BtoB (対法人)とBtoC(対個人)

「商品を売る」ことを目的としている業種では、「BtoB営業(対法人営業)」と「BtoC営業(対個人営業)」が存在するケースがほとんどです。もちろん不動産業界も同じ。

法人相手に営業を行うか、個人を相手に営業を行うかで、社内の部署が違うことも多いでしょう。そんな2つの営業部門に大きな違いはあるのでしょうか。BtoBとBtoCの仕事の違いや、その仕事に向いている人など、比較していきたいと思います。

BtoB営業とは?

BtoBとは、「Business to Business」の略。Businessは一般的に「仕事」と訳されますが、この場合は「法人」という意味となり、つまり「対法人営業」を意味しています。そんなBtoBの業務の特徴を解説していきましょう。

新規開拓よりも継続営業が多い

BtoB営業最大の特徴は、新規開拓よりも、既存の顧客と継続的に案件を受けることが中心ということでしょう。一般的な営業職のイメージは、外回りや企業訪問などで、新規開拓をするケースが多いのですが、特に不動産業界のBtoB営業は継続案件が中心となります。

取り扱い金額が大きい

不動産業界のBtoB営業は継続案件が多いという理由に、一件の取引の取扱額が大きいという点があります。不動産業界のBtoB営業で商品として考えられるのは、会社の事業所、工場、倉庫、物流拠点などが中心となり、それなりの大きさの土地や建物ということになります。

場合によっては億を超えるような案件もあり、その契約には長い時間が必要となり、それだけ取引先との付き合いも濃厚となります。大きな金額の案件を取り扱う以上、ある程度の信頼関係が必要となり、その信頼関係を築くのがBtoB営業のポイントです。

こうして信頼関係を築いた企業との取引は、継続的となるケースが多くなります。反対に継続して仕事を取れなければ、不動産業界のBtoB営業としては失敗といえるでしょう。

休日出勤や残業は少な目

BtoB営業は、取引相手が企業のため、先方に合わせたスケジュールになる傾向があります。そうなると必然的に休日出勤や残業は少なくなる傾向です。もちろん取引先企業が平日休みの場合、休日出勤も余儀なくされますし、取引先に提出する資料や書類の作成で残業することは大いに考えられます。

とはいえ、BtoC営業と比較するとその割合は低いといえるでしょう。

BtoC営業とは?

BtoCとは「Business to Customer」の略。「Customer」とは「顧客」のことですが、この場合は「個人」と訳すのが正しいでしょう。つまりBtoC営業とは「対個人営業」のことで、不動産業においては、個人の顧客に対し土地や建物を販売する、つまりマイホームを売る営業と考えて大きく間違ってはいません。

飛び込み営業など新規開拓が中心

BtoC営業は何といっても新規開拓が重要になります。マイホームを購入するというのは、多くの人にとって人生最大の買い物であり、人生において何度も経験することではありません。

それだけにBtoC営業において、同じ顧客からのリピート率は低く、そのためにも新規開拓が必要になるわけです。

商品引き渡し時の充実感が大きい

BtoC営業の大きなやりがいとしては、ひとつの契約を成立させたときの達成感です。上でも触れた通り、人生最大の買い物をサポートできた充実感は大きく、その充実感が契約私立のたびに味わえる仕事だといえます。

もちろんB toB営業でも顧客から感謝の言葉を受けることはあるでしょうが、BtoC営業の方が、より深い感謝の言葉をもらえるといっても間違いないでしょう。

休日出勤や残業多め

BtoC営業の厳しい部分としては、まず休日出勤が多いということです。BtoB営業の項目でも触れましたが、営業職は多くの場合、顧客のスケジュールに合わせて業務を行います。

そうなるとBtoC営業の場合顧客が個人ですから、その顧客が仕事をしていない日、つまり休日に仕事をすることが圧倒的に多くなります。不動産販売で現地を見に行く場合、契約を交わす場合も、多くは休日となるため、休日はほぼ出勤ということも珍しくありません。

また、個人の顧客は法人の顧客と違い、信頼関係の構築が進んでいないことも多く、そのためクレームなども多くなりがちです。こういったクレームに対応するために、どうしても残業が多くなりがちです。

BtoB営業に適した人材は?

同じ営業職でもかなり仕事内容が違うBtoB営業とBtoC営業。業務内容が違うということは求められる能力も違うということになります。まずはBtoB営業に求められる能力を確認しておきましょう。

コミュニケーション能力は必須

コミュニケーション能力というのは、営業職であれば必須ともいえるスキルになりますが、こと不動産業界のBtoB営業には重要なスキルになります。継続案件が多く、クライアントと深い信頼関係を築く必要がありますので、そのためにもコミュニケーション能力が重要になります。

事務処理能力も重要

BtoB営業の場合、単純にクライアントの言う通りに物件や土地を探すだけが仕事ではありません。より深い信頼関係を結ぶには、「この人に頼めばより良い提案をしてくれる」と思ってもらうことが重要です。

そのためには、クライアントに逆に提案することも多くなります。クライアントがある土地に倉庫を建てたいといわれても、物流経路の観点から考えても、別の場所の方がいいと提案したり、あの街に路面店を出店したいといわれても、その街では良い収益を望めないので別の街にした方が良いといった提案です。

こうした提案をする場合、クライアントに納得してもらうだけの情報を集め、それをわかりやすい資料にまとめる必要があります。そのための事務処理能力です。

また契約成立後の事後処理も多く、こうした場面でも事務処理能力が問われます。

強いリーダーシップを求められるケースも

BtoB営業は、場合によっては億を超えるような単位の仕事を受けることがあります。こういった大きな仕事になると、営業職だけで解決することは難しくなり、社内の他部署とともに作業を進行することになります。

他部署とチームを組んで作業を行う場合、やはり中心となるのは直接クライアントと話し合う営業職ということになります。こういった場合にチームをまとめるリーダーシップは重要なスキルです。

BtoC営業に適した人材は?

一方個人顧客を相手にマイホームや別荘などを販売することが多いBtoC営業の場合、新規開拓が重要な仕事となりますので、それに即したスキルを求められます。

強いハートと行動力

不動産業のBtoC営業の基本は、電話アポイントや飛び込み営業になります。しかし電話にしても飛び込みにしても、いきなり「マイホーム買いませんか?」で「買います」と答える顧客は多くありません。とにかく数多く営業をかける必要がありますので、それだけの行動力というものは重要になります。

また、新規開拓の営業は取り付く島もなく断られることが多く、場合によっては罵声を浴びせられることもあります。こうした事態でいちいち傷ついたり、落ち込んだりしていては仕事になりません。

逆境でもくじけない強いハートも求められる要素を言えるでしょう。

適切な判断力と臨機応変さ

BtoC営業におけるポイントとしては、適切な判断力というものが挙げられます。上でも触れた通り、BtoCの場合、顧客との信頼関係を深いものとするのは難しく、些細なことでも相談の連絡や、クレームの連絡が届きます。

こうした場合適切に対応する必要がありますが、そのためにはその場で迅速に対応することが重要です。つまり、顧客から何かしらの連絡が届いた場合、即座に適切な対応をする判断能力が求められます。

また案件ごとに出てくる問題の中には、前例のない問題も少なくありません。こうした場合、いちいち上司や上層部にお伺いを立てている時間がないこともありますので、臨機応変に対応する柔軟性も重要な能力となります。

地道な作業を淡々とこなせるか?

BtoC営業には新規開拓が多いという特徴があります。新規開拓案件が多いということは、それだけ同じような業務を繰り返す必要があるということ。もちろんマイホームを販売するという点において、内容が全く同じ案件はありません。とはいえ業務の流れとしてはすべて同じような流れで続きますので、こういった地道な作業を繰り返し行うことが苦にならない人材が求められます。

それぞれの将来像は?

BtoB営業とBtoC営業。似て非なるこの2つの営業職は、おのずと将来進む道にも違いが出てきます。そんな違いを解説しますので、不動産営業への就職、転職を考えている方は参考にしてください。

会社内での出世はどちらが有利?

まずは会社内での出世という点で考えてみましょう。単純に有利なのは、BtoB営業で実績を重ねた方でしょう。何しろ一件あたりの単価が高く、それだけ会社に貢献したと考えられるからです。

その点BtoC営業は、BtoB営業と比較すると単価が低く、会社絵に利益という点ではBtoB営業には追い付けない可能性もあります。とはいえBtoC営業の評価ポイントは売り上げだけではなく成約件数も含まれます。

そもそも営業職は、数字で会社への貢献が見えやすいため、出世には有利な部署といえます。出世に関してはどちらも有利で、大きな差はないと考えていいでしょう。

起業して独立の道は?

将来的に会社を早期退職し、自身で独立起業することを考えると、どちらが向いているでしょうか。これははっきり差が出るポイントで、BtoB営業の方が有利と言われています。

BtoB営業はその業務内容により、不動産関係の専門的知識を問われる場面も多くなります。そのため自然と専門知識が豊富になり、不動産関係のコンサルタントに転身する方も少なくありません。

さらに考えると、BtoB営業を行う中で多くの人脈を築くことも可能であり、この点も独立起業には有利な点といえるでしょう。

一方BtoC営業は、その経験と知識をもってしても独立は難しいと考えられます。もちろん不動産関係や、金融関係の専門知識は深まりますので、その点はBtoB営業にも負けないはずです。しかし人脈や、マイホーム以外のものを販売する、自ら提案するという経験は乏しく、この点も独立には向いていません。

ただし、営業職としての転職は十分に考えられます。BtoB営業と比較すると単価が安いと書いていますが、ほかの商品と比較すれば、マイホームは相当高額な商品です。この高額商品を売り続けた人にとって、売れない商品はないといっても過言ではないでしょう。

同じ営業職への転職という点ではBtoC営業で培った経験は大きな武器になります。

スペシャリストといわれるのは?

BtoB営業の仕事は、不動産売買に限らず、提案営業や事務処理、多方面との折衝など多岐にわたります。その分営業という業務自体を深めることは難しく、営業のスペシャリストとなるのは難しいでしょう。

その点BtoC営業は、とにかく契約件数が多く、しかもそのほとんどが新規案件です。それだけに営業のスペシャリストとして活躍する可能性は高く、「手に職をつける」という点では非常に有利と言えるでしょう。

まとめ

不動産業界においては、BtoB営業とBtoC営業は求められる能力も業務内容も大きく異なります。そのため求められる人材や能力も違いますので、不動産営業への就職、転職を考えている方は、自身に合った方を選ぶようにしましょう。

特に将来的に独立を考えている方は、BtoB営業で大きな実績を作り、業務の中で貴重な人脈を築くのがおすすめ。きっと将来の大きな力になります。

営業職としてその企業で長く活躍することを望む方は、やはりBtoC営業がおすすめです。数多くの契約を取ることで、不動産業界の専門知識を深めることも可能です。