不動産流通事業

不動産流通事業と聞いてもあまりピンと来ない方も多いかもしれません。不動産を流通させる仕事ですから、この流通事業は不動産売買仲介事業、不動産賃貸仲介事業など、不動産の売買や賃貸契約の仲介を行うのが主な事業になります。そんな不動産流通事業の細かい事業内容について解説していきましょう。

在庫を持たずに利益を出す

不動産流通業の大きな特徴としては、在庫を持たずに利益を出すことでしょう。不動産を所有している個人や企業から仲介業務の委託を受け、不動産を探している企業や個人とマッチングすることで仲介手数料を得るのが不動産流通業の基本的な業務になります。

売主・買主双方に営業を行う

不動産流通業ですから、不動産を流通させるのが仕事です。不動産を所有する人と、不動産を求めている人をマッチングして、不動産取引を制約させることで仲介手数料を手にするのが業務となりますが、そのために必要なのが営業であり、営業が業務の中心となります。営業をする相手は不動産所有者はもちろん、不動産を探している人も対象となるため、双方に対して営業をかける必要があります。

一般的には不動産を所有している人から物件情報の提供を受け、その物件を販売、もしくは賃貸する顧客を探す形が多いため、営業比率としては、不動産所有者に対する営業が多くなります。

農業用地から工業用地まで幅広く扱う

不動産の売買や仲介と聞くと、マンションや一戸建てなど居住用の不動産や、企業のオフィスを連想しがちですが、不動産流通業者が扱うのはこれだけに留まりません。取り扱うのは不動産ですから、当然土地も取引対象となります。農業用地や、工業用地、倉庫や工場などといった不動産も仲介の対象となります。

また、農業用地を宅地に転用して販売するなどの仲介事業も行いますので、不動産流通業で働く方は、当然ながら不動産に関する豊富な知識を求められることになります。

業務の中心は営業

不動産業界の中でも、不動産流通業は営業を行う機会が多く、そのため営業力のある人が活躍できる業界といえることができます。通常営業に向いている方というと、コミュニケーション能力が高く、何度も足を運ぶハートの強い方というイメージがあるかと思います。

不動産流通業でも同様の能力は当然必要になりますが、取り扱うものが不動産だけにほかにも求められる能力があります。それが情報収集能力と、不動産に関する専門知識です。不動産の価値は不動産そのものの価値でありながら、周辺の状況に大きく影響を受けるものです。例えば特に特徴のない土地でも、近い将来そこに鉄道が通る、高速道路のICができるなどの条件があると、不動産の資産価値は跳ね上がります。

こういった情報の収集はもちろん、不動産取引に関する知識や、税制に関する法改正など、日々情報をアップデートしていく必要があります。不動産は基本的に高額なものが多いので、通常の営業職以上に、勉強をし続ける必要がある仕事といっていいでしょう。

仲介事業は顧客同士をマッチングする

不動産流通業において大事なポイントは、自社が所有する顧客同士を上手にマッチングすることです。不動産流通業の主な収入源は仲介手数料です。この仲介手数料は、不動産を持っている人からも、探している人からも受け取ることができる費用になります。

つまり、自社の顧客同士を上手にマッチングできれば、双方から手数料収入があるため、企業としての売り上げも大きくなります。

そのため一部不動産流通業者の中には、自社の顧客同士のマッチングにこだわり、他社のかかわる物件を紹介したがらない業者もあります。もし不動産流通業者を利用する場合は、自社同士のマッチングにこだわらず、借りる側、買う側の利益を最優先に考えてくれる業者を選ぶようにしましょう。

マッチングだけではなく登記や税務の相談も

不動産流通業の仕事は、不動産の売買契約、賃貸契約における手数料を手にすることです。そのためにできるサービスに関しては手厚く、多くの不動産流通業者は、不動産登記の代行を行ったり、不動産取引における税務の相談などにも乗るケースが多いようです。

さらに、不動産投資を希望する顧客や、持っている不動産の運用に悩んでいる顧客に対するアドバイスを行うこともあり、こういった業務を行うには、不動産に関する知識だけではなく、金融に関する知識や税制に関する知識も求められることになります。

仲介とアドバイスが不動産流通業も主な業務と考えていいでしょう。

街の不動産屋も不動産流通事業

上で「不動産流通業者を利用する場合は」と書きましたが、多くの方はそんな機会はないと考えているかもしれません。しかし、ほとんどの人が不動産流通業者を利用した経験があるはずです。それがいわゆる街の不動産屋さんです。

一人暮らしなど、賃貸物件に住んだ経験のある方は、街の不動産屋などで物件を紹介してもらい、その物件と賃貸契約をしたことかと思います。街の不動産屋さんは、自分で多くの物件を持っているわけではなく、多くの物件オーナーから借主を探してもらうように依頼を受けて物件を紹介しています。

そして街の不動産屋さんが手にする収入は、いわゆる「仲介手数料」と呼ばれるものであり、不動産屋さんの仕事が不動産賃貸仲介業であることの証拠ともいえます。

こう考えると多くの人が一度は利用したことがあるのが不動産流通業ということになるかと思います。

不動産投資や運用などのサポートも

不動産流通業は、不動産を売買する、賃貸契約を結ぶことがないと収入を得られない仕事になります。そのため重要となるのが、不動産所有者の持っている不動産をどう活用するかを考えることです。

不動産流通業者の中には、不動産運用に関してアドバイスを行う会社も少なくありません。このアドバイスは不動産所有者に行うのはもちろん、不動産を探している顧客に、どのような不動産を持つべきか、また所有した不動産をどう生かすべきかをアドバイスすることもあります。

単に仲介をするだけではなく、どのような運用がいいかなどを的確にアドバイスするのも仕事の一環といえるかもしれません。

不動産投資を望む顧客に最適な物件を紹介

近年、サラリーマンなど、メインの仕事をほかに持ちながら、不動産投資を行い家賃収入を得るサラリーマン大家も増えています。こうした不動産投資を望む個人顧客に、予算や状況から最適な物件を紹介し売買契約を結ぶのも不動産流通業者の仕事です。

不動産投資では収入を得る方法が大きく分けて2つあります。ひとつは購入した不動産物件を貸し出し、家賃収入を得るインカムゲイン、そしてもうひとつは持っている不動産をできるだけ高く売却し、売却益を得るキャピタルゲインです。上で紹介したのがインカムゲインに関するアドバイスです。そして当然ながらキャピタルゲインに関してもアドバイスを行います。

どのようなタイミングで、どのような状態で売却するのがベストかをアドバイスし、顧客がそのアドバイスを信用してくれた場合、このサラリーマン大家は、今度は不動産を所有する顧客に立場を変えます。

また、こうしたアドバイスを行うことで、手持ちの物件を売却できたサラリーマン大家は、こんどは再び不動産購入側の顧客と立場を変え、不動産流通業者から物件を紹介してもらうことになります。1人の顧客をもつことで、複数の取引を成立させることができるため、最近ではアドバイスが重要な業務のひとつになっています。

不動産運用を望む顧客に最適な運用方法を紹介

不動産を所有している企業や個人の中には、自分が持っている不動産をどのように運用するのがベストか悩んでいる方も少なくありません。その不動産を自分で購入しているのであれば、購入の時点で運用のイメージもあるかと思いますが、例えば相続で手にした不動産などの場合、相続したのはいいが、どのように運用すべきかが難しいところ。

こういった顧客の悩みに対し、正確な数字などを用いて、最適な運用方法をアドバイスするのも大事な仕事のひとつになります。

不動産流通業界で重宝される資格

最後に不動産流通業界の仕事内容から、どのような資格を持っていると就職や転職に有利になるかを確認しておきましょう。ここでは特に紹介していませんが、不動産取引の専門知識を持つ宅建士も、当然ながら重宝される資格になります。

不動産鑑定士

不動産の売買や賃貸を仲介するのが主な業務ですから、売買契約、賃貸契約において、不動産の価格や賃料が適正なものであるかどうかを判断する能力は非常に重要となります。不動産の価値を正確に鑑定できるといえば不動産鑑定士の資格です。

営業業務が中心となる不動産流通業において、不動産鑑定士の資格をもっていることは、顧客に対し安心感を与え、より信頼される営業マンとなるため非常に重宝される資格といえます。
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ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーは、個人の資産状況や収入、家族構成、ライフスタイルなどから、最適な資産運用をアドバイスするのが業務になります。このことから不動産を所有する個人顧客に対し、ファイナンシャルプランナーという立場から、佐生的な不動産運用に関してアドバイスを行うことができます。

多くの顧客を抱えることが、業務拡大において重要となる不動産流通業では、顧客のニーズにこたえるこのような資格は、有資格者がいればありがたいということになります。
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不動産コンサルティング技能士

不動産コンサルティング技能士は、不動産コンサルティングマスターとも呼ばれる、不動産投資、不動産運用に関するスペシャリストです。ファイナンシャルプランナーが個人顧客のアドバイザーなら、不動産コンサルティング技能士は不動産を所有する企業などのアドバイザーとなります。

ファイナンシャルプランナー以上に不動産に関する知識が豊富なだけに、より重宝される資格と考えていいでしょう。
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司法書士

不動産業界では非常に活躍の場が多いのが司法書士です。不動産取引において必要となる機会が多いのが不動産登記です。この不動産登記、基本的には取引をする本人が行うことが義務付けられていますが、一部士業はこの登記を代行することができます。そんな士業のひとつが司法書士です。

ファイナンシャルプランナーや、不動産コンサルティング技能士といった資格が、不動産流通業の営業職で重要な資格だとすれば、売り上げに直結する不動産取引の現場で重宝されるのが司法書士の資格です。取得が難しい資格ではありますが、持っていればより好条件の仕事を見つけることができるでしょう。
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まとめ

不動産流通業といわれるとあまり耳慣れないかもしれませんが、不動産仲介業、さらに言えば街の不動産屋さんも不動産流通業のひとつであると聞くと身近なものに感じるのではないでしょうか?

土地や物件といった現物の在庫は持たず、売りたい人と買いたい人をマッチングし、仲介することで手数料を受け取るという業務は、資金力がなくても始められる事業ではあります。しかし、資金力が必要ない分、営業努力が必要となる仕事でもあります。どれだけの不動産を確保できるか、どれだけの顧客を確保できるかが売り上げに直結する仕事ですので、不動産業界の中では、未経験者でもチャレンジしやすい業種であることは間違いありません。業務自体は比較的単純なものの、非常に競争の激しい業界といえるでしょう。