行政書士資格とは官公庁への提出書類および、権利義務、事実証明に関する書類の作成などを行うことができる資格です。これだけを聞くと、特に個人間の不動産売買契約の契約書などの作成、登記申請なども行えるように思われるかもしれません。しかし不動産取引の場において、行政書士ができることはほとんどないのが実情です。このあたりを解説していきましょう。
行政書士とは?
行政書士とは、総務省が管轄する国家資格であり、各種公的書類を作成するのが主な業務です。行政書士資格を取得するには、国家試験である行政書士試験に合格する必要があります。
また、行政書士試験に合格する以外にも行政書士の資格を得ることができる方法があり、ひとつは司法試験に合格することです。つまり、すべての弁護士は行政書士の資格も有しているということになります。同様に弁理士、公認会計士、税理士の有資格者も行政書士としての業務を行うことが可能です。
また、国家及び地方公務員として、20年以上事務職として働いていた方も行政書士の資格を取得することができます
不動産売買契約と行政書士
不動産売買契約などの場で、行政書士が行う業務にはどのようなものがあるのでしょうか。実は不動産売買契約においては、行政書士のみがいても不完全である場合がほとんどです。その理由を細かく見ていきましょう。
行政書士ができるのは契約書の作成のみ
行政書士が行えるのは、契約にまつわる各種書類の作成のみです。契約を行ったあと、登記申請の代行などは行政書士ではできず、登記申請の代行を行えるのは、弁護士か司法書士のみです。
また、不動産売買取引において、行政書士は仲介人をする資格もないため、取引現場において、また取引後の手続きに関しても行政書士ができることはほぼありません。もちろん、司法書士や弁護士の資格を持っている行政書士であれば、契約後の登記申請の代行なども可能です。
不動産業界と行政書士
不動産売買取引の現場においては、行政書士の資格のみを有する方では、書類の作成以外にできる業務はありません。しかし、不動産業界において、行政書士が活躍できるシーンは他にもあります。そんな行政書士が活躍するシーンを考えてみましょう。
行政書士の資格が活躍するシーン
行政書士が不動産業界において活躍するシーンとしては、建設業や宅建業を開業する際の必要書類の確認、および作成、そして開業許可申請の代行を行うことができます。建設業や宅建業として新規開業を行う場合、行政書士に依頼をして、必要書類を整えれば、あとは開業許可の申請まで依頼することができます。
また、個人の顧客に関して言えば、新築住宅の建築確認申請を行うことができます。新築住宅を建設する際は、建築確認申請書を検査機関などに提出し、建設計画が建築基準法に則っているかどうかを確認してもらう必要があります。この確認申請書の作成及び申請を行政書士が行うことができます。
ハウスメーカーなどは、社内に行政書士の資格を所有する従業員を雇っていたり、特定の行政書士事務所と契約し、確認申請に関してはアウトソーシングをしている場合が多いようです。
行政書士の業務は、公的書類の作成が中心です。そのために幅広い法的知識が必要となりますが、業務が書類の作成なだけに、行政書士単体ではすべてを代行できるシーンは多くありません。
しかし、ほかの有資格者と「共管業務」を行うことが多々あります。不動産業界に限って言えば、司法書士との共管業務として、不動産登記事項証明書等の法務局への交付請求手続きや、不動産登記規則に基づく法定相続証明情報の申出手続き代理があります。
また、建築士との共管業務として、 1ヘクタール未満の開発行為の設計図書を含む開発許可申請書作成や、農地転用許可申請手続、住宅金融公庫法に基づく住宅融資申請手続及び現場審査申請等一連の手続き、さらに建築基準法第2条第1号に規定する建築物に該当する工作物を除く工作物に係る確認申請手続きなどがあります。
まとめ
行政書士単体としては、不動産業界の業務においても多くの作業はできないものの、幅広い法的知識を利用して、ほかの資格を持つ人とともに多くの業務に携わることができます。
行政書士の資格を持つ方は、不動産業界でも求人は多く、特にハウスメーカーなどでは、行政書士の有資格者を探している企業も少なくありません。
不動産業界で活躍することを考えている方は、行政書士の資格に加えてほかの資格も取得するのがおすすめ。建築士に関しては、受験資格に学歴なども絡んでくるため、受験資格が限定されない宅建士や不動産コンサルタントの資格などと合わせて持つのがおすすめです。
また、可能であれば司法書士や税理士などの資格と同時に取得すると、業務の幅も広がるのでおすすめです。
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