実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 大野広康さん

社会保険労務士   大野広康 さん

1967年千葉県生まれ。1990年に日本大学法学部を卒業後、東邦生命保険相互会社(現AIGエジソン生命)に入社。本社・千葉支社・岐阜支社を歴任し、代理店営業に携わる。東邦生命が経営破たんした1999年に退職。2000年に農協へ転職し、同年AFPを取得。農協にて、自動車事故の示談交渉サービス業務を6年間経験。2005年に社会保険労務士試験に合格し、2009年にCFPを取得。勤務社労士・FPとして活躍後、2010年より独立・開業し、現在に至る。

大野広康さんが代表を務める「ガイアFP社会保険労務士事務所」のホームページは下記のとおりです。
URL : http://www.srfpgaia.com/


「農業を組織に」、「従業員にさらなる満足を」
経営者の視点に立って考える早起き社労士

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは、活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は社会保険労務士・FPである大野広康さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


主に、経営者や農業関係者に対して社労士・FPの枠にとらわれないサービスを提供しています。社会保険・労働保険手続き、助成金申請代行、労働トラブル(労使のモメごと)防止、人事制度設計、就業規則の作成・変更、障害年金等の業務を行います。差別化のポイントとしては、農業法人向けに独自のサービスを提供しているところですね。農業法人の就業規則、人事制度、賃金制度、採用、労災防止・労災保険加入についてのご相談、各種申請代行、制度運用支援等です。一般企業に対しては、従業員満足(ES)の向上による、一体感を生み出す会社組織作り支援サービスも提供しています。ES向上型就業規則、人事制度・賃金制度等の導入支援、制度運用支援、各種助成金の活用提案、労働者とのトラブル・監督署調査等についての相談業務、交通事故が関係する労働災害の対応・相談、労働保険・社会保険書諸法令に基づく各種手続業務も担当していますね。また、個人のお客様に対しては、地域を千葉に限定し、障害年金の請求に関する手続業務、年金に関する相談業務(老齢・遺族・障害の各年金)も受けています。


農業法人に特化し、小冊子も作っている大野さん

農業法人に特化し、小冊子も作っている大野さん


資格を取得したきっかけを教えてください


私が大学を卒業した当時は、バブル絶頂期でした。今とはまったく状況が異なり、就職先は有り余っていました。その中で、私は「ザ・セイホ」と呼ばれた生保業界に憧れ、東邦生命保険相互会社(現AIGエジソン生命)に入社しました。本社から千葉や岐阜の支社をまわり、代理店営業、代理店の指導をしていた時にFPという資格と出会いました。しかし、その頃は多忙で資格を取るような余裕は全くありませんでした。2000年に会社が経営破たんし、農協へ転職した頃、ようやく時間がとれるようになり、AFPを取得しました。農協では、保険会社に勤務していた経験から、自動車事故の示談交渉を主に担当しました。その時、社労士の仕事にもリンクすると気付き、「自分のキャリアを活かせる!」と考え、受験を決意しました。CFPを取ったのは、その後ですね。


2度のチャレンジで社労士に合格

2度のチャレンジで社労士に合格


資格取得後、どのようにお仕事を進めていきましたか?


私の場合は資格を取ってから開業するまで、少し間があります。社労士は、2007年に登録だけしておいたのですが、勤務社労士という形態を取っていました。勤めながらCFPを取得しましたが、「社労士の仕事をメインにしたい」と考え、2010年1月末に退職しました。開業したのはその翌月ですが、最初は暗中模索といった感じでしたね。「数多いる社労士の中からお客様に選ばれるためには、何かの分野に特化しなければならない」と考え、農業分野に特化することにしました。開業当初も現在も、集客はお客様からのご紹介やホームページ、ブログ、セミナー等が中心ですね。近頃は、農業専門の求人サイトを運営している知人から、農業法人をご紹介いただくこともあります。


FP、社労士、宅建等多くの資格を有する

FP、社労士、宅建等多くの資格を有する


お仕事のやりがいは何でしょうか?


お客様の意識が変わっていく姿を間近で見られる、ということでしょうか。農業法人に関していいますと、農家は家族経営のパターンが多いため、“人を雇用する”という意識がありません。お話を進めるうちに段々とお客様が経営者マインドとなり、就業規則、人事制度、賃金制度、採用、労災防止・労災保険加入についての理解と知識を深めていく姿を見ると嬉しくなりますね。また、お客様から直接「ありがとう」と言っていただけるのも、もちろんやりがいにつながっています。


大野さんのオフィスは千葉県市川市。電話受付は午前6時から

大野さんのオフィスは千葉県市川市。電話受付は午前6時から


お仕事される際に気をつけていることは何でしょうか?


「知ったかぶりをしない」ということですね。自分が分からないことがらについて、あやふやな受け答えをしない。お客様が何を求めているのかを読み取り、きちんとボールを返すことが大事だと考えています。また、こちらの論理を一方的に押し付けないようにしています。例えば社会保険に加入していない会社がありますが、加入していないからにはそれなりの理由があります。お客様の真意を汲み取らなければ本当の解決にはなりません。頭ごなしに論理で返すのではなく、お客様の立場に立って、一緒に考えるように心がけています。


社労士もFPも、それぞれ面白い仕事だと思います。どちらの職業も、独立して活躍できるフィールドがあります。自分の考え方ひとつで、さまざまな分野、方向を選択できると思います。「開業して食べていけるのだろうか?」という不安は皆さんあるかと思いますが、まず挑戦してみるだけの価値はあります。私自身、道半ばですし、成功できるかどうかは正直わかりません。けれど、たとえ万一失敗したとしても、貴重な経験として、その後の人生の糧になると思います。皆さんも頑張ってください!


社会保険労務士   大野広康 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
4:00 起床 朝食、新聞チェック
5:40 出社  
6:00 社内 メールチェック
7:00 個別相談 農業法人との打ち合わせ
9:00 外出 船橋のハローワーク、年金事務所、労働基準監督署へ
12:00 昼食  
13:00 個別相談 建設業者との打ち合わせ
16:00 社内 事務手続き
17:30 退社  
18:00 外出 商工会議所のミーティング
23:00 帰宅  
24:00 就寝