開発

土地を購入し、建物を建て、それを売買、もしくは賃貸に出すのが不動産の仕事と思っている方も多いかと思います。しかし不動産業界にもいわゆる「開発」の仕事が存在し、その開発を生業とする企業を「デベロッパー」と呼びます。

ここではデベロッパーの主な仕事やゼネコンとの違い。そしてデベロッパーのやりがいなどについてまとめていきます。

デベロッパーは企画開発が中心

不動産業界を指し示す言葉として、「デベロッパー」や「ゼネコン」という言葉を耳にしたことがある方も多いかと思います。どちらも建設業者と思われがちですが、この両者には明確な違いがあります。

一言で言ってしまえば、デベロッパーは企画開発、ゼネコンは建設建築を主な業務としており、両者が一緒に仕事をすることはあっても、仕事が競合することはありません。まずはこの両者の違いを説明しておきましょう。

デベロッパーとゼネコンの違い

デベロッパーとは「Developer」のことを指し、直訳すれば「土地開発者」ということになります。一方ゼネコンは「General Contractor」の略で、直訳すれば「総合工事業請負者」ということになります。

ゼネコンに関しては文字通り、工事を行う会社ということですので、非常にわかりやすいでしょう。しかしデベロッパーに関しては今イチ業務内容がつかみにくい部分があります。

デベロッパーの仕事は「開発」です。例えばある土地があったとします。その土地に何をどのように建てるのか?こういった企画を行うのがデベロッパーということになります。また先に企画を立案し、それにそって土地を買収するといった場合もあります。

デベロッパーの仕事は開発ですが、開発といっても様々なケースが考えられます。例えば近くに観光資源があれば、リゾート開発ということになりますし、都心部の一等地であれば、周辺に求められる商業施設をリサーチし、商業施設開発を行うこともあります。

さらに住宅街の一角を、町全体をテーマに沿って作り上げる街づくりなど、周辺の状況に合わせた開発を企画立案するのがデベロッパーということになります。

デベロッパーの仕事の流れ

デベロッパーの仕事が企画開発であることが分かったところで、続いては主なデベロッパーの仕事の流れをみていきましょう。ここで紹介するのはあくまでも一例であり、デベロッパーの仕事には多くのケースがありますのでご注意ください。

開発に適している土地を探す

デベロッパーの仕事は、開発に適した土地を見つけることから始まります。近年観光客が減りつつある観光地周辺や、建物の老朽化が著しい町並みなど、開発に適した土地がなければ仕事が始まりません。

また場合によっては自治体や地域企業から開発を依頼されるケースもあります。こういった場合は、指定された地域全体、もしくはその中から最適な一部を開発の対象とすることが多くなります。

その土地に合わせた施設や環境づくりを提案

開発する地域、土地が決まったら、続いてどの表に開発するかの企画提案の作業に入ります。開発する土地の気候風土や周辺の観光資源、都心部へのアクセスや立地条件などから、宿泊施設などのリゾート開発がいいのか、多くの人を集める商業施設がいいのか、都心部への通勤ができるのであればマンション開発、現在の町並みを残したいのであれば、残したうえでの街づくりなど最適な開発プランを企画します。

企画した開発案を関係各所に提案します。関係各所とは、自治体やゼネコン、そして地域住民や周辺企業など。その開発にかかわるすべての関係者に提案を行うことになります。

提案は各所の意見も採り入れ、何度も修正を重ねて最終決定に至ります。

地権者から土地の買収を行う

開発企画の提案がほぼ決まったころから、必要な場合は地権者に土地の譲渡を申し入れます。地権者には企画意図を説明し、必要な価格を提示して買収を進めます。

この地権者からの買収がなかなか進行しない案件もあり、デベロッパーとしては一番神経を使う作業といえるかもしれません。

ゼネコンとともに街づくりの計画を立てる

土地の準備が完了し、関係各所との折衝も完了したらいよいよ開発計画は最終段階に入ります。修正を重ねた開発企画案をもとに、実際の建設を依頼するゼネコンなどとの協議が始まるのです。

実際にどのようなデザインの建物を建てるのか?どこくらいの数建てるのか?細かい部分になると、外観のイメージはもちろん、内装まで詰めていく作業になります。

実際の建設が始まれば、建設の進行管理は基本的にゼネコンの手に渡ります。とはいえデベロッパーも計画通りに進んでいるか確認しながらの建設作業となります。

完成後は管理運営を行う場合も

開発計画通りに建物の建設が終わると、基本的にデベロッパーの仕事も完了です。ただし、建設した建物が、商業施設であったりマンションであった場合、完成後の管理運営もデベロッパーが行う場合が多くなります。

商業施設にテナントを集め、テナント料収入を得たり、建設したマンションに入居者を募集し、売買仲介、賃貸仲介などを行うこともあります。もちろんその建物の権利をデベロッパーが持つ場合は、単純に売買収入、賃貸収入が入ります。

デベロッパーの仕事を紹介

ここまでの記事内でもいくつか触れていますが、実際にデベロッパーが扱う開発計画の一例をご紹介しましょう。もちろんここで触れるのは代表的なものであり、ほかにも様々な計画を立てるのがデベロッパーの仕事ということになります。

街の再開発事業

街の再開発事業は、デベロッパーの扱う案件の中でももっとも規模の大きな案件の一つです。古くなり住民が少なくなった街を、現在考えられる最新の技術を駆使し、多くの人が住みたくなるような街に様変わりさせます。

街の再開発事業は、多くの企業が参加する事業でもあります。もちろん建物を建設するデベロッパー、その街の自治体、商店街を形成するのであれば各小売業者、さらにインフラ関係の電力会社、水道事業などとも連携が必要です。

2020年に発表された、自動車会社のトヨタと、電化製品メーカーのパナソニックが合弁会社を設立して、静岡県裾野市(東富士)に建設することが発表された「Woven City」も大規模な街づくり事業のひとつです。

Woven Cityのように最新のテクノロジーを利用し、実験的な都市を作る試みは、近年各地で注目を集めています。

商業施設開発

商業施設の開発にもいくつかのパターンが考えられます。都心部の駅周辺の土地に大型商業施設を建てるのも商業施設開発ですし、郊外の広い土地に複合商業施設を計画するのも商業施設開発です。規模の大きなものとしてはアウトレットモールも商業施設開発に含まれます。

一例を挙げると、東京都町田市に展開している「南町田グランベリーパーク」などが大型の商業施設開発といえます。このグランベリーパークに関しては、さらに大きく「南町田拠点創出まちづくりプロジェクト」という街の再開発プロジェクトがあり、その中の中心的なプロジェクトがグランベリーパークということになります。

このプロジェクトは、町田市と東急グループが中心となって進められた開発プロジェクトです。デベロッパーが地域自治体と共同で開発した一例になります。

マンション開発

マンション開発は単純にマンションを建設するということだけではありません。そのマンションを建てることを、周辺住民などに説明しなければいけないケースが多く、周辺住民との話し合いは重要な仕事になります。マンションの建設は、土地があれば建てられるというわけではなく、周辺への日照権の問題や、住民が一気に増加するために、学校や病院、緊急時の避難所など、周辺に気遣う点が多い事業でもあります。

またマンション開発の中には、大きなマンションをまとめて建設し、そこにひとつの街を作るような開発も含まれます。こういった街づくりと紐づいた開発は、特に都心部へ通勤圏内にあるベッドタウンなどに目立ちます。

リゾート開発

リゾート開発は周辺との調和が重要な事業となります。周辺の観光資源や、町並みを研究し、またその土地に残る伝統や歴史とも関連性を持たせる必要があります。リゾート開発の中心はやはり宿泊施設の建設ということになりますが、同時に観光関連施設の建設なども必要となり、開発計画を立案する前の下準備が重要な仕事といえます。

リゾート開発の中には、別荘地の建設というものも含まれるでしょう。温泉地や観光地で、都市部から交通の利便性が高い地域には、こうした別荘地が多数存在します。

東京の周辺であれば長野県の軽井沢や、静岡県の伊豆半島などが別荘地としても有名です。別荘地となる地域に大きな土地を購入し、その中に複数の別荘を建設し販売する。これもリゾート開発の一環となります。

デベロッパーの仕事のやりがいは?

デベロッパーの仕事は、規模の大きなものから建物単体まで幅広いものがあります。そんな仕事のやりがいとはどのようなものになるでしょう。

大きな達成感を感じることができる

デベロッパーの仕事のだいご味は、最終的に完成した時の達成感でしょう。まっさらな土地に自分の思い描いた街を想像し、その計画を実現するために長い時間をかける必要があります。さらに多くの人と交渉、折衝を繰り返し、何度も壁にぶつかりながら進めるのが開発の仕事になります。

規模の大きな事業になると、かなり長い年月を要する事業もあり、もちろん必要な費用も巨額です。そんな開発計画が実現した時の達成感は計り知れないものがあります。

もちろん自分ひとりの思い通りに事業が進むことはありませんが、関係各所の希望やクレームを処理し、ひとつの街を作り上げるという規模の事業は、ほかの業種ではなかなか体験できない仕事といえるでしょう。

多くの人と交流しチームワークを感じることができる

デベロッパー開発計画を立てることが主な事業です。当然自社だけですべての事業が完結することはなく、多くの企業や業種、さらに国や自治体などとともに進めていく仕事となります。

仕事も環境も年齢も性別もバラバラの人間でチームを作り、自社で練り上げた計画を実現するわけで、仕事を進めていく中でチームワークというものを強く実感できる仕事といえるでしょう。

もちろん他業種にもチームワークが必要な仕事はありますが、仕事の規模や関係者の幅広さは他に類を見ないものといえるでしょう。

まとめ

これまで日本は人口の都市部への一極集中が問題となり、地方の過疎化と都心部の地価上昇が大きな問題でした。今後日本は少子高齢化が加速していきます。その中で人々の生活も新しい生活スタイルが必要となるでしょう。

そんな新しい生活スタイルに適した街づくりを行う、少子高齢化で客層が変化しつつある商業施設を開発する、家族構成が変化しつつある中で、多くの人から興味を持たれるマンションを建てるなど、非常にやりがいの大きな仕事が開発という仕事といえます。

新しいことを考えることが好き、多くの人とつながって仕事をしたいという方は、デベロッパー向きの人材かもしれません。