経理財務

経理財務という仕事は、どの企業でもその会社の金庫を預かる部署ですから、基本的に重要な部署です。しかし不動産業界においての経理業務は、さらに複雑なものとなっています。その理由について、できるだけわかりやすく解説していきましょう。

経理財務のおもな業務

ここでは経理財務としてまとめていますが、会社によってはそれぞれ部署を分けている場合もあります。そのくらい経理と財務では仕事内容が違うということです。どちらもお金に関する仕事をしていることに間違いはありませんが、経理の仕事は「過去に使ったお金の管理」であり、財務の仕事は「これから使うお金の管理」になります。

これら仕事内容の違いをもう少し詳しく解説しておきましょう。

経理は日々のお金の流れを把握

経理の仕事は「過去に使ったお金の管理」です。仕入れを行ったときや、売り上げが立った時に、その取引でのお金の流れを把握し、税制上問題ないように区分けをしていきます。こうして日々のお金の流れをおすべて把握し、その流れを帳簿に記載していくのが経理の仕事です。

また社員が立て替えている経費の清算を行ったり、賃借対照表や損益計算書などの県産書類の作成も行います。いずれの業務も過去に使われたお金の処理となるのが特徴です。

財務は会社の資金を準備する

財務の仕事は「これから使うお金の管理」です。主な業務は2つに分けられます。まずは経理が作成した決算書を元に、会社の運営資金を管理することです。現状どのくらいの資金があり、進行中の案件の収支がどの程度だから、数か月後、数年後の資金がどの程度あるかなどを算出します。

こういった近い将来に関する運営資金の予測は、経営陣の経営方針の決定に大きな影響を与えますし、この予測がなければ企業は先の経営方針を建てることすらできなくなってしまします。

もうひとつの仕事が、資金の融通です。近い将来の企業の資金を予測し、必要であれば金融機関に対し融資をお願いすることになりますが、これが財務の仕事となります。運転資金の調達に関しては、金融機関からの融資のほかに、社債や株式を発行する方法もあり、これも財務の仕事となります。

今ある資金から先の収益を予測し、会社の運転資金が枯渇しないように事前に対策を打つことが財務の仕事の基本となります。

不動産経理の難しい部分

不動産の経理財務において、非常に神経質にならざるを得ないのが、不動産取引における経理部の作業です。

不動産業界にはいくつかの営業形態があります。大きく分けると3つ。不動産を売買することで収益を上げる「不動産売買業」、不動産を貸し出すことで収益を上げる「不動産賃貸業」、不動産の売買や賃貸を仲介することで手数料を徴収する「不動産仲介業」です。

これらの各業種において、経理による取引の処理がすべて変わります。同じ不動産業でも、業態が違うとまた違った処理方法が存在しますので、上記の3つの事業すべてを行うような企業の経理は、非常に慎重に財務処理を行う必要があります。

不動産売買業の場合

一般的に企業が建物を購入した場合、減価償却をされますが、不動産売買業において購入された建物は、資産ではなく「商品」という扱いになりますので、減価償却は行いません。ただし、自社が使用するための建物、倉庫や営業所などの場合は資産になりますので、こちらは減価償却をすることとなります。

また土地や建物を購入した場合、この不動産は商品ですので在庫として計上します。しかし購入代金には仲介手数料なども含まれており、こういった手数料に関しては資産計上をする必要があります。

もうひとつ処理に気を付けなければいけないのが消費税です。建物の取引は消費税が課税されますが、土地の取引は非課税取引になりますので、こちらは消費税がかかりません。

土地と建物をまとめて購入する場合などは、どこまでが土地の代金で、どこからが建物の代金なのかがはっきりしないと処理が面倒になります。さらにそこに仲介手数料も絡んでくると、計算はかなり大変です。

こうした細かい違いをしっかりと認識し、ミスのない決算書を作成しないと、金融機関などからの融資審査で問題視されることがあります。

土地や建物の取引は、1件でも非常に高額な取引になります。取引金額をきっちり見極めて、ミスのない決算書を作成しなければいけません。

不動産賃貸業の場合

不動産賃貸業は、自社が保有する不動産を貸し出し、その賃料で収益を上げる事業です。賃貸業においても、不動産を購入するという点では売買業と同じですが、違いがあるのが減価償却の処理です。

売買業では購入した建物は商品として扱い減価償却をしませんが、賃貸業になると建物は固定資産となり、減価償却の対象となります。さらに減価償却の計算も、建物の工法や設備、資材などにより耐用年数が変わるので、その点も加味して減価償却を行う必要があります。

賃貸業の経理の仕事で、もっとも手間がかかるのがこの固定資産の管理かもしれません。

また入居者から徴収する賃料に関しても面倒な一面があります。まず入居者が居住目的で借りている場合、賃料は非課税対象となり消費税はかかりません。しかし法人が事業所として借りる場合は課税対象となるため、消費税が発生します。

サラリーマンが不動産を購入し、人に貸し出すことで家賃収入を得る不動産投資においても、オーナーは不動産賃貸業を行う事業者として扱われますので、この点に関しては覚えておくといいでしょう。

不動産仲介業の場合

最後に不動産仲介業です。不動産仲介業は、顧客が持つ不動産を、別の顧客に売却する、貸し出すことを仲介し、仲介手数料を受け取る仕事です。この場合、仲介業自体は不動産を保有していませんので、土地建物に関する資産計上や減価償却に関しては、比較的少ないということになります。

また仲介業に関して経理上処理を行うのは手数料に関してのみです。手数料は土地取引でも、建物取引でも、賃貸取引でも一律課税対象となりますので、消費全の課税非課税で面倒な計算をすることもなくなります。

こう書くと、不動産3業態の中で、不動産仲介業の経理の仕事は非常に楽に見えるかもしれませんが、別の部分で大きな負担を請け負うポイントがあります。それが従業員の給与に関する処理です。

不動産仲介業の経理が大変な部分は人件費の扱いです。不動産仲介業は、仲介をするために、ほかの2業態以上の人員を確保し働いてもらっています。また多くの場合営業社員は歩合制の契約をしており、その月の成績によって給与の増減がある職種です。

こうした人件費を正確に計算するため、営業成績はもちろん、勤怠実績などを管理する必要があります。こうした情報を毎月集め、その情報を元に、多くの社員の給与額を決定します。個人個人で毎月給与が上下する、しかもその人員の数が非常に多いとなると、経理の仕事の大半はこの人件費の管理になるでしょう。

経理財務に求められるスキル

ではこの経理財務という、会社のお金を直接扱う大事な仕事には当然ながら求められるスキルがあります。また性格的にも向いている人、いない人がいますので、どういった人材が求められ、どういったスキルが有効かをまとめていきましょう。

簿記の資格

不動産取引においては、減価償却や消費税など、かなり細かい対応が求められます。そう考えると少なくとも日商簿記3級程度の資格は欲しいところでしょう。日商簿記には初級もありますが、初級程度の知識では、経理処理に非常に苦労するかと思います。

不動産業界の経理財務などに転職や就職を考えると、事前に取得しておくことをおすすめします。

不動産取引の経験

日商簿記3級はぜひとも持っておきたい資格ですが、こちらはあると重宝されるというレベルで考えていいでしょう。不動産取引の始まりから終わりまでを実際に経験している、しかも経験が豊富である人は、取引で起こりうる様々なケースに対応ができるため、経理の業務にしてもスムーズに進むでしょう。

財務の業務は先の見通しを予測する能力が求められます。この場合も不動産取引の流れや、起こりうる問題点を知っていることでより正確な予測が可能となるでしょう。

情報分析能力

財務の業務は、会社の経営方針に影響を与える重大な業務になります。先の予測を立てるには多くの情報を収集し。さらに会社の財務状況、金融業界の状況や、将来の金利なども加味する必要があります。

こうした多くの情報を、冷静に分析し解析していく能力が求められます。経理に関しては特に不動産関連の専門用語が重要になりますが。財務に関しては情報を分析する能力、そして先を見通す先見性が重要になります。

事務処理能力

経理や財務の仕事は基本的にデスクワークになります。毎日のように数字を読み続け、計算、確認を繰り返します。こういったデスクワークが苦になるようでは、まず長続きしないでしょう。

ここでは不動産業界に特化して、経理の仕事をまとめていますが、経理にはほかの業界同様の業務も当然あります。従業員の給与計算や、経費の清算などの業務も同時進行で行いますので、高い事務処理能力は必須スキルといえるでしょう。

慎重に行動する冷静さ

上でも少し触れましたが、経理や財務には慎重すぎるほど丁寧な仕事が求められます。特に不動産業界で、不動産取引が絡むと数億円単位の取引も珍しくありません。

扱うものが会社のお金ですから、間違ってもミスは許されません。もちろん多くの人が何重にもチェックするのが一般的ですが、やはり個人個人の慎重さや定年な仕事ぶりが重要です。

プレゼン能力と交渉力

こちらは特に財務に必要なスキルとしては、プレゼン能力と交渉力というものがあります。財務の仕事は、これからの会社の資金に関してのものが多く、財務で分析した結果は会社の経営陣の前で提案することになります。

ここで重要になるのがプレゼン能力です。従業員の立場で、会社の上司、しかも経営陣ですが、財務としての主張をしっかりと行うことができなければ仕事になりません。

また、このプレゼン能力は金融機関との交渉の場でも必要です。財務の仕事に資金調達があり、金融機関に融資についての申請を行うことも業務のうちです。この融資依頼の書類に関しては、経理の作成した決算書が中心となりますが、実際に金融機関の担当者と対面するのは財務の仕事です。ここでも的確にプレゼンを行い交渉できれば、融資の可能性は高くなります。

どうしても社内のデスクワークのイメージが強い部署ですが、こういった能力も必要な場面があります。

まとめ

経理の業務も財務の業務も、会社の財務状態に直結する非常に重要な仕事になります。経理財務として、ひとつの部署としている会社や、部署を分けている会社などもあり、非常に近い常務を行っています。

ただし、はっきりと違う点もあり、経理は過去のお金について、財務はこの先のお金について担当する部署と考えるといいでしょう。不動産取引などの決算書などを作成するのが経理、その決算書や、その他多くの情報やデータから、将来の財務状況を予測し、経営陣の経営方針決定の補佐を行うのが財務です。

いずれにせよデスクワークが中心の業務であり、慎重かつ丁寧な仕事が求められます。それと同時に交渉力やプレゼン能力も問われる部署になります。

経理や財務への就職や転職を目指す方は、まずは何より日商簿記3級程度の資格を取得し、準備しておきましょう。