不動産管理事業

マンションやアパートなどの集合住宅や、多くのオフィスが集まるオフィスビル、さらに複数のテナントが入る商業施設などでも重要な事業を請け負うのが不動産管理事業です。不動産物件を日常的に管理することから、長期的な修繕計画を立てることまで、その建物の維持管理を担っています。そんな不動産管理事業に関してまとめてみましょう。

不動産管理事業の2つの基本事業

不動産管理事業は大きく分けて2つの事業に分けられます。ひとつは借主を募集し家賃を回収すること、もうひとつは物件の価値を高めるための維持管理を行うことです。これらの事業に関して詳しく解説していきましょう。

借主を集め賃料を回収する

まずは管理の依頼を受けた不動産物件への入居者を募集する仕事があります。不動産仲介業などを通じ入居者を集め、オーナーと入居者の間に入り賃貸契約、売買契約を結びます。不動産管理事業を行う企業が扱う物件は、居住用のマンションやアパートに限らず、オフィスビルや商業施設もあります。商業施設の場合はテナントを募集しますが、商業施設の立地や客層なども考慮し、最適な業種のテナントを選ぶなど、不動産の価値を最大限高めるような借主探しを求められます。

入居者やテナントが決まり、賃貸契約を結んだ場合、毎月の賃料の回収も不動産管理事業者の仕事となります。賃料の滞納などにも対応する必要があり、一度管理業務を請け負うとオーナーとは長い付き合いとなるのが不動産管理事業の特徴となります。

プロパティマネジメント

プロパティマネジメントとは、不動産管理事業全体を指す言葉としても使われますが、より絞り込んだ解釈をすれば、「不動産の価値を最大化すること」と定義することができます。つまり管理業務を請け負った不動産に対し、最適な修繕計画や設備投資を行うことが中心の業務になります。

不動産の価値を最大化することで、入居者への賃料も高く設定することが可能です。不動産管理事業の収入は、不動産のオーナーとの管理委託契約における管理料になります。この管理料は、賃料の数パーセントといった設定が中心となっているため、賃料を高く設定できるということは、オーナーにとっても不動産管理事業者にとっても収入アップにつながる重要なポイントとなります。

不動産管理事業の具体的な業務内容

不動産管理事業の主な業務は上で解説した2つの事業となります。ではこの2つの事業のさらに細かい業務内容について触れていきたいと思います。もちろんここで解説するのは一般的な業務であり、不動産管理事業者によっては、独自の業務を行っている会社も多くあります。

物件に合った家賃設定を行う

不動産管理事業者は、府動作を所有するオーナーと管理業務契約を結びます。契約を結んだ不動産に対し、借主を募集するのが最初の業務となりますが、募集するために必要なのが賃料の設定です。もちろんオーナーの意向もあるかと思いますが、オーナーが不動産の専門知識がない場合、適切な賃料設定が難しい場合もあります。

そこで不動産管理事業者は、不動産物件の状況や周辺の環境、立地などを加味し、最適な賃料設定を行います。不動産の賃料を設定するためには様々な要素を考慮する必要があるでしょう。例えば居住用の不動産物件であれば、周辺の商業施設(コンビニエンスストアやスーパーなど)までの距離や、最寄り駅までの所要時間、さらに病院や学校までも距離なども考慮に入れる必要があります。さらに、最寄駅から都心部のオフィス街までも時間や利便性なども考慮に入れて、最終的な賃料が決まります。

不動産管理事業には、不動産に関する細かい知識が必要であり、適切な判断能力が求められる業種といえるでしょう。

さらに賃料に関して付け加えると、いわゆるサブリース契約というのも不動産管理事業者と不動産オーナーの間の契約になります。不動産投資を考えたことがある方、行っている方は、このサブリース契約という単語を目にしたことがあるかと思います。

サブリースとは転賃、つまり又貸しを意味します。契約の関係性を説明すると、不動産管理業者が不動産オーナーより不動産物件を借り上げ、その借りた物件を実際の借主に貸し出すという形です。

サブリース契約では、多くの場合空室保証がつきます。つまり借り上げた物件が空室であっても、賃料の8~9割がオーナーに支払われるという契約になります。その代わり、借主が見つかっても、オーナーに入る賃料は、実際の賃料の8~9割という契約で、この契約をする場合も家賃の設定が大きな問題となるのです。

賃料を安くすれば当然借主を見つけやすくなりますが、その代わりオーナーの賃料収入は低くなります。一方家賃を高く設定すると、借主が見つかりにくくなります。オーナーは空室保証で安心ですが、不動産管理事業者は賃料収入がないままに、オーナーに空室保証をしなければいけません。

オーナーも不動産管理事業者も納得できる家賃設定をすることが重要になります。

借主を募集する

適切な賃料設定ができたら、実際に借主を募集します。借主を募集するのは、自社で行う不動産管理事業者もありますが、多くの場合不動産仲介事業者に業務依頼することになります。

不動産仲介事業者とは、わかりやすく言えば街の不動産店などであり、不動産を借りたい顧客、購入したい顧客が直接問い合わせてくる窓口となる会社です。こうした不動産仲介事業者に対し情報を開示し、借主を募集します。

不動産仲介業者との契約には3種類の契約形態があります。複数の仲介業者に情報を開示し、複数の業者に探してもらう「一般媒介契約」、1社の仲介業者にのみ借主・買主探しを依頼するものの、オーナー自身も借主・買主を探すことができる「専任媒介契約」、そして1社に借主・買主探しを依頼し、オーナー自身が探すこともできない「専属専任媒介契約」があります。

一般媒介契約がもっとも早く借主・買主が見つかる可能性が高いですが、その分契約料が高くなります。反対に専属専任媒介契約の場合、契約した仲介業者が前向きに借主・買主を探さない限り、借主・買主が見つかるまで時間がかかります。ここで時間がかかると、オーナーとしてはマイナスが大きくなりますが、契約料は抑えることが可能です。

不動産オーナーと協議の上、どの仲介業者とどのような媒介契約を結ぶかを決め、買主・借主を探すことになります。

借主から家賃を回収する

管理業務を委任された物件が賃貸契約物件だった場合、借主から家賃を回収し、その家賃をオーナーに入金するのも不動産管理事業者の仕事になります。賃料が毎月定期的に入金されれば問題のない業務ですが、入金が遅れたり、滞納が続いたりした場合の対応も不動産管理事業者の業務となります。

物件の日常の管理維持

不動産物件の価値を維持管理するために重要なのが、日常的な管理業務です。オフィスビルやマンションなどで、常駐している管理人がいわゆる不動産管理事業者ということになります。

そのオフィスビルやマンションの共用部分の清掃や、電気設備などの管理などを行い、その物件が劣化することを防ぎます。

また、管理業務が行き届いた物件というだけでも、借主や買主が付きやすい物件ともなりますので、管理事業者にとっては重要な業務のひとつです。

物件の長期的な管理維持計画を策定

マンションやオフィスビルなどの建物は、時間の経過とともに劣化をします。そのため築年数の古い物件の賃料が安くなるのは当然です。しかし普段からの修繕や設備の見直しなどが、適切に行われていれば建物の劣化速度は抑えることができます。

建物の劣化速度を遅らせるということは、それだけその建物の価値を高く維持できるということであり、不動産管理事業者が目指す、不動産の資産価値を高めることにつながります。

不動産管理事業者は、管理する建物の工法や素材、劣化状況や周辺環境なども併せて考慮し、その建物に最適な修繕計画を策定します。また、必要な場合は新規の設備投資を行ったり、設備の交換なども計画します。

もちろん修繕や設備交換の費用は、不動産オーナーが積み立てる修繕費用を中心に行いますので、積み立て費の状況と、建物の劣化状況から最適なプランを考える必要があります。

このような修繕計画の策定なども不動産管理事業者の業務であり、計画に問題がなければ専門の事業者に修繕作業の依頼などを行います。

こうした建物の管理維持は、建物の価値を高める、保持するにはもっとも重要な業務であり、長期間にわたる維持管理が的確であれば、築年数が古くなった建物でも資産価値を落とすことはありません。もしオーナーが売り出す場合など、キャピタルゲインに大きな影響が出ますので、管理の上手な不動産管理業者は多くの顧客から信頼され、多くの契約を結んでいます。

不動産管理事業で求められる資格

不動産管理事業といっても、様々な業務を行う必要があります。それぞれの業務には求められる資格があり、その資格を持っていることが就職や転職に役立ちます。特に必要とされる資格に関してご紹介しておきましょう。

管理業務主任者

マンションなどを管理運営するために、必須となるのが管理業務主任者の資格です。マンションなど集合住宅の修繕計画などを策定したり、管理組合に対し重要事項説明を行える専門の資格で、不動産管理事業とは切っても切れない資格といえます。

管理業務主任者は、管理組合30に対し1名の割合で所属している必要がありますので、今後業務拡大を目指す不動産管理事業者としては、一人でも多く確保しておきたい資格者といえるでしょう。

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マンション管理士

管理業務主任者が、管理事業者側の資格とすれば、マンション管理士はマンションの管理組合の運営が可能となる資格です。マンションに入居する方といっても一般の方が中心です。、管理組合とはどのような組織で、どのような力があり、どのように運営すべきかということに関しては知識がないという方がほとんどです。

不動産管理事業者で、そんなマンションの管理組合を運営できる有資格者を用意しておけば、マンションの入居者、所有者も安心して物件を購入できます。そのために多くの不動産管理事業者がマンション管理士を自社で用意しています。
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不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の資産価値を鑑定できる唯一の資格です。不動産管理業者は、不動産のオーナーから管理業務の委託を受けるわけですが、その不動産がどの程度の資産価値があるか?家賃設定を行うのであればどの程度が妥当か?といった基本的な問題を解決するため、不動産鑑定士の資格が重宝されます。
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まとめ

不動産管理事業者は、不動産所有者から物件を預かり、その物件に借主・買主をつけ、さらに物件の資産価値を高めることを主な業務としています。

ほかの不動産業との関係性を簡単に説明すると、不動産開発業者が建設計画を立て、建設業者が建物を建設し、不動産管理業者が管理委託を受け、不動産流通業者に依頼して借主・買主を見つけるというような関係になります。

もちろんほかの不動産業者とも連携することはあり、様々な業種と連携しながら不動産の運営管理といった面で収入を得る業種です。

不動産管理業者は、不動産物件を所有するといった在庫を持つリスクはなく、一度契約したオーナーとは長い付き合いになることが多いため、不動産業界の中でも安定感のある業種といえます。就職や転職で不動産管理業者を目指す方は、求められる資格を取得するなどすると、より有利な条件で採用されるでしょう。