚してリンゴ農家へ婿入りします。農薬で妻が体を傷めたことをきっかけに、1978年頃から無農薬・無肥料の林檎栽培に挑戦。害虫や、病気に侵され、800本のリンゴの樹は瀕死状態に。無収穫のため、一家は貧困状態に陥ります。
それでも、己の信じる道を突き進む木村さんは、村人たちから「カマドケシ」(かまどの火を消すほどの破産者、大ばか者という意味の東北方言)と陰口を叩かれるように…。
10年以上に及ぶ辛苦の日々を家族と共に耐え忍んだ末に、ようやく実をつけた『奇跡のリンゴ』。今やインターネットでの販売は数分で売り切れ、滅多に手に入らない希少品に。日本一有名なリンゴ農家となった木村さんの軌跡が丁寧に描かれています。
「バカになればいい」 自然との苦闘を経て体得したのは共生力
阿部サダヲが演じる木村秋則は、無我夢中で目の前の課題に取り組みます。ある時はリンゴの樹に話しかけ、またある時は虫への警告の立札を掲げたり、土を食み、畑を雑草だらけにしてみたり。その姿は、傍目からは狂気を宿したように見えるほど。
原作の『奇跡のリンゴ』(幻冬舎文庫)によると、現実では、スクリーンに映らない悲惨な場面も…。
「バカになればいいんだよ」
長年の苦闘を経て、自然と共生する知恵・教訓を体得した木村さん。現在、リンゴを育てながら、自然栽培を伝えるため、幅広く活動している木村さんは、こんな言葉を残しています。
「ひとつのものに狂えば、いつか答えに巡り合う」
狂うほど真剣に取り組んだとき、自分も世界も一変し、普遍の真理を見つけられるのかもしれません。