不動産開発・販売事業

不動産業界といってもいくつかの業種に細分化されます。その中のひとつであるのが不動産開発業です。不動産開発業とは何を開発し、どのように売り上げを上げているのでしょうか。さらに不動産販売業とはどのような違いがあるのか。不動産開発業と不動産販売業の細かい事業内容について解説していきましょう。

デベロッパーと呼ばれる不動産開発業

不動産開発業と聞いても、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかと思います。不動産開発業はデベロッパーと呼ばれる業種で、このデベロッパーとゼネコンと呼ばれる不動産業の違いが分からないという方も多いようです。

デベロッパーの仕事は、単に建物を建てるというだけではなく、その地域一体をまとめて開発することにあります。建物を計画する、建設するのは不動産建設業、つまりゼネコンの仕事となります。

デベロッパーはひとつの建物を建てるわけではなく、その地域全体を開発するのが仕事となります。ただしデベロッパーにも細かく分けるといくつかの種類に分類され、それぞれ得意分野に特化した仕事をしています。

建物の建設だけではなくエリア全体を開発する

デベロッパーはひとつの建物を建てるわけではなく、その地域のインフラを整備したり、商業施設を建設したり、集合住宅を建設したり、災害対策を行ったりと、地域全体を開発するのが仕事となります。

また、不動産開発だけではなく、完成後の不動産物件を管理運営したり、販売を行ったりする不動産開発会社もあります。

マンション開発

マンション開発とは、いわゆるマンションの新築、建て替え業務となります。これだけですとゼネコンとの差別化が難しいところですが、デベロッパーの行うマンション開発とは、周辺の施設や住環境を考え、それに合わせた物件を設計開発するのがマンション開発事業です。

都市部へのベッドタウンで、周辺に学校や公園、病院などがしっかりとそろっている地域であればファミリータイプのマンションになりますし、周辺に大学キャンパスがあり、単身者の大学生が多い地域であればワンルームマンションの建設となります。

このように周辺状況や住環境、立地条件に合わせ、さらに地域の気候風土なども加味してマンションを開発、分譲、賃貸するのがマンション開発事業となります。

またマンション開発を行った後、完成した物件を、自社で販売するケースも少なくありませんし、住民が入った後の運営管理を行うケースも少なくありません。マンション開発を中心に行うデベロッパーは、比較的幅広い業務を行っているケースが目立ちます。

リゾート開発

デベロッパーは既存のリゾート地はもちろん、まだ開発が進んでいない地域をリゾート目的で開発するような事業も行います。リゾート地ですから宿泊施設や観光施設はもちろん、飲食店やリゾート客向けの商店の出店場所も確保し、道路交通の面では高速道路のICや駅、空港へのアクセスも考えた大規模な開発を行うこともあります。

宿泊施設や観光施設だけではなく、道路整備なども含めた大型のリゾート開発の場合、該当自治体とともに開発事業を進めることもあり、大規模な事業を手掛けることもあります。

商業施設開発

商業施設開発にはいろいろなケースがあります。ひとつの商業施設を開発するケースもありますし、周辺の商店や観光業も含め、複数の商業施設を企画開発することもあります。

分かりやすい例を挙げれば、いわゆる複合商業施設の建設計画などが商業施設開発に含まれます。同じ複合商業施設でも、都心部といわれる場所に建てる商業施設と、郊外に建設する複合商業施設では、どのような客層を想定し、どのようなテナントを見込むかも変わってきます。

こうした立地条件や周辺状況に合わせた施設開発、運営管理を行うのがデベロッパーということになります。

街づくり開発

リゾート開発と同様に、大規模な事業となるのが街づくり開発です。街づくり開発とは文字通り、その周辺地域全体をトータルに考え開発する事業になります。住宅建設はもちろん、道路整備、インフラ整備、公的機関の建設や公園、病院、商業施設の建設なども含めた開発が求められます。

大規模な開発計画の場合、様々な関係企業や自治体と連携し、街を作っていくことになります。

不動産販売業との違いは?

デベロッパーは様々な不動産物件を開発し建設していきます。その目的はもちろん完成した建物を販売する、もしくはテナントを募集することで利益を上げることも含まれています。

こう書くと不動産開発業も不動産販売業も同じような事業と思われがちですが、どのような違いがあるかを確認しておきましょう。

不動産を販売するだけではなく開発するのが仕事

不動産開発業の主な仕事は、不動産を建てることが主目的ではなく、あくまでも開発計画を立案し、その計画通りに事業を進めることです。もちろんその開発の中で建物を建設することもありますし、その建物を販売することもあります。

一方不動産販売業は、基本的にできている建物や物件を販売することを主目的としています。建設は不動産建設業などに任せ、できあがったものを販売するのが仕事です。また不動産販売業は、建物だけではなく、土地なども取り扱いますので、販売できる土地や建物を購入し、それを販売します。

開発業と販売業は似ている部分もありますが、主目的が違いますのでその違いを知っておきましょう。

基本は開発と管理業

デベロッパーの業務の基本は開発計画を立てること、そしてその事業を進めることです。必要な場合はほかの業種とも連携して業務を行います。もちろんほかの不動産業とも連携は必須です。

建物を建てるのは不動産建築業の仕事ですし、完成した不動産を販売する部分を不動産販売業に任せるケースもあります。また、そもそも開発する土地や建物を取得するために、不動産仲介業(流通業)とともに事業を行うこともありますし、マンション開発などで建てたマンションを貸し出すのであれば不動産賃貸業とも連携します。デベロッパーは多くの不動産業界の企業と連携し、大きな枠組みで事業を行うことが多いといえるでしょう。

また、商業施設やマンションなどの場合、完成後の運営管理をデベロッパーが行うケースは多く、デベロッパーの仕事の中心は開発と管理業務といってもいいでしょう。

不動産開発業の仕事の流れ

では一般的な不動産開発業の仕事の流れを確認しておきましょう。とはいえ不動産開発業の行う事業は幅広く、一概に今止められないのも事実です。ここで紹介するのはあくまでも一例と考えてください。

用地取得

まずはなにはなくとも用地の取得です。デベロッパーの場合、先に開発計画を立ててその計画に合わせた用地を取得するケースもありますし、取得した用地に合わせた計画を立てるケースもあります。

用地の取得は基本的に地権者から買い上げる形になりますが、もちろん地権者が行政であるケースも多く、デベロッパーは自治体とのつながりが深い業界といっていいでしょう。

用地買収の現場では、不動産の価値を正確に鑑定できる不動産鑑定士などの資格が重宝される傾向にあります。

開発計画の立案

続いてデベロッパーの本業でもある開発計画の立案に入ります。開発計画は取得した用地の立地や周辺施設、観光資源、交通の利便性などを考慮に入れ、どのような計画を立てるかが決まります。当然自治体が絡んだ開発計画の場合は、自治体の意向も聞き入れつつ計画を立案します。

計画立案と同時に行うのが、協力企業を探すことです。上でも再三触れてきましたが、不動産開発業の仕事は自社のみで行うことはあまりありません。不動産各業界はもちろん、ほかの業種でも必要な企業には協力を求めます。

インフラ整備を行うのであれば、電力会社やガス会社とも連携しますし、街づくり開発の場合はガソリンスタンドや病院などとも連携が必要です。

このように多くの業種と協力し、その地域を計画に従って開発できるように、陣頭指揮を執るのが不動産開発業の業務となります。

建物の建設

建物の建設に関しては、多くの場合ゼネコンに依頼します。とはいえ建設は丸投げというわけではなく、建設中も開発の予定通りに進んでいるかをチェックしながら建設を行います。

不動産開発業者の中には同じグループ会社にゼネコンがあるケースも多く、同じグループ会社で建設を行う場合も少なくありません。

建物の売却もしくは運営管理

デベロッパーが開発した事業がすべて完成したら、完成した物件にテナントを募集することになります。物件は売却するか賃貸に出すかという形になります。複合商業施設の場合は施設内のスペースを貸し出します。

商業施設のテナント募集では、どの位置をどの業種に割り振るかの検討が非常に重要になります。こうした情報のリサーチや、企画などが得意な方に向いている仕事といえるでしょう。

また、商業施設やマンションなどの運営管理を行うケースもあります。こうした管理運営業務も行う場合、管理業務主任者などの有資格者が活躍します。

不動産開発業で重宝される資格

最後に不動産開発業で重宝される資格を簡単に紹介しておきましょう。この資格がないと就職できないというわけではありませんが、あれば間違いなく就職や転職に有利になるはずです。

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、その不動産の価値を正確に鑑定できる資格は重要です。不動産開発業の仕事は、用地を取得するところから始まることも多く、この用地取得で力を発揮できる資格は当然のように重宝されます。

また、完成した施設にテナントを募集する場合に家賃設定や、出来上がった不動産を売却する際の価格設定などにも不動産鑑定士の知識は有用ですので、取得している方、もしくは取得を目指している方は、十分力を発揮できる職場といえるでしょう。
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管理業務主任者

管理業務主任者は商業施設やマンションなどの運営管理に欠かせない資格者です。もちろん管理の部分は不動産管理業者に依頼するケースも多いので、必ず必要というわけではありませんが、この有資格者がいることで、管理業務も行えるとなると、不動産開発業者としては大きなプラスといえます。

不動産開発業者の中でも商業施設開発やマンション開発を主に行っている企業では求人が多い傾向にあります。
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司法書士

一見不動産業務とはあまりかかわりがないように思える司法書士ですが、特に不動産開発業では多くの業務があります。

用地買収における不動産取引現場や、完成した不動産物件の売却、貸出の取引で司法書士が活躍します。司法書士は不動産の登記の代行が行える資格ですので、こうした不動産取引を行う場面では非常に重宝される資格者となります。

司法書士と聞くと独立開業する方が多いイメージですが、不動産の各業界で活躍する企業内司法書士の数は意外と多く、就職にはおすすめの資格となります。
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まとめ

不動産開発業は、日本中の多くの町で活躍できる業種となります。特にこれからの日本社会は少子高齢化が進み、さらにネットを利用した仕事内容の変化などもあり、どんどん生活様式は変化していくはずです。

生活様式の変化に伴い、街の在り方や住環境の変化は避けられないものになるでしょう。こういった時代においてもっとも力を発揮するのが不動産開発業といっても過言ではないといえます。