毎年3月になると、日本中の地価が公示されます。東京都中央区銀座の銀座4丁目交差点付近の地価がもっとも高い地価であるなどとニュースでも伝えられるので聞いたことがある方も多いでしょう。この地価を決めているのが不動産鑑定士です。ここでは不動産鑑定士の仕事や不動産業界で実際にどのような場面で活躍するのかをみていきましょう。
不動産鑑定士とは?
不動産鑑定士は、国土交通省認定の国家資格であり、その取得難易度の高さから文系難関三大資格のひとつとされています。試験はマークシート方式の一次試験に加え、論文形式の二次試験があります。この試験に合格した後、1~3年の実務修習を受け、この修習の修了考査に合格してようやく不動産鑑定士の資格を取得できます。
そもそも試験に通るのが難しいうえ、その後に資格取得まで時間がかかることもあり、取得難易度はかなり高い資格となっています。
不動産鑑定士の主な業務として、土地や建物などの価値を正確に判断することが挙げられます。不動産関係の資格はいろいろとありますが、不動産そのものが持つ価値を評価することができるのは、この不動産鑑定士の資格のみということになります。
不動産鑑定士が活躍する場面
不動産の価値を鑑定することができる不動産鑑定士。では不動産業界の中で、不動産鑑定士はどのような業務を行っているのでしょうか? ほかの資格ではできない不動産鑑定という作業が重要になるシーンを考えていきましょう。
中古物件の評価額を確定
不動産売買業や、仲介業では、様々な不動産を取り扱います。土地ひとつとっても山林であったり宅地であったり農地であったりと、その種類は様々です。これらの取引において、その土地にどれほどの価値があるかを鑑定するのが不動産鑑定士になります。
さらに同じ農地でも、農地として利用するならいくら、宅地として転用するのであればいくらなど、その用途によっても評価は変わってきます。
不動産鑑定士がもっとも能力を発揮するのが中古の建物の評価です。中古の建物の評価は、その建物の構造、工法、そして現在の状態など建物に関する情報をまずは加味して考えます。さらに周辺の環境や立地、災害危険度なども考慮に入れて最終的な不動産価値を算出しますので、非常に難しい作業になります。
こういった中古の建物の取引には不動産鑑定士の存在は欠かせない存在といえるでしょう。
再開発地域の不動産鑑定
不動産業界の中でもデベロッパーの仕事には不動産鑑定士が深くかかわってきます。デベロッパーはマンション開発やリゾート開発など、建物自体の開発から、地域全体の開発まで幅広く請け負います。
こうした広い地域を開発するようなプロジェクトでは、多くの企業が参加し、ひとつのエリアを作り上げていきます。そのため完成した街や建物には様々な権利が絡んでくることが多く、それらの状況を踏まえたうえで、建物やエリアの地価をしっかりと評価していく必要があります。
再開発をした地域には多くの不動産があり、いろいろな権利が絡んでくるが、その権利を理解したうえで各々の評価額を鑑定
不動産賃貸業でも活躍
不動産賃貸業においては、不動産鑑定士がその建物の評価をし、その評価を基に地代や家賃を決定します。賃貸業において地代や家賃が決まらないと、貸し出すことができないのはもちろん、資産の計算もつきませんので、不動産鑑定士の評価は非常に重要なものになります。
また、近年増えている個人の不動産投資という点でも不動産鑑定士がいるのといないのでは、結果が大きく変わってきます。個人が行う不動産投資も、不動産賃貸業の一種です。通常は自身で物件を決めますが、この時不動産鑑定士に相談ができれば、極めて精度の高い評価が期待できます。
いくら勉強をしたとしても、素人である個人と、国から正式に不動産の価値を評価してよいと認定されている人では、やはり大きな違いがあります。どうしても不動産投資で成功したい方は、不動産鑑定士に相談するのもひとつの手でしょう。
融資の際にも
近年不動産鑑定士に求められる業務の一つとして、金融関係の業務が挙げられます。例えばある企業が手持ちの不動産を担保にして金融機関に融資を申し込んだ場合、重要になるのがその不動産の価値です。
そこで不動産鑑定士がその不動産の価値を算出。金融機関はその算出結果を基に融資をするかどうか、そしてするとすればどのくらいの金額を融資するかということを決定します。
近年の不動産鑑定士は、こうした業務が増えていることもあり、不動産の知識に加えて、金融関係の知識が求められているといわれています。
まとめ
不動産業界においては、その業態を問わず非常に重要な仕事を請け負う不動産鑑定士。もちろん独立開業も可能な資格ですし、不動産会社内に従業員としていても、非常に優遇される資格になります。
資格取得に関しては非常に難しく、取ろうと思ってもそう簡単に取れる資格ではありませんが、時間をかけてでも取得をする価値のある資格でもあります。おすすめはまずほかの不動産関連の資格を取得し、その後じっくりと腰を据えて不動産鑑定士の資格を取得することです。
複数の資格を持つことで、より信頼度の高い不動産鑑定士としての活躍が見込めるでしょう。