建築士という資格のイメージは、建設現場で監督をしたり、建築設計をしたりというイメージが強いかと思います。こういった業務を行うとなると、不動産業界よりも建築業界で活躍する資格にも見えますが、不動産業界でも多くの建築士が活躍しています。そんな建築士の仕事と不動産業界での活躍をまとめました。
建築士とは?
一言で建築士といっても、数多くの建築士資格が存在します。有名なのは一級建築士や二級建築士で、これらの資格を受験するには、大学の建築学科を卒業している、実務経験があるなどの条件をクリアする必要があります。
このほかにも木造建築士、管理建築士など建築士には多くの種類があり、国家資格として認定されているのは一級建築士のみであり、ほかの建築士資格は都道府県認定の資格となります。一級建築士の試験の合格率は、例年10%前後。大学や専修学校で建築を学び、しかも実務経験がある人だけが受験してこの合格率ですから、その難易度はかなり高いと考えていいでしょう。
建築士全体の仕事としては、各種設計業務に加え、工事監理、各種手続きの代行などが挙げられます。
不動産業界で活躍する建築士
街中でも「〇〇建築士事務所」などという看板を見かけると思います。建築士、特に一級建築士の資格を取って、独立開業する方は少なくありません。しかし、不動産業界内でも、一級建築士の資格を持って企業で働くという人も多く活躍しています。
デベロッパーには必須
マンション開発やリゾート開発、そして街全体を開発することもあるデベロッパーにおいて、一級建築士はなくてはならない存在です。デベロッパーの仕事の多くは、更地に何をどのように建ててその土地を活用するかが重要になります。その企画開発のためには、設計ができる建築士の力が非常に重要になります。
いくらいい土地に、いい計画を立てても、実際に建てる建造物がしっかりしていなければその計画はまず進行しません。デベロッパーは地方自治体や他業種の企業とともに開発を行うこともあり、各業種や自治体にも納得してもらえるだけの計画を提出する必要があります。そこで重要になるのが建築士の設計技術ということになります。
もちろん、建築士の部分を有名建築家に依頼する、つまり外注にすることはありますが、外注にすればそれだけ予算が必要となり、デベロッパーの利益は下がります。そのため優秀な一級建築士を雇うことは、デベロッパーにとって重要なポイントとなります。
不動産売買業では手続きの代行も
もちろんデベロッパー以外の現場でも建築士は活躍しています。例えば不動産売買業。不動産売買業では、時に農地を購入し、その農地を宅地として売却するというケースがあります。特に離農する農家が増えている昨今、こういった取引は増えているはずです。
ちなみに農地として登記している土地は、農地以外で運用することはできません。これは農地と宅地用地では、固定資産税に差があるからで、農地を宅地として投資しなおすには、宅地転用申請を提出する必要があります。
この申請手続きを代行できるのが建築士となります。不動産売買業者がこういった取引のたびに、外部の建築士に申請手続きの代行を外注していると、その外注費用はそれなりの金額になります。その点社内に申請手続きの代行を行える建築士がいれば、外注費用が不要となり、売買業者の利益が大きくなります。
こういった点だけを見ても、建築士は不動産売買業者でも重宝されていることが分かります。
不動産コンサルティングも
不動産のコンサルティングを業務として行うには、不動産コンサルティングマスターの資格が必要となります。とはいえ、顧客の不動産に関してアドバイスをすること自体はコンサルティングマスターの資格がなくても可能です。
コンサルタントを業務として、契約をして対価を受けて行うにはコンサルティングマスターでないといけませんが、例えば不動産会社の社員が、対価をもらわずに助言するだけであれば問題はありません。
実際に不動産業界では、顧客の相談に乗ることも少なくありません。顧客の企業が北関東で物流拠点を探しているとなれば、不動産売買業者や仲介業者はいくつかの物件を提示します。その中で、顧客のニーズにもっとも近いものを勧めるわけですが、この時無資格の従業員が勧めるより、一級建築士などの資格を持った従業員が、理路整然とプレゼンをすれば、その説得力高くなります。
また建築士は不動産の価値や鑑定も行えますので、こういった能力も不動産業界では非常に重要になります。不動産業者の顧客が持っている不動産を、正確に鑑定することで、顧客の資産に関してしっかりと把握することができます。これは不動産業者にとっても大事なことですし、顧客としても非常にありがたいことになります。
まとめ
建築業界での活躍はもちろん、不動産業界においてもなくてはならない存在である建築士。受験資格が厳しいこともあり、取得するのが難しい資格でもあります。取得が難しいだけに、不動産業界のどこでも非常に重宝される資格で、建築士の資格を持っているだけで、好条件での就職も期待できます。
もちろん将来手に独立することも十分できる資格です。そのためには不動産業界で働きながら、多くの現場に立ち会い、経験を積むのがいいでしょう。その際は将来を見据え、どのような建築士になりたいかのイメージを持って就職先を探すといいでしょう。