不動産賃貸事業

サラリーマンなど本業の仕事がありながら、不動産を所有し、その不動産を貸し出すことで利益を上げているサラリーマン大家。家賃収入となると不労所得のように感じますが、これも立派な不動産賃貸業という事業になります。一般的な不動産賃貸業の事業内容や、不動産賃貸業で役立つ資格などをご紹介します。

物件を貸し家賃収入を得る仕事

不動産賃貸業とは、持っている不動産物件を顧客に貸し出すことで家賃収入を得るのが主な業務となります。この説明だけですと、不動産賃貸仲介業との違いが分かりにくいので、より細かく解説していきましょう。

物件を購入もしくは建設する

不動産賃貸業は、賃貸に向いている物件を購入し、自社が所有している物件を貸し出すことで家賃収入を得ることが主な業務です。賃貸仲介業との違いは自社で不動産を所有しているかどうか。不動産賃貸業は自社で物件を所有し、賃貸仲介業は物件を持っているお\オーナーと、物件を探している顧客をマッチングすることで仲介手数料をもらうのが仕事です。不動産賃貸業と不動産賃貸仲介業には、不動産という在庫を持つか持たないかという違いがあります。

不動産賃貸業は、基本的に購入した不動産を貸し出しますが、中には自社で土地を購入し、マンションやオフィスビルなどの建設計画を立てる企業もあります。建設事業に関しては建設会社に任せるものの、設計計画などを立てるのは自社というケースもありますし、計画の段階で不動産開発業を行っている企業に依頼するケースもあります。

いずれにせよ、自社で貸し出す物件を建設する企業もあるということは知っておきましょう。

サラリーマン大家も不動産賃貸業

近年増加の傾向にあるサラリーマン大家。サラリーマンなど本業がありながら、賃貸向けの不動産を購入し、その不動産を貸し出すことで家賃収入という副収入を得るサラリーマンのことをサラリーマン大家と呼びます。

家賃収入を副収入としている場合、いわゆる不労所得と考えられがちですが、こういったサラリーマン大家も立派な不動産賃貸業を行う事業主となります。

不動産投資を検討したことがある方は、インカムゲインとキャピタルゲインという単語を目にしたことがあるかと思います。インカムゲインとはいわゆる賃料収入のことです。キャピタルゲインとは持っている不動産を売却することで、売却益を得ることです。

サラリーマン大家に限らず、不動産賃貸業を行う企業もキャピタルゲインを意識しています。購入した物件を一定期間貸し出し、ある程度賃料収入を得た後、その物件を売却してキャピタルゲインを得るのも事業の一つです。そのためにも購入した不動産の価値を高めるような事業も重要な事業の一環といえるでしょう。

住居もオフィスも賃貸業の対象に

賃貸物件ということで、住居用の物件をイメージしがちですが、もちろん対象となる不動産物件は企業向けのオフィスや、倉庫、工場用地なども含まれます。不動産賃貸業は、在庫を持つ必要がありますので、顧客がつかない物件を持つわけにはいきません。顧客が多そうな物件を吟味し、所有することが重要となります。

不動産賃貸業の中には、特異な分野を持つ企業が多数あります。これはその企業のある地域によって決まっていることが多く、都心部を中心に事業を展開している企業は、マンションや倉庫よりもオフィスビルなどの運営が中心になります。

いわゆるベッドタウンと呼ばれるような郊外の住宅街が主な活動地域となり企業の場合はマンションなど居住用の物件に強いですし、都心部から離れた地方部の不動産賃貸業の中には、工場用地や倉庫用地のような物件に強い企業があります。

このようにその企業がどの地域を中心に活動しているかで、特異な分野がありますので、就職や転職を考えている方は、まず事業内容などを確認し、自分の関わりたい分野かどうかを確認するといいでしょう。

初期投資は必要も参入しやすい事業

不動産業界には様々な業種がありますが、そんな業種の中では、不動産賃貸業がもっとも参入しやすい業種といえます。もちろん不動産を所有する必要がありますので、初期費用はそれなりに必要ですが、それでも参入しやすいといわれる理由を解説していきましょう。

初期投資は大きいが収入は安定する傾向

初期投資に関してはどのような物件を所有するかで事情が変わってきます。例えばサラリーマン大家などは、できるだけ価格が安く、顧客がつきそうな物件を探し出すことが重要になります。

不動産賃貸業を行っている企業においてもこの考え方は同様です。とはいえ価格の安い物件といっても、顧客がつく可能性が高い物件の中で価格の安いものを購入する必要があり、こういった物件を見極める知識と、その物件を購入するだけの初期費用が必要となります。

安いとはいえ購入するのは不動産ですから、決して安いものではありません。そのため初期投資はどうしても必要になります。

初期の投資としては多くの費用が必要となりますが、いったん事業が軌道に乗ると収入は安定する傾向にあるのが不動産賃貸業です。賃料収入は、初期投資と比較すると決して大きな金額とはなりませんが、その代わり毎月安定して入ってくる収入でもあります。この収入の安定感が、参入しやすい魚介である理由の一つでもあります。

開業に免許や資格は不要

不動産賃貸業が参入しやすいという理由の一つに、開業にあたって必要な免許や資格がないということが挙げられます。似たような業務を行う不動産賃貸仲介業は、従業員5名に対し1人の割合で、宅建士の有資格者が必要です。この点でも不動産賃貸業は参入をしやすい業界といわれています。

資格不要とは言え、事業として大きく展開していくには、不動産関連、契約関連で力を発揮する資格を持った従業員は必須です。不動産賃貸業への転職や就職を考えている方は、やはり何かしらの資格を持っていると有利といえるでしょう。

不動産賃貸業に伴う事業

不動産賃貸業は、持っている不動産を貸し出して家賃収入を得る事業ですが、購入した物件を単に貸し出すだけではありません。より高収益を目指すために、不動産賃貸業が賃貸業に伴い行っている事業を紹介しておきましょう。

リノベーション業務

近年増えているのがリノベーションです。かつて物件をよみがえらせる手法としては、リフォームが中心でした。リフォームとリノベーションの違いは工事の規模です。リフォームは現状の間取りのまま、内装を新しくする工事、リノベーションは間取りから変更してしまう工事となります。

リノベーションの利点は、その物件の現状に合わせた間取りを実現できることでしょう。建設当初はファミリー向けの3Kの間取りのマンションでも、現代では夫婦2人で暮らすケースが増えているとなれば、間取りを2LDKや2DKに変更し、新たな客層向けに作り替えることで物件の価値を高めることができます。

徐々に生活様式が変わる現代において、リノベーションは不動産賃貸業にとって必須の事業といえるかもしれません。

不動産管理業務

不動産賃貸業は、不動産を購入し貸し出すわけですが、マンションやオフィスビルを1棟丸ごと購入したり、自社で建築を行うこともあります。こうした1棟持ちの物件がある場合、貸出後の運営管理を行うケースもあります。

もちろんマンションなどの管理を専門に行う不動産管理業者に業務を依頼することもありますが、外部に依頼するより経費が掛からない自社管理を選択する会社も増えているようです。

不動産賃貸業で重宝される資格

不動産賃貸業といっても、単純に不動産を貸し出すだけではなく、所有している不動産の価値を最大限高めて運用することが求められます。そのような現場で重宝される資格についていくつかご紹介しましょう。

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、数ある不動産系の資格の中でも、唯一不動産に関してその資産価値を正確に鑑定することができる資格です。不動産賃貸業は、まず不動産を購入するところから業務が始まりますが、購入する不動産の価値が、販売価格に見合ったものかどうかを鑑定できるのはこの資格のみとなります。

また、購入した不動産を貸し出す際の賃料に関しても、正確な賃料を算出することができますので、貸し出しの際にも力を発揮できる資格といえるでしょう。
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インテリアコーディネーター

不動産業とは直接関係なさそうなインテリアコーディネーターですが、不動産賃貸業では大きな仕事があります。それが上でも紹介したリノベーション事業です。間取りを現代向けに変えても、内装が古いままでは物件の価値は高まりません。

そもそもリノベーションで間取りを変えるのは、その建物が古くなったことだけが理由ではなく、周辺環境による理由もあります。かつてはベッドタウンだった街でも、近年大きな企業の支社が近くにできた、近くを通る路線がほかの路線と乗り入れ運転をはじめ、都心部へのアクセスが抜群によくなったなど、住環境の変化に合わせてリノベーションは行われます。

リノベーションが済んだら次は内装や設備の設置です。決められた予算の中で、クロスや水回りの設備などを選び、より客層を絞り込んでアピールすることで、物件の価値は高まります。その役目を担うのがインテリアコーディネーターということになります。
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管理業務主任者

こちらの資格は自社でマンションやオフィスビルの運営管理を行う場合に必須となる資格になります。建物自体の価値を高めるためにも、建物の修繕計画や管理は非常に重大なポイントとなります。

もちろん管理や修繕の方針は、会社自体の希望を中心に進めることとなりますが、実際にその計画を立案し、住民に周知徹底するには管理業務主任者の資格が必須となります。

また、不動産投資の収入のひとつとしてキャピタルゲインという考え方があります。これは購入した不動産をより高額で売却することで売却益を得ることを指します。購入した時よりも築年数が増える物件を、できるだけ高額で売却するには、日常の管理や的確な修繕が重要なポイントとなります。

キャピタルゲインで収益を上げるのは、不動産投資家だけではなく、不動産賃貸業すべてに共通の手法となります。そのためにも的確な管理運営を行える資格は、現場で重宝される資格といえるでしょう。
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まとめ

不動産を購入し、それを貸し出すことで賃料収入を得る不動産賃貸業は、初期資金さえ用意できれば比較的参入しやすい業界になります。また賃料収入は、いきなり大幅な黒字となることは少ないものの、非常に安定した収入といえます。無理な運営をしない限り、将来的にも安定感のある業種と考えられます。

近年では単純に購入して貸し出すだけではなく、自社で建設を行う、購入した物件をリノベーションする、そして自社で運営管理を行うなど、多様な業務を展開する企業も増えており、その業務に必要な人材を募集している企業も少なくありません。

不動産賃貸業への就職や転職を考えている方は、その企業が主に行っている業務を確認し、自分が持っている、もしくはこれから取得しようとしている資格が活用できるかを判断するといいでしょう。

近年地方部では、以前と変わらずマイホームを望む方が多い状況ですが、特に都心部おいては、マイホームは購入せず、賃貸住宅にすむ選択をする家庭も増えています。また、IT系の企業を中心に新規に企業をする若者も増えていますので、不動産賃貸業は今後も多くの活躍の場がある事業といえます。将来性と安定感のある業種を探している方にはおすすめの業種となります。