公務員でも副業できるものがある 規定と解禁の動向も紹介

更新日:2022年1月13日

公務員でも他にやりたいことをしてお金を稼ぎたいと考える方もいるでしょう。結論から述べると、公務員でも副業ができるケースがあります。ただし副業としてできないことが多い印象です。規定を確認してから決めないと解雇などのトラブルになります。

今回は公務員でも副業ができる条件を、規定を踏まえながら紹介します。記事を読めば、自身が副業としてやりたいことを認められる可能性を確かめられるでしょう。

目次

公務員として副業禁止の理由は?

公務員として多くの副業ができない理由は、関連法で定められているからです。よく確認しないで副業をやると、ルール違反を問われ、最悪の場合退職処分になる可能性もあります。公務員の副業禁止につながる根拠をまとめました。

公務員は多くの副業が法律で禁止されている

公務員として多くの副業を禁じる根拠法は、3つの法規からなります。それぞれを表で見ていきましょう。

根拠法 要旨
国家公務員法第103条 営利目的の企業経営や兼職ができない
国家公務員法第104条 非営利の事業に従事するなら、内閣総理大臣や副業をしたい本人の所轄庁の長の許可を受けなければならない
地方公務員法第38条 任命権者が認めることなく営利企業を経営できず、事務もできない

営利目的で他の仕事ができないことから、公務員が会社を経営したり、他の仕事で給料をもらったりできません。また非営利だとしても内閣総理大臣や勤務先の所轄庁の長から認めてもらう必要があります。

地方公務員法でも、任命権者の許可なしに会社の経営や他の場所での事務ができないなど、厳密な規制があるのです。以上から公務員としては会社経営やアルバイトなど他の仕事が原則としてできません。

副業禁止の三原則

公務員の副業禁止には、三つの原則があります。

原則 意味
信用失墜行為の禁止 公務員全体の信用を損なってはいけない
守秘義務 職務上知りえた秘密を外部に流してはいけない
職務専念義務 公務員は本職に専念すること。本職に支障が出ることは控える

公務員は主に自治体関連の施設で働くことが多いため、自治体や勤め先に尽くすべきという意識が他の職業より高いといえます。副業によって公務員全体のイメージを損なったり、本職がおろそかになると、自治体に不利益を与えるおそれがあるのです。

どうしても副業をやりたい場合は、公務員の三原則と照らし合わせながら、勤務先の上司に相談しましょう。できないという答えが出た場合は、素直にあきらめるのが賢明です。

家族名義なら会社経営はできる?

公務員として副業がバレないように、会社経営時の名義を家族内の他人にするケースがあるようです。しかし実際は公務員が家族内の他人名義を使い、経営にかかわるのは法的リスクがあります。名義貸しとして違法に問われるからです。

所得税法第12条でも、事業者本人が資産の真実の権利者という必要があります。つまり名義の本人が何もしていなくて、実際に会社や店舗を切り盛りしているのが他人の公務員である場合、大きなトラブルになるでしょう。

しかし公務員が他人の経営を手伝えるケースもあります。無報酬なら権利者ではないため、違法に問われません。家族や知り合いが会社を経営していて、公務員が一時的に経理の代行や商品の仕入れなどを手伝うケースもあるでしょう。その場合は給料さえもらわなければ影響はありません。

公務員が副業するとどうなる?

公務員が根拠法や三原則を破って副業をすると、社会的制裁のリスクがあります。以下の表にランクの高い方から罰則を示しました。

処分 内容
免職 公務員としての職を失う。懲戒処分の一環なら懲戒免職になる
停職 一定期間職務に従事できず、停職中は給与を受け取れない
減給 給料の一部を減らす
戒告 処分歴が人事記録に残る

このように副業をすると、その程度の重さに応じて処分が下されます。戒告を受けるだけでも昇給やボーナス、出世などに影響するでしょう。また懲戒免職になると社会的なイメージが悪くなり、そのあとの再就職活動にも大きく響きます。

以上から公務員として働いている間は、原則として他の仕事を控えた方が賢明です。

例外的に副業ができるケース

公務員でも例外的に副業ができるケースがあります。投資や講演、執筆活動などです。これらは公務員の原則に反する可能性が低いことから、条件つきで認められます。許可を受けられる副業のパターンを見ていきましょう。

投資

不動産や株式、FX、仮想通貨などの投資は可能です。ただしそれぞれ条件があることに気をつけましょう。条件の範囲内であれば投資には参加できるので、お金のあり方を学ぶ機会にはできます。

不動産の場合、売却益目当てでは投資できません。つまり賃貸業としてしか手に入れられないのです。他人に部屋を貸し出し、家賃を手に入れる形です。賃貸業は年収500万円以下が条件なので、超えそうになったら勤務先に相談しましょう。

また株式やFX、仮想通貨でも利益が出たら、条件に応じて確定申告が必要です。原則公務員以外での利益が20万円を超えたら確定申告義務が生じます。トラブルを避けるためにも、申告の準備を進めておきましょう。

このように投資は副業として認められていますが、やり方によって条件が決まっています。

講演・執筆活動

講演や執筆活動は公務員としての仕事に影響がなければ、勤務先から許可をもらえます。講演は営利目的でなければ謝礼金をもらっても大丈夫です。

また執筆活動は報酬なしならネットに投稿する形でも大丈夫でしょう。しかし作品の販売により、作家は印税を受け取ることがあります。印税は出版契約に基づいて作家に払われることから、公務員の副業で禁じられた報酬にあたるのです。

営利目的でなければ講演や執筆活動をして問題ありません。しかし作家としての印税のように報酬が絡む可能性に注意です。

家業の手伝い

家族が事業をしている場合、手伝うだけなら問題ありません。ただし副業禁止の三原則に違反する可能性もあります。念のため事前に勤務先に事情を説明し、理解を受けてからにしましょう。

たとえば家業の手伝いが忙しくなり、公務員の仕事に集中できない場合は、三原則のうち職務専念義務に反するおそれがあります。家業での疲れやストレスを引きずりながら公務員の仕事を続け、ミスが重なるとよくありません。

勤務先から許可を受けた場合も公務員としての立場を考え、家業の手伝いは無理のない範囲にとどめましょう。

小規模農業

小規模農業も認められますが、自給自足に限ります。自分で育てたものを自分の家で消費する場合のみ、野菜や果物などを育ててよいという意味です。育てたものを他人に売ると営利目的になるので、公務員としてはできません。

また農業によっては規模が大きくなるケースもあるでしょう。家庭菜園レベルなら大抵問題はなさそうですが、本格的な土地を使う場合は、勤務先から許可を得る必要があります。農業もやり方が人により違うので、勤務先に内容を正直に話し、チェックを受けましょう。

小規模農業も条件つきで認められますが、事前の相談を忘れないでください。

フリマアプリなどの処分売却

フリマアプリなどでいらなくなったものを売るだけなら、問題はありません。時々ものを処分するだけなら営利目的にならないからです。定期的ではない売却行為は、公務員としても認められ、許可もいらないのがほとんどです。

ただし商品を買ってすぐに高く売る「せどり」は営利目的になります。自分のために一定期間使い、いらなくなったあとに売るだけなら問題はありません。しかし転売目的の売却は公務員で禁じられている営利にあたります。

ものを売ってお金を稼ぐのは、処分目的であることが必要です。

副業解禁の動きが出ている

近年は条件つきで副業を認めるケースが出てきました。兵庫県神戸市や奈良県生駒市などのように、実際に副業を許される公務員が増えているのです。その実態や条件を見ていきましょう。

副業を解禁する自治体が現れている

神戸市や奈良県生駒市など、さまざまな自治体で副業解禁の動きが出ています。働き方改革やリモートワークなどの浸透により、公務員界隈でも考え方が変わっているのでしょう。

公務員による副業解禁の動きは、2018年6月15日の「未来投資戦略2018」がきっかけです。ここでは公益活動に限り、公務員でも副業できる方針が明かされました。職業を問わず地域に貢献したい方が多く、働き方の自由化という機運も相まって、このような方針が生まれたのでしょう。

未来投資戦略2018での提言がきっかけになり、公務員でも他の仕事ができる動きが増えていきそうです。もともと多く副業が禁止されていることから、規制が議論されそうです。しかし公務員もこれからさまざまな生き方を実現できるでしょう。

公益的活動の条件

公務員の副業として認められている公益的活動には、社会福祉目的の福祉サービスが当てはまります。これは経済的な理由や心身の状況から支援が必要な方を対象としています。

しかし社会福祉目的なら何でもいいわけではありません。料金徴収がなかったり、あっても事業側のコスト以下の料金にとどめたりする必要があります。つまり社会福祉目的でも利益を上げてはいけません。

公務員はもともと営利目的での副業を禁止されていたため、公益的活動にも利益をもらわない原則が設けられています。

具体的に公益的活動と認められるもの

公益的活動としてさまざまな種類が思い浮かびますが、公務員がやるものとして認められているのは主に以下のとおりです。

  • 地域の高齢者・障がい者との交流を目的にしたイベント
  • 子育て家族の交流の場

高齢者や障がい者、子育て世代などを助ける目的の地域イベントなら、基本的に副業が認められているようです。地域貢献という使命感から、新たなライフワークにつながるでしょう。しかしゴミ拾いや、交流スペースの貸し出しは認められていません。

公務員の三原則に反しないように、公益的活動としてできる副業にも独自のルールがあります。副業をしたいと思ったら、自己判断ではなく勤務先にできる可能性を相談しましょう。

副業するときの注意点

実際に勤務先から副業を認められても、油断はできません。やり方によってはルール違反になる可能性があるからです。実際に気をつけるべきポイントを紹介するので、必ず守りましょう。

本業に支障を出さないこと

副業の結果として、本業に支障をきたさないことが重要です。日々の生活において複数の仕事をバランスよくこなすには、スケジュール調整も要します。仕事に使う時間が多くて疲れもたまりやすいでしょう。

複数の仕事をしている結果、時間や体調などの問題が出ると、どちらでも関係者に迷惑をかけることになります。また副業を許されたあとも、公務員としての三原則は守り続ける必要があるため、それぞれの仕事中の行動には深く用心してください。

本業と副業ともに支障をきたさないように、生活バランスを整えましょう。

判断が難しいときは上司に相談

副業の判断が難しいときは、迷わず上司に相談しましょう。種類によっては営利目的になるかわからないケースがあるからです。自己で営利目的ではないと判断しても、実際に営利的側面を認められれば、公務員として罰則を適用されてしまいます。

このような事態になるのは、公務員自体が営利目的の仕事ではないからです。他の事業をするとき、営利にあたるかどうかを判断しづらいといえます。たとえば執筆活動はネットに投稿するだけなら営利目的ではありませんが、印税をもらうのは営利になるので注意です。

不測の事態を避けるために、上司に相談したり、副業に関する規則を確かめたりしましょう。

公益性を考える

副業をする場合、公益性から認められる可能性を考えましょう。たとえば障がい者や高齢者を対象としたサービスは、公益的とされやすい傾向です。他にも子育て中の方に交流の場を提供するのも問題とされません。

しかし障がい者やその世話をしている方、子育て中の家族に対して、交流スペースの貸し出しはできません。場所の使用料を取ることが営利目的とされます。このようにひとつのサービスでも、公益的な行動とそうでないものが混じっているのです。

自身が考えている副業があるなら、どこまで公益性があるかまで勤務先と話し合いましょう。

SNS・ブログでの収入はグレーゾーン

SNSやブログでの収入はグレーゾーンとされるので、控えた方が賢明です。一般的に広告を貼り、そこにクリックする方がいれば収入が発生しますが、これが営利目的という意見があります。

一方で講演の対価のように、ブログやSNSを通して他のユーザーから対価をもらった場合は、非営利の案件収入です。これだけなら問題がないという意見もあります。

しかし社会的にはブログやSNSからもらうお金は、営利目的の広告収入というイメージが強いとされます。まぎらわしいときは上司に使用許可を確かめた方がよいでしょう。

まとめ

公務員ができない副業は多いといえます。会社経営や他の場所での労働など、収入を得る行為の大半が営利目的だからです。営利が関係した副業は公務員としての規則違反になり、最悪の場合免職を受けるかもしれません。

投資や講演など、条件つきで可能な副業もあります。条件に違反することで公務員の規則に反するケースもあるので、まぎらわしい場合は勤務先の上司に確認しましょう。無用なトラブルを防ぐためにも、副業を考えている場合は相談が不可欠です。

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