証券外務員資格には有効期限がある?更新研修とは
更新日:2022年2月21日
証券外務員資格は、証券関係の仕事で活躍するためには必須といっても過言ではない資格です。しかし、そんな証券外務員資格を継続的に保持するためには「更新研修」を受けなければならないことをご存じでしょうか。
今回は、証券外務員資格の更新研修とはどんなものなのか、どのくらいの難易度なのかといったことを中心に、証券外務員資格を活かせる場面などについても解説していきます。
証券外務員資格の有効期限
証券外務員資格には有効期限はありませんが、外務員登録には5年間の有効期限があります。有効期限が切れるまでに更新研修を受けなければなりません。また、以下に該当する者は180日以内に更新研修を受ける必要があります。
- 新たに外務員の登録を受けた方
- 再び外務員の登録を受けた方(一度退職や転職をしてから金融機関に再就職したなど)
ここで整理しておくべきなのは、更新が必要なのは証券外務員資格ではなく、外務員登録であるということです。日本証券業協会のホームページにも以下の様に記載されています。
外務員資格は、法令違反等による資格の取消し等がない限り、取り消されることはありません。
退職した場合や他の協会員へ転職した場合でも資格は有効です。
ここでまた新たな単語が出てきましたので解説します。まずは協会員という用語についてです。
日本証券業協会に所属している証券会社や金融機関の事を協会員と呼びます。協会員に所属していて顧客に金融商品の販売・勧誘などを行う者を外務員と呼びます。外務員として仕事をするためには証券外務員資格は必須の資格ですので、金融機関や証券会社で勤めている方はまず取得する資格です。
具体的に述べると、銀行や証券会社の窓口で働いている人は外務員と呼ばれるということです。外務員として仕事をするためには証券外務員資格は必須なので入職したての新人さんは必ず勉強する資格と言えます。あるいは、学生時代にすでに取得している方も多いです。
もう一つ分かりにくい単語が外務員登録という用語なので、解説します。
証券外務員試験に合格した者には日本証券業協会から外務員資格が付与されます。外務員資格を取得するだけでは外務員として働けないので、登録申請が必要です。登録の申請は所属している協会員が行いますので個人が行うことはありません。登録申請が完了すると外務員登録が完了し業務に従事できるということです。
つまり、金融機関や証券会社の窓口でお客様に金融商品の販売や勧誘を行うためには証券外務員資格を取得して日本証券業協会に外務員として登録しておく必要があるということです。おわかりいただけましたでしょうか?ここがかなり混同されやすいのでご注意下さい。
日本証券業協会のホームページにも以下のように記載があります。
外務員資格を持っているだけでは、外務員として活動することはできません。
長々と説明してきましたが、話を戻します。この外務員資格の登録に5年間という有効期限が存在するということになります。登録後5年経つまでに更新が必要です。つまり、登録していなければそもそも更新という必要がないのです。外務員資格自体は一度取得すれば更新不要なので。
外務員として勤務しているうちは外務員登録しているはずなので、1年目は180日後、その後は勤続年数とほぼ比例して5年ごとに更新が必要です。協会員に所属していない場合は、年数のカウントはされません。そもそも協会員に所属していないということは外務員登録されていません。転職などで一度協会員から外れて再度協会員に戻った場合は新たに外務員登録を受けたということになりますので、180日以内に更新研修が必要となります。
外務員資格更新研修とはどのような研修なのか
確認ですが、証券外務員資格の更新ではなく外務員資格の更新です。繰り返しになりますが、証券外務員資格は特別な理由がない限り失効にはなりませんし更新は必要ありません。一度取得しておけば10年間別の仕事をしていても証券外務員資格は有効です。では、外務員登録の更新研修とはどのような研修なのでしょうか?気になる更新研修について解説していきます。
外務員資格取得後の更新の流れ
外務員資格はなぜ更新が必要なのか、日本証券業協会は以下のように記載しています。
外務員資格更新研修とは、外務員に対する投資者の信頼性を確保するとともに、外務員の一層の資質向上を図るために受講が義務付けられている研修です
どのような資格においても、取得後の定期的なメンテナンスがお客様に安心を与えます。外務員の方は必ず更新研修を受けましょう。更新研修受講までの流れを見ておきましょう。
証券外務員資格更新研修の対象者
証券外務員資格の試験は受験資格がありませんので誰でも受験可能です。しかし、更新するということはその時点で協会員であるはずですので、更新の申請は人事部などを通して行われます。そのため、外務員資格の試験を受験した時と同じ会場で、同じメンバーで更新研修を受けることが多いようです。
※協会員に所属していない期間は更新研修にカウントされません。協会員から一度外れて再度協会員に所属した場合は、再度所属した日をスタートとして180日以内の更新研修が義務付けられます。つまり、協会員でなければ外務員資格自体を有していないため、更新研修も必要ありません。証券外務員の資格も保持されます。
更新研修の日時などもすべて会社から指定がありますので、個人で何かの準備をする必要はありません。持ち物はすべてロッカーに入れないといけないため、特別持ち物は不要です。研修はビデオ研修で試験もパソコンで行われるため特別なものは必要ありません。
すべての研修を修了すれば、更新は完了です。各ビデオ研修後に簡単な試験がありますので、その試験をクリアすれば更新研修修了です。修了すれば外務員資格が5年間更新されます。試験に合格しなかったり、更新研修を受けないと更新研修終了とならないため、外務員資格の停止処分を受けます。資格停止期間中に研修を受講・修了しない場合、外務員資格はすべて取り消されます。
更新研修の内容
それでは、更新研修とはどのような研修なのかを解説していきます。結論から言うと、決して難しい研修ではありませんのでご安心ください。
まず、外務員試験の時と同様にパソコンが配備された会場で研修が行われます。このような研修会場は限られているため、多くの場合証券外務員資格試験会場と外務員登録更新会場は同じ会場になるようです。入室時にスマートフォンはもちろん、メモ用に持参したペンやメモ用紙もロッカーに入れなければいけません。メモ用のホワイトボードとペンを渡されますので、そちらでビデオ研修の内容をメモします。
研修はすべてビデオ研修です。イヤホンをつけて研修を受講します。研修の内容は明確にされていませんが、難易度の高いものではなく、基本的な内容が中心です。特に、5年間で制度が変わったものがあれば講義の中で知識をアップデートします。講義自体は5つほどあり、それぞれの講義終了後に確認の試験があります。
確認試験は問題数は6〜10問程度であり、合格点に達しなければ何度でも試験を受けられます。試験不合格であればビデオ研修を再度受けられますので、2回目は合格できるようにホワイトボードにメモしておきましょう。何度試験を受けても良いのですが、研修自体には時間制限がありますので、研修の時間内にすべての講義を修了できるように取り組みましょう。試験の合格基準は70%です。
試験自体はそのビデオ研修の内容を理解しておけばクリアできるはずですので、問題はビデオ研修をきちんと受講できているかどうかです。外務員資格更新研修のために夜遅くまで※外務員必携を読み込んでおり、当日寝不足でビデオ研修が受けられない、そんなことにならないように注意して下さい。そこまでの事前学習をしておかなくても修了できる研修です。
※外務員必携は、外務員としての職務を行うに当たって必要な知識を修得するため、日本証券業協会が作成している資料です。外務員資格試験の際に購入あるいは会社から配布されているはずで、金融商品取引業務に従事する者に必要な法令・諸規則や商品業務等について記載されています。
外務員資格更新研修の合格率
気になる外務員資格更新研修の合格率は以下の通り公表されています。
受講者数 | 修了者数 | 修了率 | |
---|---|---|---|
2018年度 | 115,044名 | 114,976名 | 99.94% |
2019年度 | 72,975名 | 72,934名 | 99.94% |
2020年度 | 73,032名 | 73,011名 | 99.97% |
2021年度 | 75,542名 | 75,519名 | 99.96% |
2022年度 | 89,209名 | 89,169名 | 99.95% |
引用元:日本証券業協会「業務・財務資料」
5年間連続で99.9%以上の修了率です。つまり、よほどのことがない限り、更新研修さえ受講すれば修了することができるということです。修了すれば5年間は外務員資格が与えられるため職務に従事することが可能です。更新研修を受講せずに資格停止になるのはあまりにもったいないことですね。
証券外務員の資格は失効する?解決策は?
証券外務員資格と外務員登録の有効期限、この2つはネット上でもよく混合して記載されております。別のものとして区別して考えて下さい。
証券外務員資格は、一度取得すれば法令違反などの資格取り消し処分がない限り失行することはありません。証券会社や金融機関をやめて業務に従事していなくても資格は保持されます。
証券外務員資格を保有して協会員に所属していれば外務員として登録されます。外務員として登録されてはじめてお客様に金融商品などの販売や勧誘が行えます。この外務員登録には5年間という有効期限があります。5年以内に更新研修を受講することが必要です。
この2つをきちんと区別した上で、以下の記事をご覧いただければ資格を維持する方法が分かります。
外務員登録の有効期限は5年間
外務員登録は5年ごとの更新制になっています。これは外務員の質を保つために日本証券業協会が定めているルールです。更新研修を受講すれば5年間有効期限が延長されますので、5年に1回更新研修を受講することになります。
更新研修についてはすでに記載した通りですが修了率99.9%以上と極めて高いので、受講さえすればほぼ間違いなく修了して更新することが可能です。
なお、ここで注意して欲しいのが外務員登録の有無です。外務員登録には協会員に所属していることが必要です。協会員とは、日本証券業協会に所属している証券会社や金融機関の事を指します。つまり、協会員に所属していなければそもそも外務員として登録されていないため外務員資格の有効期限など気にする必要もありません。
協会員から退職や他業種に転職をした方は証券外務員資格を保有した状態ですが外務員ではありません。よって、更新研修は不要ですし、期限などを気にする必要もありませんのでご安心ください。
他業種に転職すると外務員登録が失効する
外務員として働いていた方が、心機一転別の業種で働くため転職した場合、外務員登録はなくなります。外務員は協会員に所属していなければならないため、必然的に外れますし、そもそも外務員登録されている必要がありません。
外務員登録から外れるからと言って、証券外務員資格が失行となるわけではありません。証券外務員資格は法令違反など資格の取り消し処分を受けない限り失行することのない資格です。有効期限はありませんのでご安心ください。
転職や退職後、やっぱり銀行や証券会社で働きたいと思って戻ることもあると思います。その場合は所属の協会員から新規に外務員登録が行われます。それだけですぐに外務員として働くことが可能です。ただし、新規の外務員登録ですので初回は180日以内の外務員登録更新研修の受講が必要となります。会社で管理しているのでいついつに受講するように指示があると思いますが、半年以内に更新研修が必要だと自覚しておきましょう。
証券外務員資格をとるメリット・デメリット
資格を取得する際に気になることは、取得した後にどのような恩恵があるのかです。つまり、資格取得によるメリットです。資格取得自体がブランディングになるため特別なメリットがなくても存在する資格もありますが、証券外務員資格はどうなのかを以下に解説します。
結論を言うと、メリットはありますが目立ったデメリットは存在しない資格と言えます。
証券外務員資格をとるメリット
まず大前提として、証券会社や金融機関などの協会員で働く場合は必須の資格と言えます。メリットどうこうではなく必ず取得しないと仕事ができません。言い方を変えると協会員で働くことができるというのがメリットとも言えます。その他のメリットは以下の通りです。
・幅広い業種で活用できる証券会社や金融機関で働く際はもちろんなのですが、保険、不動産、ファイナンシャルプランナー事務所など多くの仕事に通じる知識を得ることができます。
証券外務員資格のために勉強する証券業界の規則や金融関係のさまざまな法律に関する知識は保険関係や不動産関係においても通じる知識です。金融商品・証券・投資の知識があることで不動産投資や資産運用についてのアドバイスにも役立てることができるため、活用するシーンは豊富に存在します。
・経済や金融に強くなれる普通に生活していると、金融や経済のニュースの内容は難しく感じます。理解するためにはある程度の知識が必要です。証券外務員資格を取得する際にはまさにこの知識を学ぶことになります。試験科目の中に「経済・金融・財政の常識」が含まれています。金融商品や株式だけではなく、経済に強いということは社会人として必要なスキルですし、自身の資産運用などの将来設計にも役立ちます。
・資格取得に時間がかからない証券外務員資格は証券マンにとっては入り口となる資格です。ある程度幅広い知識は求められますが、深い知識は必要とされません。そのため、数か月程度の短期間の学習によって資格の取得を目指せることが証券外務員資格のメリットと言えます。実際、証券会社や金融機関に就職してくる学生の多くはすでに学生時代に資格を取得していることが多いくらいです。
・次の資格へのステップアップにつながる証券外務員資格は金融や証券についての基本的な事項を学ぶことができます。そのため、さらに専門性の高い資格へのステップアップと考えることもできます。例えば、証券に関するプロフェッショナルと言えば証券アナリストが思い浮かびます。
証券アナリストは対個人の仕事ではなく企業の業績評価や機関投資家として資産運用を行うなど証券外務員よりはるかに専門的な知識が求められます。他にも個人の資産運用のアドバイスを行うファイナンシャルプランナーなどもその一つです。資産運用をアドバイスするためには金融や証券に対する深い知識が求められます。このような資格への通過点として証券外務員資格を取得することもメリットと言えます。
証券外務員資格をとるデメリット
資格を取得すること自体にデメリットはありませんが、費用対効果は常に意識しておく必要があります。時間とお金をかけて取得した資格があまりに役に立たないようであれば、それは資格取得のデメリットと言えます。
・他の資格と範囲が被ることがあるメリットのところで述べた通りですが、証券外務員資格は証券マンの入り口程度の資格です。幅広い知識を必要としますが、当然他の金融関係の資格と重複することも多々あります。特に専門性としては低い資格ですので、証券外務員資格を取得したからと言って職域が守られるというものでもありません。
・就活や転職などで圧倒的に有利になるとは言えない証券会社や金融機関に就職する際に証券外務員資格を保有しているということは一つのアピールポイントにはなります。しかし、最近の学生の多くがすでに学生時代に証券外務員資格を取得しているため、他の学生と決定的な差別化が図れるかというとそこまでのインパクトはありません。
どちらかと言うと、証券外務員資格を持っていないと、証券外務員資格すら取得できないレベルなのか、と試験官にマイナスのイメージを与える材料とも言えます。
証券外務員資格が活用できる場面
それでは、証券外務員資格を活用できる場面をケースに応じて解説していきます。
・実務面証券会社や金融機関で働く場合は必ず必要な資格ですので、実務面においては活用されていると言えます。外務員登録の5年ごとの更新もあります。証券外務員資格には一種と二種があります。一種であれば現物取引だけでなく信用取引なども業務として遂行できますが、二種の場合は現物取引のみが実務として従事できる業務となります。
そのため、一種と二種では資格の難易度や出題範囲に差があります。より実務面で証券外務員資格を活用することを考えると、一種の資格取得を考えましょう。
・就活・転職面大学生が就活をする際に特に金融機関や証券会社の就職を希望する場合は証券外務員資格保有はアピールになります。ただし、証券外務員資格を保有していなくても就職後に必ず取得させる資格なので、数か月後には横並びになることを考えると資格そのものの価値と言うより資格取得するほどの熱意があるというアピール程度の意味合いです。
異業種からの転職の場合は、すでに証券外務員資格を保有していることは一つのアピールになるでしょう。既卒者で証券外務員資格を持っていない場合はそれでも採用する理由が必要になります。すでに社会人で今後金融・証券業界で働きたいという方は知識取得のためにも証券外務員資格の勉強は必要と考えます。できれば一種の取得を目指しましょう。
まとめ
証券外務員資格の有効期限・更新制度について解説しました。言葉がややこしく、ネット上でも証券外務員資格と外務員登録の有効期限を間違って認識している記事がありますので本記事で整理しておきましょう。
- 証券外務員資格は一度取得すれば特別な理由がない限り執行しない
- 外務員登録は5年ごとの更新が必要
- 外務員登録の更新研修はビデオ研修で各講義ごとの確認試験をクリアすれば修了となる
- 外務員資格更新研修は修了率99.9%以上
外務員登録の更新は決して難しいものではありませんので5年に1回ブラッシュアップしておきましょう。