行政書士試験合格を目指す方に向けて、1年間の学習の全体像と、それぞれの期間で何を意識すべきかについて解説します。試験終了から次の本試験まで約1年間ありますので、この機会に計画を立てて勉強をスタートすることが重要です。1年間を三つの期間(クール)に分けて、それぞれの期間の目標と学習方法を確認していきましょう。
【第1クール】基礎力の完成を目指す(1月~5月)

最初の期間は11月から5月です。この期間は「基礎力完成」を目標とします。具体的には、テキスト学習で基礎を固め、過去問を一周完了させることを目指します。5月に過去問1周完了すれば良いということではなく、最低限5月までに過去問を一周終えることを目標に設定してください。
勉強の大きな流れは、テキストで学習した後に過去問に取り組むという形になります。ここで多くの方が陥りがちなのが、テキストを一度読んだだけで100%理解しようとしてしまうことです。しかし、最初の一周目で完璧な理解を目指す必要はありません。一周目の理解度は50%から70%程度でも構いません。テキストは回数を重ねて繰り返すことで、徐々に理解が深まっていくものです。一周目から「100%完璧を期待」しないという意識を持つことが大切です。完璧を目指しすぎると、理解できない部分があった時に嫌になってしまうことがあります。
過去問に取り組むタイミングは、テキストで該当部分を学習した後、流れでやってしまっても良いでしょう。過去問は、過去にどのような問題が出題されたのか、どのように問われたのかを把握するためのツールです。過去問が解けること自体が良いのではなく、テキストで学んだ知識をどれだけ理解し、覚えているかを確認するために利用します。
そのため、過去問の一周目で問題が解けなくても気にする必要はありません。テキストの理解度もまだ完璧ではないからです。したがって、テキストと過去問は「一緒に育てていくもの」と考えてください。テキストの理解度が繰り返しによって80%に上がってくるにつれて、過去問の正答率も上がってきます。
6月以降の演習期に向けて、この1月から5月の期間でテキストと過去問の一周を終え、繰り返しの学習ができる土台を作ることが重要です。ここをやっておかないと、こっから先のところで繰り返し繰り返しを何度も何度もやっていくという土台ができません。
この期間に最も避けるべきは、「テキストを丁寧にやりすぎる」ことです。例えば、民法や行政法だけで5月までいっぱいになってしまい、他の科目に手が回らなくなるようなケースです。ここでやることなくなります。他の科目も勉強できません。極端な話、民法だけで2月まで来てしまうこともあります。
一冊のテキストを勉強するのに時間をかけすぎると、繰り返す時間がなくなってしまいます。一冊終わらせるのに、普通であれば一週間や二週間、三週間程度で済むところを、2ヶ月もかかってしまうということになると、全体の一周が終わらなくなってしまいます。それはやはり次につながらない勉強になります。
とにかく、6月ぐらいからしっかりと演習なんか何度も繰り返していくのですが、それをやるためにはここまでの間にまず1回は一通り全部終わらせなければいけません。このことをしっかりと1年間のこの時間の中で頭に入れておいてください。
もちろん早く終わるのは構いません。2月とか3月で全部一周し終わりましたという方は、そこからもう先に問題演習の繰り返しの方に入って大丈夫です。
【第2クール】過去問中心の演習で知識を定着させる(6月~8月)

6月から8月の期間は「過去問中心」、つまり演習をメインにテキスト学習を進めるクールとなります。過去問は2、3周程度とはなっていますが、これは最低限です。試験までに多い人で10周・最低5週の方もいます。覚えるまでは何週もすると良いでしょう。
過去問題のやり方については丸、三角、バツをつけて、2周目と3周目ではもう丸をつけたものに関してはもうやらなくていいことですから、どんどん問題数が減ってきますので、試験までに目標10周といっても大した量ではないと思います。もちろん一生懸命やらないとできない量ですが。
5月までに培った土台をここから精度を仕上げていきます。6月8月の間に、テキストと過去問を行ったり来たり、行ったり来たり何回もします。その際に大切なのは、単に正解を覚えるのではなく、「誤りの選択肢」をちゃんと理解することです。つまり、過去問を覚えることが目的ではなく、正解することでもなくて、その間違いなら間違いの理由をちゃんと言えることです。
テキストのあそこには書いてあったな、こういう理由だよなという事がちゃんと言えることが目的で、過去問の点数を競うことほど意味のないことはないので、そうではなくて、過去問を使って自分の知識がしっかりと入っているかどうかをちゃんと確認することです。
そしてここで頭の中に知識を定着させるために、インプットとアウトプットを繰り返します。間違った箇所、間違った箇所に気になった時は、必ずテキストに戻って知識の確認です。
問題集とテキスト、これを行ったり来たりするこの頻度を上げて何度も何度も繰り返すのが6月から8月です。
よくたまに、「過去問覚えちゃうんですけど」と言っていますが、過去問を覚えることが目的ではありません。テキストの知識を覚えることが目的で、過去問はあくまでもツールです。思い出すためのツールです。チェックテストだとか、確認テストというような一問一答というのもありますので、そういうのもちゃんと使ってやっていただくといいかなと思います。
【第3クール】直前期の実力アップと課題把握(9月~11月)

最後の期間は9月、10月、そして本試験のある11月を含む直前期です。直前期、大事なことを最初に言いましょう。ここは何かというと、まあ模擬試験で書いていますが、直前期です。この直前期には、模擬試験が実施されることが多くなりますので、これを受けていただくということですね。模擬試験はあくまで実践の練習なので、実戦形式で受けてください。テキストを見ながらやったりとかしてはいけません。時間を測ってやっていただくのが良いと思います。
模擬試験を受けると、結果が悪かった、結果がイマイチという形で悩む方が多いです。模擬試験というのは基本的には自分の実力を測るというものがありますけれども、自分が今現時点でどのくらい知識の定着度があるのかというのをやっているだけの話で、あとはですね、あの、模擬試験作っている側もですね、これは取ってほしい問題と、それから難しい問題みたいなものも入れたりします。そうすると、それの一問に引っかかったりですね、解けなかったとかで苦しくなっちゃうという方も結構いて、模擬試験を受けてメンタルがやられてしまうという人がたまにいますが、それはあんまり意味がありません。
なぜなら、その下にありますが、大事なことは課題の把握です。なんで模擬試験はあくまで模擬試験です。本番じゃありません。本番で出題されたときに、この辺り覚えてなかったじゃないの、というところが出てきたらラッキー。だから、模擬試験で覚えなければならない知識を覚えていなかったというところがもし洗い出せたら、それは逆にラッキーです。課題の把握ができたんだなと思ってください。本番で間違いなければいいだけなんですからね。なので、模擬試験も点数を取ることが目的ではなくて、大事なことは、それによって本番までの課題を把握できるかどうかということです。相手を避けてね、まあ、直前期という形で今、9月、10月、11月、ここのところでは大事なことは課題の把握なんです。
実力は直前期に伸びる!学習継続のモチベーション維持
直前期、大事なことを最初に言いましょうかね。実力は直前期に伸びる。これ何かと言うと、法律の勉強に限らないのですが、何でも勉強というのは頭の中に知識が定着してくるというのは、勉強を始めてしばらく経たないと頭の中に知識が定着しないんですね。忘れる、忘れる、覚えるを繰り返して、何度も何度も、まあ海馬というところにですね、「これは大事な情報だから覚えてね」という風に何度も何度も信号を送ることによって、やっと脳みその方は、「これ何回も何回も言われてるってことは覚えなきゃいけないんだな」ということで覚えるんですよね。そういうことが、今まで一生懸命勉強してきて最終的に定着してくるのが、ちょうどだいたい直前期なんです。
なので、頭で書くと分かると思いますが、実力がこっちで、こっちは時間だとすると、勉強時間と実力がこういう風に比例するイメージになるのですが、実際はどうかというと、こういう感じで伸びるというイメージを持っておいてください。なので、ここ元気ですよね。勉強している最中、なかなか伸びないので、とても苦しく感じるのです。本来こうだろうと思っているところに、ここしか来ないわけですから、この差がすごく苦しく感じるのですが、いや、そうじゃないということです。この時期、一生懸命繰り返し繰り返しやっている時期があったからこそ、直前期にぐんと伸びるのです。このことを最初に頭に入れておくと、途中この辺で苦しくなって、「挫折する」「やめた」と思ってしまうことが、なんとか回避できるかなと思います。なので、実力は直前期に伸びるんだということ。大切なので、しっかりと覚えておいてください。
あとは、これもあの全体を通じて覚えておいてほしいのですが、実力は直前期に伸びるのです。この真理というか、勉強って必ず人間の脳みその働きからしてこうなるようにできているらしいですが、実力というのは、何度も書きますが、こっちに時間があって、こっちに実力があるとすると、こうではなくて、ぐんと伸びるのです。極端に言うと、こういう風なイメージを、勉強する最初に持っておいてください。そうすると、この苦しい時期は苦しいのですが、後で必ず直前期にぐんと伸びるはずだと思って、勉強できるかなと思いますので、是非この部分に関しては、ちょっと覚えておいていただければと思います。
まとめ:年間計画を立てて効率的に学習を進めよう
今回は、行政書士試験合格に向けた1年間の学習スケジュールと、それぞれの期間で心がけるべき学習方法についてお話しました。これから初めての1年間ということで、ちょっと長いように感じるかもしれませんが、目的をもってそれぞれの期間で何をやるのか、これをはっきりと認識して勉強を進めれば、長い1年間もあっという間に過ぎるかなと思います。是非、今日お話した部分、この三つの段階に分けて、それぞれのところで何が大切なのか、この部分を頭の中に最初に入れながら、勉強を開始していただければと思います。