エンタープライズアーキテクチャとは?基本情報技術者試験のキーワード解説!

更新日:2021年7月20日

STRATEGYって書いてあるパズル

IT戦略は企業の成長戦略の一つとして、現代ビジネスにおいては重要な要素となっています。デジタル化が進む現代においては、ITとビジネスは切っても切り離せない関係にあり、IT戦略と事業戦略は一心同体の関係にあるといえるでしょう。

エンタープライズアーキテクチャは、企業全体のITシステム構築を考える上で役に立つ手法です。ITの導入を部分最適ではなく全体最適にするために、エンタープライズアーキテクチャの活用が重要となります。

基本情報技術者試験においても、エンタープライズアーキテクチャの基本的な内容が問われます。この記事では、基本情報技術者試験の対策としてエンタープライズアーキテクチャに関する解説を行います。

目次

IT戦略とは

IT戦略とは、企業経営に資するためにITをどのように活用するべきか考え、効果的なIT投資を行うことを意味します。企業が持つ金銭的・人的リソースは有限ですので、それをどのITシステムに振り分けるかを検討することは重要です。システム投資は大きな投資となりがちですので、無駄な投資はすなわち企業の業績悪化につながります。

一般的にITに関する戦略は攻めと守りに分かれるとされます。

攻めに関する戦略としては、ITを用いた事業創造や業務プロセスの改善など、企業の収益性を向上させるものです。一方で守りに関する戦略としては、PC端末やネットワーク、テレワーク環境などの業務を安定的に遂行するためのIT基盤の構築に関するものです。

攻めと守りのIT戦略を両輪として考えることが重要となります。

エンタープライズアーキテクチャとは

IT戦略を立案する上で、有用な考え方となるのがエンタープライズアーキテクチャです。

エンタープライズアーキテクチャは、企業全体のシステムを統一的な手法でモデル化し、業務とシステムの最適化を図る手法のことです。

一つ一つのシステムを最適化したとしても、企業の業務全体で見た時にそれが最適とは限りません。ほぼすべての業務においてシステムが利用される昨今では、全体的な視点でのシステム投資が大切です。

エンタープライズアーキテクチャの項目は大きく以下の4つの観点に分かれます。それぞれの観点で企業の業務・システムの全体像を整理します。

項目 概要
ビジネスアーキテクチャ 事業における業務プロセスやデータフローを全体的に示したもの
データアーキテクチャ 事業に必要となるデータの内容や他のデータとの関連性、データ構造などを全体的に示したもの
アプリケーションアーキテクチャ 業務プロセスを実施するシステムの機能や構成などを全体的に示したもの
テクノロジーアーキテクチャ システムの構築や運用において利用する技術を全体的に示したもの

ビジネスアーキテクチャ

ビジネスアーキテクチャは、事業における業務プロセスやデータフローを全体的に示したものです。ビジネスアーキテクチャは個別の業務ごとに整理するのではなく、事業全体を対象として整理するのがポイントです。

ビジネスアーキテクチャを整理するために、事業全体での業務プロセス図やデータフロー図を作成します。このビジネスアーキテクチャを前提としてシステム化構想を立てることで、個別最適ではなく全体最適のシステムを作り上げることができます。

データアーキテクチャ

データアーキテクチャとは、事業に必要となるデータの内容や他のデータとの関連性、データ構造などを全体的に示したものです。ビジネスアーキテクチャと同様に、事業全体で取り扱うデータを対象とすることがポイントとなります。

事業で取り扱うデータにどのようなものがあり、どのような特性を持っているのかを、E-R図などを利用して整理します。そして、ITシステムを作るうえでどのようなデータベースを構築するかを検討する上でのインプット材料とします。

アプリケーションアーキテクチャ

アプリケーションアーキテクチャは、業務プロセスを実施するシステムの機能や構成などを全体的に示したものです。

上述したビジネスアーキテクチャ、データアーキテクチャを具体化し、どのようなシステムでビジネスやデータを取り扱えばよいのか、各システムはどのように機能を切り分ければよいかを整理します。

また、各システム間で行うデータ連携についても整理します。

テクノロジーアーキテクチャ

テクノロジーアーキテクチャは、システムの構築や運用において利用する技術を全体的に示したものです。テクノロジーアーキテクチャでは、システム基盤をどのように構成するかを検討します。

例えば、自社システムの統一基盤としてパブリッククラウドを使うのか、データセンタに個別に構築を行うのかといった検討を行います。

エンタープライズアーキテクチャの関連要素

以下では、エンタープライズアーキテクチャに関連し、IT戦略を検討する上で重要となるキーワードについて解説します。

プログラムマネジメント

プログラムマネジメントとは、様々なシステム開発プロジェクトの全体管理を行い、全体最適を目指すための手法のことです。

上述したエンタープライズアーキテクチャでシステムの全体設計をしつつも、各プロジェクトの実行状況が統一的に管理できていなければ、計画の確実な実行は覚束ない状態となります。各プロジェクト単体でのプロジェクト管理では事業全体としてのスケジュール管理やコスト管理、リソース管理は不十分です。

そこで、プロジェクトを横断的に管理するプロジェクトマネジメントが必要となります。

近年では、特にDXをはじめとするデジタルを活用した事業改革に注目が集まっており、事業のIT化に関する全体管理を行うプログラムマネジメントを取り入れる企業が増えています。

フレームワーク

エンタープライズアーキテクチャに基づきIT戦略を立案・実行するために、様々なフレームワークが用いられます。基本情報技術者試験では、主に、COBITや共通フレームなどといった手法が問われます。

COBITとは、Control OBjectives for Information and related Technologyの略称であり、ITガバナンスに関するベストプラクティスを集めたフレームワークです。COBITでは、ITの企画から調達、開発、運用に関する各段階において、ITガバナンスの観点から行うべき取り組みについて紹介されています。

また、共通フレームとは基本情報技術者試験の実施主体でもある情報処理推進機構が提供している、ソフトウェアのライフサイクルにおける工程や工程ごとの作業内容を規定したフレームワークです。

共通フレームを参照することで、システムの調達や要件定義、設計、開発、テストなどにおいて実施すべき作業項目を確認できるため、作業の漏れ防止につながります。

ITポートフォリオ

ITポートフォリオとは、システムの投資においてシステムを特性ごとに分類し、投資額の配分を行うことです。企業のシステム全体計画においては、最も利益を拡大できるようにどのシステムを重視して投資を行うかを選別したうえで、選択と集中を行う必要があります。

そこで、企業の全ITシステムを網羅的に把握したうえで、各システムの投資規模や効果、リスクや課題などを一元的に把握できるITポートフォリオを作成し、システムの重要度を判断します。

また、ITポートフォリオを継続的に維持、更新することをITポートフォリオマネジメントといいます。一度作成したITポートフォリオは、事業環境の変化や企業の収益状況などをもとに、継続的に改善し、都度システムの重要度を見直していく必要があります。

まとめ

この記事では、基本情報技術者試験を受けようとされている方に向けて、エンタープライズアーキテクチャに関する内容の解説を行いました。

企業のIT戦略は企業の経営者やITコンサルタントなどが検討するものと思われがちですが、エンジニアであったとしても企業がどのようにシステムの全体計画を行っているかを理解することは重要です。概念的な範囲だけでもエンタープライズアーキテクチャやIT戦略の検討方法について押さえておくとよいでしょう。

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