不動産資格と就職先

不動産資格を取得後、どのような就職先でその資格をいかせるのか気になりますよね。頑張って勉強し資格試験に合格したら、やはりそれを活用できる仕事に就きたいものです。また、今すぐではなくても「将来的に独立開業したいので資格を取りたい」を考えている人もいるでしょう。

不動産資格はいろいろな分野の種類があります。それぞれどのような就職先でいかせるのか、独立することは可能なのかなどを探ってみました。不動産資格を選ぶ際の参考にしてくださいね。

不動産資格はいろいろな分野の種類がある

ひとくちに、不動産資格といってもいろいろな分野の種類があります。そして、それぞれ国家資格・公的資格・民間資格に分かれているのです。きちんと勉強すれば一発合格を狙えるものや、何回か受験しないとなかなか合格できないものまで、試験の難易度が異なります。

どのような資格があるのかご紹介しましょう。まずは、それぞれの違いや活躍できる分野を把握してください。

不動産取引を行うために必要な資格

不動産取引業を営む・不動産取引業者で働く、などの場合に必要な資格です。

【宅建(宅地建物取引士)】
自分で不動産会社を営む際には必要な資格です。宅建資格がなくても不動産会社で働くことはできますが、有資格者のほうが歓迎されます。

【宅建マイスター】
宅建士の最高峰といわれる資格。不動産取引や物件のリスクを予見、緻密で丁寧な調査を行い、契約書などに反映して安全な不動産取引を成立させる仕事を行うプロです。

マンション管理のプロになるために必要な資格

マンション管理のプロとして働くために必要な資格です。

【マンション管理士】
マンションの管理組合をクライアントとして、建物・設備管理や修理修繕の計画、マンション組合の運営など、多岐に渡る問題を解決したりアドバイスを行ったりするコンサルタント業です。

【管理業務主任者】
基本的に、マンション管理会社・不動産会社に所属。管理会社の人間として、マンション管理組合に対し、マンション管理受託契約の重要事項の説明や、管理業務の状況確認や報告を行う仕事をします。

不動産を鑑定・コンサルティングするために必要な資格

【不動産鑑定士】
クライアントの要望に応じ、土地・家・建物などの価値を鑑定します。また、土地の有効活用などのコンサルタント業務も行うことができる資格です。

【不動産コンサルティング技能登録者(不動産コンサルティングマスター)】
不動産に関するコンサルティング業務を行うことができる知識・スキル・実務経験を有していると認定される資格です。

室内をコーディネートするために必要な資格

【インテリアコーディネーター】
住宅や施設の内装全体をトータルコーディネートする資格です。インテリアセンスやカラーセンスはもちろんのことながら、内装材・照明器具・家具・インテリア雑貨などに関する商品知識も身につける必要があります。

建物を設計するために必要な資格

【建築士】
建築士は、建築物の基本設計・実務設計、工事管理業務、手続き業務を行う仕事です。建築士資格は、1級・2級・木造の3種類があります。

不動産の知識を活用できる資格

不動産業界の資格というわけではありませんが、不動産の知識を得て活用することができます。

【行政書士】
人々の生活や企業に密着した行政業務に携わる仕事をします。さまざまな書類の手続きを行い、人と官公署とのパイプ役を担うために必要な資格です。不動産物件調査の代行や、不動産売買解約書の作成支援など、不動産に関する業務もあります。

【税理士】
会計・税務のプロとして、個人や法人のクライアントに節税対策指導・決算書作成・融資相談などを行うための資格です。
不動産購入に関する所得税・消費税・贈与税・不動産取得税・固定資産税ほか「不動産に関する税」も扱います。

【司法書士】
クライアントの財産や権利を守り、トラブルの法的解決をする専門家です。裁判所・検察局・法務局などに提出する書類の作成や、登記・供託の手続き、審査請求が主な仕事ですが、不動産登記・会社登記などの手続きや代行仕事の割合も多くなります。

企業のコンサルタント的な役割の資格

【中小企業診断士】
国内の99%を占める中小企業をクライアントに、さまざまな範囲で経営戦略のサポートを行う経営コンサルタントを行える資格です。特に、不動産業界企業で人気がある資格となっています。

【社労士(社会保険労務士)】
企業の人材雇用・労務トラブル・就業規則・労働災害・社会保険ほか企業の人材に関するさまざまな分野の手続きや代行を行います。企業で働く人材を守り経営にいかすのが仕事で、労務管理が必要とされる不動産業界で歓迎される資格です。

資産運用など「将来のお金のプラン」を立てる資格

【FP(ファイナンシャルプランナー)】
クライアントの人生に関わるお金(教育資金・老後の生活設計・資産運用・不動産の相続・税金ほか)に関しての専門知識を持ち、顧客のライフプランを考えアドバイスする専門家です。

不動産資格と就職先

不動産資格にはいろいろな分野の種類があり、それぞれその資格をいかせる就職先があります。また、不動産業界以外でも活用できる資格もあるのです。その中から、フォーサイトがおすすめする資格をご紹介していきましょう。

宅建(宅地建物取引士)の就職先とは?

宅建資格がいかせる就職先にはどのようなところがあるのでしょうか。

宅地建物取引業・不動産業界

宅建業務を含む不動産取引業では、「各事務所5人に1人は宅建士を雇う」という設置義務があります。そして、宅建士には「お客さまに必要事項の説明をする」という宅建士しかできない独占業務があるのです。そのため、就職する際、無資格の人よりも宅建資格取得者のほうが優先的に採用される傾向にあります。

特に、新卒者が大手の不動産会社に就職する場合、事前に資格を取得していれば「やる気がある」「即戦力になる」と評価され採用される可能性は高くなるでしょう。また、宅地建物取引業・不動産業の事務所では、女性のアルバイトやパートの事務職でも宅建格取得者の場合優遇されます。主婦の再就職に役立つ資格としても人気です。

(宅地建物取引業と不動産業の違い)

※宅地建物取引業:マンション・アパートの売買取引や仲介業務を行う

※不動産業:物件売買の仲介業務に加え、マンション管理・マンション管理会社の監督に関する事務など、はば広い業務を行う

金融業界

金融業界では、不動産をローン審査の担保にします。その際に、不動産に対する適切な知識や鑑定力が必要なので、宅建の知識は役立ちます。

JASDAQ上場企業のグループ金融機関では、採用の際、宅建資格所有者を優遇したり資格手当を支給したりする企業も少なくないようです。営業所ごとに宅建士を雇い入れている金融機関もあります。

建築業界

大手建設会社では、建築を請け負うのみならず、完成した物件の販売事業まで手を広げているところが増えています。住宅やマンションの販売は、宅建の免許が必要なので資格取得者は歓迎されるのです。

相性のいい資格とのダブルライセンスで有利に!

宅建と相性のいい資格をダブルで取得すれば、より就職・転職・キャリアアップに有利になります。

FP(ファイナンシャルプランナー)
FPは、顧客の「生きていく上で必要になるお金の資金計画」を立て、未来計画を実現化するためにサポートする専門家です。
この資格があれば、顧客の経済状況に合わせより確実な不動産などの資産運用提案ができます。宅建・FPのダブルライセンスを取得している人材は、より不動産業や金融業界で歓迎されるでしょう。

マンション管理士の就職先とは?

マンション管理士の資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか

マンション管理会社

マンション管理士資格をいかせる就職先として一番多いのは、マンション管理会社が挙げられます。マンション管理の資格としては、マンション管理会社が必ず設置する義務がある管理業務主任者がありますが、マンション管理士のほうが難易度の高い資格であるため、資格取得者は歓迎されるのです。また、マンション管理を含むビル管理会社や施工管理会社でも需要があります。

不動産業界

不動産管理会社、不動産系のコンサルティング会社などもマンション管理士の資格をいかせる職場です。近年ではマンション住民目線でのサービスを提供して、ライバル社との差別化を図る企業も増えています。マンション住民の立場になって建物の管理や修理修繕・トラブル解決を考えるマンション管理士の専門知識は歓迎されるようになってきました。

また、マンション管理士の資格だけではなく、管理会社側の目線でマンション管理を考えられる管理業務主任者の資格も持ち合わせている人材は、より優遇されるようです。

相性のいい資格とのダブルライセンスで有利に!

マンション管理士の資格は、管理業務主任者や宅建など不動産関係の資格とのダブルライセンスが推奨されています。試験範囲がかぶる部分が多く、試験問題の5点免除などのチャンスがあることもその理由でしょう。

ほかにも、行政書士の資格所有者でマンション管理士資格を取得する人は少なくありません。行政書士の仕事ははば広く、マンションの住民間で起きたトラブルの事実関係証明作成、マンション管理契約の書類の作成、マンション修繕に関して行政に提出する書類の作成仕事があるからです。

また、行政書士として独立開業をしていた人が、業務のはばを広げたり専門分野を特化したりするために取得をめざすケースも多く見られます。

管理業務主任者の就職先とは?

管理業務主任者の資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか。

マンション管理会社

管理業務主任者の資格をいかす就職先といえば、マンション管理会社です。管理業務主任者には、資格取得者しかできない、管理委託契約に関する重要事項の説明などの「独占業務」があります。管理会社が契約しているマンション管理組合は、「30組合に1人」管理業務主任者を置かなければなりません。そのため、管理会社の求人では管理業務主任者資格を優遇しています。

相性のいい資格とのダブルライセンスで有利に!

管理業務主任者の資格を取得したら、試験範囲の多くがかぶっているマンション管理士資格を取得するのがおすすめです。マンション管理士は、マンション組合側に立ってマンション管理のアドバイスを行うコンサルタント業で、管理会社のスタッフである管理業務主任者とは立ち位置が異なります。

組合側・管理会社側、両方の立場でマンション維持・管理の仕事ができる人材はより歓迎されるでしょう。マンション管理業界への転職の際にも、ダブルライセンスは役立ちます。

インテリアコーディネーターの就職先とは?

インテリアコーディネーターの資格をいかせる就職先はどのようなところでしょうか。

住宅関連業界

インテリアコーディネーターの資格を取得した人の就職先として一番多いのは、住宅関連業界です。

  • 住宅メーカー
  • 住宅リフォーム会社
  • 建設設計事務所
  • デザイン事務所
  • 建築会社
  • 内装施工会社

などが、代表的な就職先です。

メーカー関係

  • 家具メーカー
  • 照明器具メーカー
  • インテリア用品メーカー
  • ファブリックメーカー
  • キッチンメーカー

インテリア販売系

  • インテリアショップ
  • デパートなどのインテリア売り場
  • インテリアショールーム

そのほか

  • マンション販売会社
  • 分譲住宅やマンションを扱う不動産会社
  • ディベロッパー
  • 住宅関連出版社

独立開業

インテリアコーディネーターの資格を取得して、いきなり独立するのは難しいでしょう。住宅メーカーやインテリアショップなどに就職をして経験を積み、スキルを磨くことからはじめます。また、人脈を築くのも大切です。さらに自分の得意分野に磨きをかけることも必要となります。

独立を目指すためには、コーディネートやカラーリングのセンスを磨き、インテリアのトレンドの流れも勉強し知識も身に付けてください。また、自分自身でお客さまの要望や事情などをきちんとヒアリングして、どのようなインテリアを望んでいるかを把握し、プレゼンテーションする能力も要求されます。高いコミュニケーション能力も大切です。

行政書士の就職先とは?

行政書士の資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか。

士業系の事務所

まず行政書士の就職先として一般的に挙げられるのは「士業系の事務所」です。士業とは「士」がつく資格の取得者で、弁護士・弁理士・司法書士・行政書士ほかが挙げられます。
個人経営事務所と、複数の人が勤めている事務所があり、行政書士の場合は、行政書士事務所にて「使用人行政書士」として働くのが一般的です。

一般企業

行政書士の就職先としては、一般企業も挙げられます。特に建設業界や不動産業界では、許認可の手続きなどで行政書士資格を持っている人材は歓迎される傾向にあります。
また、それ以外の企業の場合は、法務部や総務部など法律関係の部署で知識をいかせることでしょう。

独立して事務所を持つ

士業関係の事務所での行政書士の求人は、それほど多くはありません。そして現場で実務を学べるのですぐに定員オーバーになってしまいます。また、行政書士の仕事のはばは非常に広いため、特定の分野に特化して営業する事務所も少なくありません。

自分が将来的にどのような仕事を行う行政書士になりたいのか、キャリアプランをしっかりと考えて就職先を選ぶことが大切です。そして働きながら経験を積み、スキルアップをして人脈を築いてから独立をしたほうがいいでしょう。

ダブルライセンスでより有利に

これからは、行政書士の資格1本で独立するより、ダブルライセンスでより得意分野に絞り専門性を高めたほうがいい時代です。さらに行政書士は、ほかの資格と学習範囲が被っているためにダブルライセンスが狙いやすい資格でもあります。

  • 宅建士資格を取得し、不動産業界における案件に特化し、不動産売買や必要書類の提出などの業務を行う。
  • 社労士資格を取得し、会社登記や申請の手続きをした会社が軌道に乗ったら労務管理や法的なトラブルが起きた際の対応を行う。
  • FPを取得し、相続計画や事業継承などの相談や手続きを一手に請け負う。

本格的な高齢者社会を迎えた今、相続に関する手続きを得意とする行政書士に対するニーズはさらに高まるといわれています。

中小企業診断士の就職先とは?

中小企業診断士の資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか。

コンサルティング系の企業

中小企業診断士の多くは、コンサルティング系の企業で働くケースが一般的です。ひとくちにコンサルティング企業といっても、戦略系コンサル・組織人事コンサル・財務コンサルなどはば広いジャンルの仕事があります。

一般企業

中小企業診断士の資格は、経済学・経営理論・財務会計・情報システムなどはば広い知識の持ち主であることの証明になります。そのため、資格取得者は業種や規模に関係なく、多くの一般企業で歓迎されるでしょう。

公的機関

中小企業基盤整備機構や各県の中小企業支援センターほか、公的機関では相談に来た中小企業経営に対して、「専門家登録」している独立系中小企業診断士の中からコーディネーターが最適な人を選定し派遣します。コーディネーターとの人脈を作り信頼を得れば、積極的に仕事を回してもらえるケースが多いようです。

中小企業診断士として独立

中小企業診断士として独立開業するケースもあります。ほかのライバルと差を付けるにはキャリアや実績が挙げられますが、それを手に入れるには時間がかかるでしょう。

そのため、ダブルライセンスを取得し企業から「専門性の高い人として評価」されることを狙う人も多いのです。特に、以下の資格は受験する際のメリットがあります。

社労士 一次試験の科目「企業経営理論」に、中小企業診断士の知識をいかせる
行政書士 会社法に関する知識が、一時試験に役立つ

社労士の就職先とは?

社労士(社会保険労務士)の資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか。

社会保険労務士事務所

社労士の就職先として代表的なのが、社会保健労務士事務所です。人事や労務に関するプロとして、企業や個人から労働管理や社会保険などの相談を受けアドバイスを行います。とはいえ、社労士としての求人は少なく、事務職のパートなどのほうが多いのが現実です。

企業の人事・総務部など

規模や職種に関係なく、企業の人事や総務部など、社内で働く「勤務社労士」は少なくありません。求人の際、社労士の有資格者を優遇するケースもあります。

人事や労務関係のコンサルティングを行う会社に就職するケースもあります。また、大きな企業では、社会保険や給与計算などの業務をアウトソーシング会社に依頼するケースもあり、そのような会社では社労士資格を持っている人材を優遇しています。

社労士として独立開業

事務所や企業などで社労士の実務経験を重ねてから独立開業する方法もあります。開業にあたっては、顧問先となる企業を数多く確保することが大切です。また、独立開業するには、実務経験にプラス営業力やマーケティング力も必要になるでしょう。

FPの就職先とは?

FPの資格を活かせる就職先はどのようなところでしょうか。

金融や保険業界など

FPの資格をそのままいかせるのは以下の業界です。

  • 銀行や信用金庫
  • 保険会社
  • 証券会社

ローン商品、保険商品、株・投資信などの金融商品を扱っているので、FP資格の知識や技の技能が商品提案に生かされます。特に保険業界に就職する場合、FP2級以上の資格が必要です。

不動産業界

FP試験の科目では、不動産・金融資産運用・税対策・相続、事業継承などがあります。これらの知識は不動産業界でいかすことができます。

マイホームやマンションを取得する場合、住宅ローンを組みますが、FP資格のある人なら、その人にローン以外の家計支出も踏まえて相談に乗ることができます。また、相続で不動産を売却したりする場合も顧客に最適なアドバイスもできるのです。

税理士事務所・公認会計士事務所など

税理士や公認会計士事務所の主なクライアントは中小企業が多いため、経営者自身のファイナンシャルプランニングも依頼されることが少なくありません。その業務はFPが受け持つことができるので、税理士や公認会計士事務所ではFP2級以上の有資格者を歓迎するケースもあるのです。

FPと独立開業

企業FPとして働きキャリアを積んで独立開業するケースもあります。独立する前には「どのように顧客を増やすか」集客プランを綿密に立てることが必要です。

また、保険会社勤務だったらキャリアをいかし「保険に強いFP」になるなど、自分の専門分野を掘り下げたFPになり、ほかのライバルとの差別化を図ることも大切です。

不動産資格を取得してよりよい就職先を見つけよう

ひとくちに不動産資格といってもいろいろな種類があります。さらに、その資格をいかし不動産業界に就職できるだけではなく、そのほかの業界でも活用できます。

どの資格がどのような業界でいかせるのか把握して、資格取得の計画とその後の就職プランを考えましょう。将来的に独立開業を考えている場合は、報酬の高さだけではなく、実務経験を積めるか、人脈を築けるかなども考えて選びことも必要です。