総務

日本では多くの企業が総務課という部署を持っていますが、海外の企業ではあまり見かけないといわれています。実際日本国内にある外資系の企業でも、総務部がない企業も珍しくありません。そんな総務部の仕事は非常に多岐にわたるため、一言で言い表すのが難しい仕事になります。

無理やり簡単に言えば、顧客が自社の社員であるということです。そんな総務の仕事をみていきましょう。

総務が行う仕事の基本

総務部の仕事は基本的にあまり目立たない、地道な業務が中心となります。目立たない理由の一つに、社外に出る仕事があまりないということが挙げられます。総務の仕事は社内で、自社の社員のために行う仕事が多いのが特徴です。

サラリーマンの多くは、社外の人を顧客としますが、総務の仕事は、あえていうなら自社員が顧客ということになるでしょうか。自社員が仕事以外のことに気を取られるようなことがないように、総務がしっかりと社内でサポートしている。それが現状でしょう。

総務の仕事の基本は、社内における自社員のサポート。サポートを行うことで自社員の仕事効率を上げ、ひいては会社の売り上げに貢献する仕事になります。

社内で活躍する何でも屋?

総務の仕事の基本は、自社員のサポートです。会社には営業や企画など多くの部署がありますが、どの部署にも含まれない仕事全般が総務部の仕事というのが正しい考え方かもしれません。

言葉に語弊があるかもしれませんが、総務は会社の「何でも屋」というのがイメージとしては最適かもしれません。何でも屋ということは、とびぬけたスキルがなくてもできそうな仕事に聞こえるかもしれません。

確かに特筆するスキルがなくても総務の仕事はできるでしょう。その代わりどんな仕事でも平均点以上にできないと務まらないのが総務の仕事。特別なスキルがいらないとはいえ、簡単な仕事ではありません。

実際に総務部がしっかりしている会社は、仕事効率が高いため、少ない人員でも高い売り上げを出しているといいます。反対に総務部がしっかりしていないと、ほかの部署の社員に余計な仕事のしわ寄せが行き、仕事効率は落ちます。

目立つことはなくとも会社全体の売り上げに大きな影響を与えるのが総務の仕事となります。

総務が行う仕事とは?

では総務が行う仕事をいろいろと紹介していきましょう。ここで紹介するのは代表的な一例にすぎず、総部には毎日のように様々な依頼が入ってくると考えるといいかもしれません。

また、会社のよってはここに挙げた仕事が総務以外の仕事というケースもありますのでご注意ください。

備品の管理

まず重要な仕事が会社の備品の管理です。代表的なもととしては、コピー用紙や会社の封筒、名刺の発注管理も総務の仕事に組み込まれます。さらに個人が使うボールペンなどの筆記用具や、トイレットペーパー、蛍光灯、ハンドソープなど、会社の経費で購入するもの全般の管理と発注は総務が行っています。

この備品の管理、非常に単純な簡単な業務と思われがちですが、意外と大変な業務になります。会社の備品で購入するものは意外と多く、これらの在庫をきっちりと管理しなければいけません。

また購入費用は当然会社の経費ですから、無駄遣いをするわけにもいきませんし、領収書や納品書もしっかりと補完し、定期的に経理部とチェックをする必要もあります。

企業によっては毎月備品の棚卸のような作業を行い、きっちり帳簿を合わせているところもあるとか。こう考えると馬鹿にできない業務ということがわかるでしょう。

社内の保守点検

オフィス内の保守点検も総務の大事な仕事です。わかりやすい例を挙げると、社内の蛍光灯のチェック、交換などがここに含まれます。ほかにもオフィス内で使っている複合機のメンテナンスを業者に手配したり、消火器など消火設備の点検に立ち会ったりもします。

社内を快適に保つという点では、エレベーターのメンテナンス対応や、観葉植物のレンタルの手配なども担当しており、安全面でも衛生面でも、オフィスを支えているのが総務部なのです。

文書の管理

これは企業ごとに違いがあるかもしれませんが、社内の文書を管理・保管するのも総務の仕事としているケースがあります。社内の文書にはもちろん社外秘の文書もありますが、こうした秘匿性の高い文書も総務部が管理しているケースが多いようです。

ただ単に管理しているだけではなく、必要な時にすぐにとりだせるように整理整頓をしたり、文書のデータ化をしたりするのも総務部の仕事になります。

社内ルールの作成

意外な部分ですと、社内ルールの策定も総務部が行っているケースが多いようです。もちろん社則のような大きなルールは経営陣が決定しますが、その大枠の決定事項に沿って、細かい部分のルール作りを総務が担当しています。

必要であれば関係各部署を回り、各部署の意見も採り入れながら、社内全員に周知するルールを決めていきます。また、社内の状況が変わればこういったルールも逐一改正していきますので、常に社内ルールを検討しているような総務部もあるようです。

総務の仕事は企業によっても変わる

ここで紹介したのはもちろん一例です。他にも会社の顔である受付も総務の管轄ですし、株式会社が行う株主総会を取り仕切るのも総務部の仕事とされるのが一般的です。

同じ業種でも企業が違えば総務の仕事の範囲も変わります。総務の仕事をさらに分けて、保守点検やメンテナンスの手配などは庶務部としている企業もあります。いずれにせよ言えるのは、多彩な仕事を迅速にこなすことが求められる部署ということでしょう。

また、企業によっては人事と総務をまとめて「人事総務部」としている企業も少なくありません。これは人事部の仕事の繁忙期と閑散期が極端だからという事情があります。人事部は確定申告の時期や、入社説明会、面接の時期に一気に多忙になりますが、それ以外の時期は比較的業務が少ない部署になります。

そこで、人事と総務を一緒にすることで、人事部の忙しい時には総務部が人事の仕事を手伝い、人事の仕事が少ないときは、人事部が総務の仕事を手伝うことが可能です。結果、人事総務部とすることで人員がスリムになるという利点があります。

人事と総務をひとつの部署にしている会社の場合、総務の人員を募集していても、人事部にかかわるスキルを求められることもありますので、就職や転職を考えている方は注意が必要でしょう。

他の部署と連携することも多い

総務部・人事部・経理部をまとめて「バックオフィス」と呼んだりもします。この3つの部署は、あまり社外的な仕事は担当せず、社内に関する業務を中心に行っているからです。

そしてこの3つの部署は、互いに連携をしながら業務を行うことが多い部署でもあります。基本的に総務部は「物」を、経理部は「金」を、人事部は「人」を担当していますが、その部署の垣根を超えて協力することが多くなります。

例えば総務で必要な備品を調達する場合、当然ですがお金を出すのは経理です。また人事が年末調整の書類作成を行っている場合、申請に必要な配偶者控除や保険料支払いの書類を集めるのは総務の役目だったりします。

他にも社内規則の策定を総務ではなく人事が行う会社もありますし、社員の名刺の発注などを人事が行う会社もあります。仕事内容が近い部署が多くあり、そういった部署と連携して仕事をすることが多いのも総務の仕事の特徴といえるでしょう。

さらに総務は社員全員のサポートをする業務が多いため、営業や企画開発など、まったく別の業務をしているような部署とも連携をしたり、フォローをしたりというケースが多くあります。

総務に求められるスキルは?

業務が広範囲で、なんでもできないといけないように見える総務部ですが、それでも求められる人材にはそれなりの特徴や、求めるスキルがあります。総務部で働くことを想定した場合、どのような人材、どのようなスキルが求められるでしょう?実際の業務と照らし合わせながらみていきましょう。

PCに関するスキル

総務部においては、PC上で社内データを管理する仕事が非常に多くあります。備品の管理や、社内の定期メンテナンスのスケジュールなどは、すべてPCで管理することになります。

そのため最低限のPCスキルは欲しいところ。ワードやパワーポイントはもちろん、最重要と思われるのがエクセルのスキルです。様々な表計算に対応しているエクセルは、総務とは切っても切れない関係性があります。

さらに欲を言えば、フォトショップの技術もあると重宝されます。社内向けの掲示物なども、フォトショップで加工した画像があるだけでかなりきれいに見えるはずです。

事務処理能力

事務処理能力は総務や経理、人事といったバックオフィスの部署にはぜひとも欲しいスキルです。場合によっては机に向かってひたすらに確認作業を行うような地道な作業も多いため、効率よくこなせるスキルは大切でしょう。

事務仕事が苦にならない人がいいというよりは、苦になるような人はまず向いていないといっていいほど重要なスキルになります。

簿記の資格

簿記のスキルに関しては必須スキルとまではいえません。しかし前述のとおり経理部や人事部とともに行う作業が多いため、簿記の知識があると重宝するのは間違いありません。

今から慌てて取得する必要があるというほどではありませんが、将来的に総務の仕事に就職、転職を考えている方は、少しずつでも勉強しておくといいでしょう。

もちろん資格を取得するのがベストですが、総務の人員募集に簿記の資格を必須としているケースは多くありません。資格は取らないまでも、簿記の基本的な用語の意味を理解しているだけでも仕事のしやすさは格段に変わってくるはずです。

コミュニケーション能力

総務部はあまり社外に出ることがありません。基本的に社内で、しかも同じオフィスで仕事をすることが多く、周囲の人との人間関係をしっかりと構築していく必要があります。また、他部署と連携したり、多くの社員とかかわりを持つことがある部署だけに、コミュニケーション能力は欲しいところです。

とはいえコミュニケーション大好きという必要はなく、最低限の能力があれば仕事もスムーズに進むでしょう。

まとめ

社内の細かい作業を中心に、さまざまな業務を請け負う総務部。何かに特化しているスキルが必要というよりは、なんでもできる器用さが求められる部署とも言えます。

仕事内容が社業の売り上げに直結しないため、軽視されがちな部署という声もありますが、総務部がしっかりと機能していないと、会社はうまく回りません。まさに縁の下の力持ちという言葉がぴったりな部署が総務部といえるでしょう。