司法書士の年収はどのくらい?平均年収や年収アップのポイントは?
更新日:2023年7月13日
司法書士試験は難関資格試験としても知られており、資格試験に合格するには、かなりしっかりと勉強を続けなければいけません。
それだけ一生懸命勉強をして司法書士試験に合格すると、年収はどの程度になるのか、気になる方も多いかと思います。
司法書士の平均年収は600万円超え。一般的な給与所得者と比較するとかなり高額になります。
司法書士の年収に関して、いろいろなデータを紹介していきます。
また、司法書士の年収がなぜ高くなるのか?どのようにしたら高くなるのかなども解説。
これから司法書士を目指す方は、この記事を読み試験合格後どのように働いていくか、司法書士の資格を活かしていくかを考えておきましょう。
司法書士の平均年収は619万円
司法書士の平均年収は619万円。
ただし、全国のすべての司法書士資格を持つ方の年収を、細かく集計しているデータは存在しません。よって、この記事で登場する数値に関しては、各種データから推測できる数値ということになりますのでご了承ください。
619万円の内訳ですが、まず司法書士には2パターンの働き方があるという点に注目しましょう。ひとつは司法書士として独立開業する働き方、もうひとつは司法書士の資格は持っているものの、企業に勤務するという働き方です。
司法書士白書の2021年版に掲載されている「2020年全国司法書士調査」では、全国の司法書士にアンケートを行い、その結果がまとめられています。このデータを見ると、アンケートに答えた司法書士の内、約80%が独立開業司法書士、残り20%が企業勤務の司法書士となっています。
また、ここからの数値に関しては後に詳しく紹介しますが、独立司法書士の平均年収が654万円、企業内司法書士の平均年収が480万円というデータがありますので、上の比率を基に計算すると、司法書士の平均年収は619万円ということになります。
2020年の給与所得者全体の平均年収が432万円ですので、司法書士の年収はかなりハイレベルということができるでしょう。
勤務形態による年収の違い
上で少し触れましたが、司法書士の勤務形態は大きく分けて2種類。さらに細かく分けると3つの勤務形態が考えられます。
- 司法書士として独立開業する
- 企業に勤務し副業で司法書士の業務を行う
- 司法書士としての仕事はせずに企業に勤務する
司法書士の資格を活かし、司法書士の業務で収入を得るのであれば、独立開業もしくは副業で司法書士業を行うしかありません。しかし、副業で司法書士業をしているという方はそこまで多くはないかと思います。
実質的に働き方は、独立開業型か企業勤務型ということになります。
この2つの働き方の平均年収を紹介していきましょう。
経営者司法書士の平均年収は654万円
司法書士白書の2021年版に掲載されている「2020年度司法書士全国調査」から、自ら経営者となっている司法書士の年収分布を紹介しましょう。
年収 | 割合 |
0円 | 23.1% |
1~199万円 | 18.7% |
200~499万円 | 21.1% |
500~749万円 | 15.2% |
750~999万円 | 9.1% |
1,000~4,999万円 | 12.8% |
5,000~9,999万円 | 0.1% |
もっとも多いのは年収200~499万円というゾーン。平均で計算すると654万円となりますが、多くの方は200万円以上500万円未満ということになります。
平均年収は、それぞれのデータの中央値(200~499万円の場合、中央値は349万5000円)を算出し計算した参考データとなります。
もっとも人数が多いのは200万円以上500万円未満のゾーンであり、給与所得者と大きな差はないように見えるかもしれませんが、年収1,000万円以上の方が13.0%近くもいます。
独立開業をしてしっかりと営業している方は、1,000万円を超える高年収も夢ではないのが司法書士という資格の特徴といえるでしょう。
経営者以外の司法書士の平均年収は480万円
同じく司法書士全国調査から、経営者以外の方の年収分布を見てみましょう。
年収 | 割合 |
0円 | 1.7% |
1~100万円未満 | 2.6% |
100~200万円未満 | 6.9% |
200~300万円未満 | 11.7% |
300~400万円未満 | 21.6% |
400~500万円未満 | 18.8% |
500~600万円未満 | 15.5% |
600~700万円未満 | 8.4% |
700~800万円未満 | 3.6% |
800~900万円未満 | 3.0% |
900~1,000万円未満 | 3.1% |
1,000~2,000万円未満 | 2.5% |
2,000~4,000万円未満 | 0.3% |
4,000~7,000万円未満 | 0.2% |
こちらもデータの中央値で平均年収を推測すると、約480万円ということになります。分布から見てもっとも多いのは300~400万円のエリアです。
2020年の給与所得者全体の平均年収が433万円ですから、一般的な給与所得者よりも司法書士資格を持っている方の年収の方が若干高いということになります。
年代別司法書士の平均年収
続いて司法書士の年代別の平均収入をチェックしていきましょう。参考にするのは「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」のデータからです。
賃金構造基本統計調査では、司法書士単独の年収調査は行われていません。司法書士が含まれる分類が、「学術研究・専門・技術サービス業」ですので、この分類の年収データを参考にします。
賃金構造基本統計調査は、細かく分類して年収が発表されていますので、この記事では上記の分類かつ事業所規模100~999人の数字を参考にします。
年代 | 勤続年数 | 平均給与 |
---|---|---|
20代 | 3~4年 | 384万円 |
30代 | 5~9年 | 540万円 |
40代 | 15~19年 | 666万円 |
50代 | 25~29年 | 899万円 |
60代以上 | 30年以上 | 581万円 |
年代に合わせて勤続年数も想定して年収をチェックすると上記の通りになります。平均年収は30代の時点で給与所得者全体の平均給与を超え、50代では900万円近くになります。
どの年代を見ても、一般的な給与所得者よりも司法書士の年収は高い傾向にあり、司法書士の年収は高いというイメージは間違っていないことが分かります。
地域別の司法書士の平均年収
司法書士の年収は、当然ですが顧客が多いほど高くなります。顧客が数が年収に影響を及ぼすと考えた場合、当然ですが活動をする地域によっても年収に差が出ることが想定されます。
「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」のデータを参考に、地域別の年収をチェックしてみましょう。
参考にする都道府県は、内閣府が発表している「都道府県別GDP」を参考に、上位3つの都道府県と、下位3つの都道府県を比較します。
都道府県GDP順位 | 都道府県 | 平均年収 |
---|---|---|
1位 | 東京都 | 632万円 |
2位 | 大阪府 | 560万円 |
3位 | 愛知県 | 615万円 |
45位 | 島根県 | 624万円 |
46位 | 高知県 | 382万円 |
47位 | 鳥取県 | 473万円 |
都道府県GDPのTOP3は、東京都、大阪府、愛知県といった3つの大都市です。それぞれの地域における司法書士の平均年収は上記の通り。大阪府がそこまで高くない数値ですが、全体的には高い水準となっています。
都道府県GDPの下位3つは島根県、高知県、鳥取県。この3つの県における司法書士の平均年収を見ると、島根県の年収が高めになっていますが、高知県、鳥取県の平均年収は500万円に届かないという結果が出ています。
いずれにせよ、給与所得者全体の平均年収よりは高い都道府県が目立つものの、やはり都市部の司法書士の方が、年収が高い傾向が見て取れます。
司法書士の平均年収が高い理由
ここまで勤務形態別、年代別、地域別に司法書士の平均年収をチェックしてきました。総じて言えることは、給与所得者全体の平均年収と比較すると、司法書士の年収は高いという事実です。
そこで司法書士の年収がなぜ高くなるのか?その理由をいくつか紹介していきましょう。
独立開業が基本となる
司法書士として働く場合には、独立開業が基本となります。司法書士の資格を持ち、一般の企業に勤務している方は、司法書士としての業務を行うことができません。
そのため司法書士の資格を持つ方の働き方は大きく分けて2つ。将来の独立開業を視野に、一般企業で仕事をしながらその準備を進めている方と、しっかりと準備をして独立開業をしている方です。
司法書士という資格は、登記の相談や代行を行うなど独占業務を持っており、司法書士として独立開業をし、ある程度安定した顧客を獲得できていれば、必然的に収入は高くなります。
特に独立開業している司法書士の中で、順調に業務をこなしている方は、年収も高くなり、こういった方が目立つために司法書士の年収は高いということになります。
企業内司法書士は責任のある仕事を任されやすい
司法書士の資格を取得するには、司法書士試験に合格する必要があります。司法書士試験は難関試験であり、その試験に合格しているというのは、企業に勤務する上でも大きなアドバンテージとなります。
まず司法書士試験に合格しているということは、それだけ法律知識を持っているという証明になります。また、司法書士試験に合格するために、長期間地道に勉強を続け、結果を出したということにもなります。こういった経歴は企業内でも高い評価を受ける理由になります。
つまり司法書士の資格を持っているというだけで、司法書士としての業務を行えなくても、企業内では高い評価を受ける可能性が高くなります。
評価が高いということは、責任ある仕事を任されるケースも多くなり、その企業内でも年収が高くなると考えられます。
司法書士の資格を持っていると、司法書士の業務を行なっていなくとも高い年収が望めるということになります。
高収入の方と低収入の方の両極端
この記事で紹介しているのはいろいろな条件における司法書士の平均年収です。この平均年収は、一般的な給与所得者よりも高いというデータが揃っていますが、注意すべきは「平均」であるという点。
平均ということは、年収が高い方もいれば低い方もいるということ。実際に上の方で紹介した「経営者司法書士の平均年収」を見ると、年収が0であると回答した司法書士が23%もいます。
つまり、司法書士の年収は、高い方と低い方の両極端というのが事実として見えてきます。特に独立開業をしている方の中には、業務が順調に回っておらず、年収が低い状態であるという方が少なくないということ。
一方順調に仕事が回っており、年収も高いレベルをキープしているという方も一定数おり、その結果平均値が高くなるというのが真実のようです。
一部年収が高い方がおり、そういった方が目立つことで、司法書士全体が高年収というイメージがありますが、中には年収が低い司法書士もいるということは覚えておきましょう。
司法書士にとっての「ボーナス」は?
司法書士にとってのボーナスについて考えていきましょう。司法書士のボーナスといっても、企業内司法書士の場合は、その企業から支給されるボーナスが司法書士のボーナスとなります。
独立開業している司法書士は、自身が経営者であれば、自身の給与やボーナスも自分で設定することができます。もちろん事務所の売り上げがある程度あることが条件とはなりますが、自分なりにボーナスが調整できるのが司法書士という仕事といってもいいでしょう。
司法書士として年収アップをさせるポイント
司法書士は平均的に見れば年収の高い仕事です。しかし、司法書士の中にも高年収の方と、そうではない方がおり、比較的両極端であるのも事実です。
では、司法書士として年収を高めるためにはどのような努力、どのような考え方が必要かを紹介していきましょう。
専門分野を持つ
司法書士として年収をアップするためには、独立開業という道が基本となります。独立開業して司法書士としての業務を行う場合、重要になるのは顧客の確保、つまり営業活動です。
顧客を確保するためのポイントは、専門分野の知識を持つという点です。司法書士の仕事は幅広いため、いろいろな顧客層が考えられます。こういった顧客全体を広くカバーするよりも、ある特定の分野に特化した専門知識を持つ方が、顧客を集めやすく、また顧客からの信頼も厚くなります。
司法書士の業務の中心は、各種登記の代行です。登記となると不動産登記、商業登記、法人登記、船舶登記、債権譲渡登記、動産譲渡登記などが考えられます。こういった分野の中から得意分野を見つけ、その知識を増やしていくのが年収アップのポイントといえます。
持っている知識を活かして高収入の職に就く
司法書士として年収をアップさせたいものの、独立開業をする勇気はなく、できれば企業に勤務する形で年収アップを叶えたいという方もいらっしゃるかと思います。
こういった方の場合は、司法書士試験に合格するために得た知識が活かせる仕事に就くのがおすすめです。もちろん新たな職場を探し、転職をするというのも一つの方法ですが、今勤務している企業内でも、異動願いを出してより評価を受けられる部署に異動するという方法もあります。
一般的な企業内の部署で考えると、司法書士の知識が活かせるのはやはり法務などの部署でしょう。他にも総務などデスクワークの業務において、司法書士としての知識が活かせるかと思います。
自身が持つ知識が武器となる部署に異動できれば、当然その部署での評価も高くなり、結果年収に反映されることも期待できます。
勤務している企業に副業としての開業を認めてもらう
近年は労働者の働き方改革という考え方が進んでいます。そんな状況を加味して考えられる年収アップの方法としては、副業として司法書士として働くことを、勤務している企業に認めてもらうという方法が考えられます。
近年は多くの企業が副業を認める方向になっています。これまでの状況を考えると、副業として司法書士として働くなどということは、まず認められなかったでしょう。しかし今の状況であれば、認めてくれる企業があるかもしれません。
平日は企業に勤務しながら、休日などに司法書士として働くことができれば、その分当然ですが年収もアップします。
ただし、副業として司法書士の業務を行う場合には注意すべきポイントもあります。それは、司法書士の業務が週末など休日が中心になってしまうこと。司法書士の顧客には一般企業も多く、週末など休日に業務を行っていません。それだけ顧客集めは難しくなります。
また登記を行うにしても、登記を申請する法務局は基本的に休日は開局していません。つまり休日に行える司法書士業務にはかなり制限があるということになります。
休日が仕事で平日に休みが入る企業に勤務している、また平日の法務局が開いている時間にもある程度副業を認めてもらえるなどの条件がないと、年収アップに繋がるほどの業務は難しいということ。
これらの条件をクリアすることができれば、副業司法書士として年収アップを目指すことができるでしょう。
人脈を強化し活かす
司法書士として年収アップを目指すのであれば、独立開業をして自分で事務所を開設するか、すでに事務所を解説している友人などの事務所で、司法書士としての業務を担当させてもらうかというのが最短の道と考えられます。
しかし、独立開業をした司法書士がすべて上手くいっているかと言えばそうではありません。しっかりと準備をし、営業が行える方のみが大幅に年収をアップさせています。
独立開業してしっかりと顧客を獲得するためには、何より人脈が重要になります。司法書士のような士業は特に、ほかの士業との共管業務が多く、どれだけ人脈を広げられるかで年収が決まるといっても過言ではありません。
人脈づくりは独立開業してからではなく、その前からスタートさせるのがベスト。企業に勤務している間に司法書士の資格を取得し、企業に勤めながらいろいろな士業の方や、企業経営者などと繋がりを持っておくのがポイント。
司法書士の仕事は、自ら売り込むというより、顧客からのアポイントを待つ形になります。何かを生産しているわけでも、サービスを提供しているわけでもありません。顧客が困っている、悩んでいる事がないと、そもそも仕事が入ってきません。
もちろん独立してからの営業活動や広告宣伝なども重要になりますが、それと同様に重要なのが持っている人脈です。
例えその人脈自体に司法書士に相談するような事情がなくとも、人脈として持っている方の知り合いやご家族などが司法書士への相談を考えている場合、紹介してもらえる可能性があります。
司法書士というと、事務所でしっかり細かい仕事を一人でこなすというイメージがあるかもしれませんが、通常の仕事以上にコミュニケーション能力が必要な仕事となりますので、しっかり顧客を確保できるように準備しておきましょう。
まとめ
司法書士の資格を持っている方の平均年収は600万円を超え、一般的な給与所得者の平均よりもかなり高いレベルにあるといえます。
司法書士会の全国調査では、一般企業に勤務する司法書士よりも、みずから経営者となっている独立開業型の司法書士の方が年収は高い傾向にあります。
細かなデータを見ると、平均年収は30代で給与所得者全体の平均を超え、地方部よりも人が集まる都市部の方が年収は高くなります。
司法書士の資格を取得し、司法書士として働きながら年収アップを望む方法はいくつかありますが、もっとも分かりやすいのは独立開業をすること。
とはいえ、単純に独立開業をしても、誰でもうまくいく、年収がアップするというわけではありません。独立開業にあたっては、自らが得意とする分野を持ち、さらにしっかりとして人脈を作り上げるのが大きなポイント。
これから司法書士の資格取得を目指す方、この先独立開業を考えている方は、独立開業前からこうしたポイントを考え、得意分野づくり、そして人脈づくりを考えておくのが、年収アップのためにはおすすめとなります。